都心の空に巨大な顔を浮かべた仕掛け人! 目[mé]が企画展を開催

2023.1.10
昨年7月に代々木公園、8月に隅田公園で空に巨大な顔が浮かんでいるという謎の光景が話題を呼んだ。その仕掛け人こそアーティストの荒神明香(こうじん・はるか)さん、ディレクターの南川憲二さん、インストーラーの増井宏文さんの3名からなる現代アートチーム・目[mé]。彼らが企画したプロジェクト《まさゆめ》は、東京都心の空に巨大な誰かの顔を予告なく浮かべ、それを見た人がさまざまな反応を起こす作品となっている。

見たままの風景を人がどう解釈するかにかけた作品です。

「作品を見た人は立ち止まって『これは何だろう』って思うでしょ。スマホで撮影する人もいたりして。実はこの作品が登場した瞬間を一番体験したかったのは僕たちなんですね。でも作者である以上、制作過程を見てしまうのでそれは叶わない。だから見た人の反応を通じて、自分たちも作品を見ているんです」(南川)

彼らの作品には単なる驚きではなく、どこか不思議な夢のような感覚が宿る。それもそのはず、作品は、荒神さんが幼い頃に見た夢や記憶をもとに、南川さんが作品の方向性を示し、増井さんが形にしている。決して難しくない彼らの作品は、普段美術に縁がなかった人も虜にし、ユニークな視覚的体験を提供してきた。

彼らが共に活動を始めたのは10年前。大学で知り合った3人だが、当時から既に荒神さんは海外でも活躍するアーティストだった。そんな彼女の才能に南川さんは嫉妬心を抱いていたと語る。ただお互いに興味はあった。ならばクリエイティビティを分配し、力を合わせていい作品を作りたいと目[mé]は結成された。

「とはいえ集団でのモノ作りは上手くいかないことが多い。気持ちのズレを解消するために、3人で月2回ほど、5~6時間かけたメンタルトレーニングを約5年続け、互いを理解するコツを掴んできました。今ではきょうだいのようで周りから見ると少し気持ち悪いかも(笑)」(南川)

そんな彼らが年始に企画展を開催する。場所は地上229m、360度の景色を眺めることができる会場だ。〈都市の運動から抜け出し「ただ、眺める」。〉がコンセプトの今作は、都市活動の一部になっている鑑賞者がそこから抜け出し、違う視点で街を見ることを提案したものだ。

「会場には渋谷を撮影した写真や映像はありますが、それを説明する文章は一切ありません。“わからない”ことを、わからないままに見せたい。文字よりも感性で見てもらえたらと。ただそこにある風景を、何かに縛られることなく眺められるような機会を作れたらと思っています」(荒神)

目 [mé]の過去作品

Entame

緑のトンネルを進んだ先にあったのは、実は継ぎ目のない鏡面の池。鑑賞者はこの池のような鏡面に降り立ち、反転した世界に身を置いて、そこから現実に再び帰還する。この一連の動きのすべてが作品に。「Elemental Detection」(さいたまトリエンナーレ2016)Photo:Natsumi Kinugasa

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年齢や性別、国籍を問わず世界中から顔を募集し、選ばれた実在する一人の顔を東京の空に浮かべた話題のプロジェクト。2021年夏に実施。「まさゆめ」(Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル 13、2019‐21年) Photo:TakahiroTsushima

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ギャラリー空間をホテル(の廊下)に変容させた作品。突き当たりの部屋に入るとそこには意外な仕掛けが…。個展「たよりない現実、この世界の在りか」(資生堂ギャラリー、2014年) Photo:Ken KATO

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アーティストの荒神明香(中央)、ディレクターの南川憲二(左)、インストーラーの増井宏文(右)によるアーティストチームとして2012年より活動。手法やジャンルにこだわらず、空間や観客を含めた状況、導線を重視。この世界をもう一度新しい目で見るような作品をチーム・クリエイションで展開。’23年開催のさいたま国際芸術祭のディレクターに就任。
Photo:TakahiroTsushima

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.5『目 [mé]』 SKY GALLERY 東京都渋谷区渋谷2‐24‐12 渋谷スクランブルスクエア SHIBUYA SKY46F 1月13日(金)~3月24日(金)10時~22時30分(入場は21時20分まで) 無休 一般2000円ほか TEL:03・4221・0229 ※日時指定WEBチケットあり

※『anan』2023年1月11日号より。取材、文・山田貴美子

(by anan編集部)