東宝シンデレラ・福本莉子「できない悔しさがバネに」 秘めたるプロ意識の高さ

2022.11.18
’16年に開催された「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、芸能界デビュー。シンデレラの名にふさわしい透明感あふれる清楚なルックスとは裏腹に、内面はすがすがしいほどストイックで男前。そんなギャップがますます人を惹きつける、俳優・福本莉子さんの仕事への想いや素顔に迫ります。

自分がどこまでできるか知りたい。刺激を求めているのかも(笑)。

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――最新作『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』では、劇場版のオリジナルキャラクターで謎の力を持つ女王・トワの声優を務められています。

芸能界に入ったばかりの頃に声優のお仕事をやらせていただいたことはあるんですけど、また機会をいただけるなんて思ってもみませんでしたし、すごく有名な作品だったので、「私でいいの?」という驚きが強かったです。

――アフレコはいかがでしたか?

アニメ特有のセリフにならないリアクションの音みたいな部分を家で練習してから臨んだので、テストで1回やってみたら、監督に「意外とうまいね!」と言っていただけて、心底“練習してきてよかったー!”と思いました(笑)。

――以前のインタビューで、不安要素はなるべく潰してから現場に入りたいとおっしゃっていたのが印象的だったのですが、やはり事前準備は念入りにされるんですね。

そうです。すぐ不安になっちゃうんですよね(笑)。現場に行って慌てるのはイヤですし、用意しておくのに越したことはないなって。だから今回も練習用の動画をいただいたので、それに合わせて自分のセリフのタイミングとかを家で練習していました。タイミングばかりに気を取られて、お芝居が疎かになってしまうのはイヤだなと思って…。動画と台本を照らし合わせながら、台本に自分の出番の秒数を書き込んだり、できることは準備してから行きました。

――福本さんは、沢口靖子さんや長澤まさみさんを輩出した「東宝シンデレラ」オーディションのご出身ですよね。昔から芸能界に興味があったんでしょうか?

興味はありました。テレビっ子だったので、毎日のようにドラマを見ては、芸能界への憧れを漠然と抱いていたような気がします。“絶対に芸能界に入ってやる!”みたいなビジョンは全然なかったんですけど、友達に「こういうオーディションあるから受けてみたら?」って言われたことがきっかけで、今に至りますね。

――実際に行動に移されたのはそれが初めてだったんですか?

実はその前に、雑誌『Seventeen』のモデルオーディションに書類だけ送ったことがあるんです。大阪に住んでいたんですけど二次審査が東京で、親に言うのもなぁ…と思って、それはそこで諦めちゃったんですよね。でも、そのあとに受けた「東宝シンデレラ」オーディションの合宿審査も東京で、参加のためには親の同意が必要だったんです。ちょうどその時、自分を変えたいと思っていたタイミングだったので、そこで初めて親に話をしました。

――ご両親はなんて?

最初は不安そうでしたけど、驚きはしなかったと思います。小さい頃はすごく目立ちたがり屋で、幼稚園の時にやった『みにくいアヒルの子』の劇も、自ら主役に挙手したくらいなので…(笑)。

――デビュー後、しばらくは大阪からオーディションの度に東京に来る生活を続けていたそうですね。

毎回オーディションに落ちては、凹んで大阪に帰る暮らしが続いていました。お芝居は未経験だったので、いろんな監督さんが講師として来てくださる事務所のワークショップで発声練習やお芝居の基礎を一から厳しく教えていただいて。でもお芝居のやり方には正解がないので、その中で自分に合うやり方を模索していく日々でした。お芝居って、立つ、動く、そんな行動一つにも意味が出ちゃうじゃないですか。だから最初はもうとにかくガチガチで、セリフを言うのが精一杯な状態で。オーディションには落ちるし、普通に遊んでいる周りの友達を見て、羨ましく感じたりもしてました。

――それでも諦めず、続けようと思えた理由は何だったんですか?

大変だと思いつつも、初めてやることだらけだったので、そこに挑んでいくのが純粋に楽しかったんですよね。あとは、できない悔しさがバネになっていたのかもしれません。負けず嫌いな性格なので、“もっと頑張ってやろう”っていう気にもなったりして。

――そんな中で、初めて手応えを感じられた作品は?

ミュージカル『魔女の宅急便』ですね。ドラマや映画に出させてもらい始めたばかりの頃だったので、まだお芝居に苦手意識がありましたし、初主演、初舞台、初ミュージカルという大役を任せてもらったのも初めての経験で。でも、舞台は生の掛け合いなので、自分の言い方が変われば相手の言い方も変わったり、ストーリーは同じでも劇場のお客さんが変わるだけで空気感も変わったり、毎回いろんなことに気づいて、どんどん視野が広がっていくような感覚がありました。ここはもう少し動けるなとか、何回もやるからこそ、いろいろな可能性も見えてきて。そこで初めて、お芝居っておもしろいなって思えたんです。それはすごく大きな出来事でした。

――他にも原作のある作品に多数出演されていますが、オリジナルと比べて難しさは感じますか?

原作ファンの方がいらっしゃるのでプレッシャーは大きいですけど、私は原作があるもののほうがやりやすいなと思います。オリジナルと違って、キャラクターの情報量も多いですし。とくに私は事前に準備をしていくタイプなので、原作を読み倒したり、その中から周りがどういう人物なのかを考えたりする作業も好きなんですよね。

――今、演じる上で一番大事にしていることはなんですか?

“事前に準備はしても、決めすぎない”ということです。家でセリフの練習をする時も、あえて感情は入れません。会話は相手の反応を見ながらするものだと思うので、独りよがりにならないように、現場に入ったらちゃんと相手を見るということは大事にしたいなと思っています。

――直近でやってみたい役や、今後の目標はありますか?

最近は悲しいお話が多いので、楽しいお話もやってみたいですね。大阪出身なので関西弁を使う役とか。でも、“この役、福本莉子がやったらどんな感じになるんだろう”という好奇心を少しでも持っていただけるなら、どんな役でもやりたいです。挑戦は常にし続けていきたいと思っているので。

――挑戦をし続けていきたいという、その原動力は?

自分がどこまでできるか知りたいんですよね。刺激を求めているのかもしれません(笑)。

かつて自分の命を救ってくれた女王・トワ(福本)と、そのラージャ小亜国の危機を救うため、ヒイロ(内田)はリムル(岡咲)に助けを求め、共にラージャへ向かうが、そこには驚くべき陰謀が待ち受けていた…! 声の出演/岡咲美保、内田雄馬、福本莉子、古川慎ほか。『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』は11月25日(金)全国公開。

ふくもと・りこ 2000年11月25日生まれ、大阪府出身。’16年の第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、芸能界入り。今年は『君が落とした青空』や『今夜、世界からこの恋が消えても』など、主演映画が続々と公開。今月頭に大千穐楽を迎えた出演舞台『アルキメデスの大戦』は8K映像上映&8Kオペラグラス配信が決定。

カーディガン¥163,900 ワンピース¥85,800 中に着たシャツ¥20,900(以上POLO RALPH LAUREN/RALPH LAUREN TEL:0120・3274・20) イヤーカフ¥121,000 左手リング(ダイヤモンド付き)¥96,800(共にAHKAH/AHKAH 表参道ヒルズ店 TEL:03・5785・0790) 右手リング¥30,800(BONEE/EDSTROM OFFICE TEL:03・6427・5901)

※『anan』2022年11月23日号より。写真・Nae.Jay スタイリスト・武久真理江 ヘア&メイク・伏屋陽子(ESPER) インタビュー、文・菅野綾子

(by anan編集部)