佐々木蔵之介「感じたことのない面白さを」 『守銭奴』でルーマニアの演出家とタッグ

2022.11.20
ダークで美しく、ちょっとシニカルだけどユーモアのある演出で、世界中の演劇ファンから高い評価を受けているルーマニアの演出家シルヴィウ・プルカレーテさん。舞台『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』は、その人と日本を代表する実力派俳優・佐々木蔵之介さんによる2度目のタッグとなる話題作。

これまでに見たことのない面白さを目指したいです。

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「5年前、ルーマニアで毎年おこなわれているシビウ国際演劇祭で、プルさんの舞台を拝見したんです。その演出が、火を使い、水を使い…すごくスケールの大きさを感じて、演劇ってなんでもありだなって思ったんですよね。その後、東京芸術劇場で上演された『リチャード三世』という作品でご一緒しました。プルさんは僕たちじゃ思いつきもしない物語の切り取り方をされるので、毎日の稽古がすごく新鮮で驚きの連続。とても豊かな演劇体験になりました。だから今回、こうして再びご一緒できることはとても嬉しいです」

前回の『リチャード三世』は、悪行に悪行を重ねてのし上がる男を主人公にした、シェイクスピアの名作。それをプルカレーテさんは、ポップで美しく演出し観客を驚かせた。今回上演される『守銭奴』は、タイトルの通りドケチを描いたコメディだ。

「プルさんから提案されたのがこの作品だったんですが、読んでみたら、たった1日の話なんですね。その中で登場人物たちがみんな、死ぬか生きるかっていうギリギリの思いをするというもの。僕が演じるアルパゴンはドケチな奴で、その守銭奴ぶりは喜劇的ではあるけれど、最終的には冷笑されるような展開なんです。ただプルさんは、悪人をただの悪人ではなく、汚いんだけれど美しく描いたり、狂気の中にブラックユーモアを入れたり。今回も歌が入ったりしますし、楽しい作品になるのかもしれませんね」

公演のホームページには、“徹底的に嘲い倒す”の文言もあるだけに、かなり笑えるものになる予感?

「日本の“わらい”とヨーロッパ的な“わらい”では、多少肌触りや彩りは違うとは思います。ただ、フランスの作家の戯曲を、ルーマニアの演出家で日本人が演じる“面白さ”っていうものもあると思うんです。その、見たことのない感じたことのない面白さを目指したいですね」

ヨーロッパ的喜劇と聞いて思い出されるのは、今年2月の佐々木さん主演の舞台『冬のライオン』。12世紀を舞台に、一見すると重厚な歴史劇のようなのに、キャストたちの丁々発止のやり取りはコミカルで、気づけば劇場は爆笑の渦に。こんな種類の“わらい”もあるんだと証明するような作品だったのだ。

「『リチャード三世』のとき、プルさんとの稽古後にキャスト同士で復習の時間を設けていたんです。演出家の意図を日本のお客さんに伝えるための一番いい表現を探ろうという、すごくいい時間だったと思っていて。今回は難しくないお話ですし、海外戯曲や海外の演出家という垣根を越えて、今まで体験したことのない世界を体験しに来てほしいですね」

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東京芸術祭 2022 芸劇オータムセレクション『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』 ドケチで金に強い執着心を持つアルパゴン(佐々木)は、息子と娘に金持ちの相手との結婚を強要する。しかも自分は息子の恋人に横恋慕し、彼女と再婚すると言い出した。そんななかある秘密が明らかになり…。11月23日(水)~12月11日(日) 池袋・東京芸術劇場 プレイハウス 作/モリエール 演出/シルヴィウ・プルカレーテ 出演/佐々木蔵之介、加治将樹、竹内將人、大西礼芳、天野はな、茂手木桜子、菊池銀河、安東信助、長谷川朝晴、阿南健治、手塚とおる、壤晴彦 S席9500円 A席7500円 サイドシート5500円ほか 東京芸術劇場ボックスオフィス TEL:0570・010・296 宮城、大阪、高知公演あり。https://www.purcarete-fes.jp/

ささき・くらのすけ 1968年2月4日生まれ、京都府出身。劇団・惑星ピスタチオを経て、テレビ、映画、舞台と幅広く活躍。来年1月6日には中井貴一とW主演となる映画『嘘八百 なにわ夢の陣』が公開に。

※『anan』2022年11月23日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・勝見宜人(Koa Hole inc.) ヘア&メイク・晋一朗(IKEDAYA TOKYO) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)