“お笑い界の母”・児島気奈「今、お笑いライブシーンが熱い!」 生の舞台の魅力とは

2022.8.7
’21年、西新宿ナルゲキをオープンさせたK‐PRO代表・児島気奈さん。劇場でこそ味わえるお笑いの魅力や、今後の夢を聞きました。

舞台重視の芸人さんによるライブが熱い!

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ライブ制作や運営手腕を高く評価されてきたK‐PRO。その代表を務める児島気奈さんが、念願だった専用の劇場「西新宿ナルゲキ」をオープンさせたのは’21年4月。ライブシーンが大打撃を受けた時期になぜ?

「コロナ禍が始まり、『ライブ会場に来てください』と言い続けていたのが、『来ないでください』と言わなければならなかったのが心苦しくて…。芸人さんにとっても、芸をする場所が絶対に必要だと思い、インターネット配信を始めたんです。配信用のカメラやケーブルを運びながら歌舞伎町にある劇場を転々とする日々だったんですが、劇場によってはネット環境が悪かったり…。移動や環境のことで疲弊してベストな配信ができないならば、拠点を持とうと。それが、専用の劇場を持つという長年の夢を実現させようと決心したきっかけです」

有観客が無理でも芸ができる場を提供したい。そんな思いを抱きながら、劇場探しに奔走したのも、お笑いライブシーンの裏方として、芸人にとっていかに劇場が大切なのか知り尽くしていたから。

「ご存じの通り、今のお笑いシーンは賞レースが軸になっており、そこで勝つにはどれだけ日常的に場数が踏めるかというのがとても大切なんです。予選の審査員たちも、現場のお客さんをどれだけ笑わせているかを加味すると仰いますし、芸人さんの強い地肩を作るのは、舞台のお客さんだと感じます。自分たちを見に来たお客さん以外も巻き込んで、空間まるごと笑わせられる圧倒的なパワーは、やっぱり生のステージの経験がモノをいいますね。最初は、頭の中で一生懸命、台本を思い出しながらやっていても、舞台数が増えるにつれ、自信や余裕が出てきて、どんどん見せ方が変わっていくんです。お客さんにとっても、そうやってネタが仕上がっていく過程を見ながら、劇場の面白さとして感じていただけるはずです」

「ナルゲキ」は一人で来場する女性客がほとんどだ。

「隣り合った、まったく知らない人と、同じ空間で同じものを見て、一緒に笑う。そんな笑いが生む一体感こそがライブの醍醐味! 今思えば、収容制限で席の間が空いていた頃は、お客さんも孤立したような感じになっていたのか、笑い声が少なくて、一体感も生まれにくかった気がしますね」

会場に100%観客を入れてもいい状況になってからも、生配信&アーカイブ視聴を続行中。

「劇場という空間がどんな雰囲気なのか配信で知って、劇場への第一歩を踏んでいただけたり、生で見たお客さんが配信でその日のネタを振り返ったり。生と配信にはいい相互作用があるので、今後も続けていきます」

生の舞台だからこそ起こる芸人の突然変異に魅了。

児島さんは、『ボキャブラ天国』ど真ん中世代。テレビでお笑い番組を楽しんでいたが、高3の時、友人から「お笑いライブというものがあるらしい」と聞き、お手伝いに行ったのがライブシーンとの最初の接点だった。

「テレビスターに会えると思って行ったのに、そんなことはなく(笑)。しかも、芸人さんが目の前でスベってて。でも、別の日には同じネタで笑いを取ってるんですよね。これは一体、なんだろうと。生だからこそ起こる突然変異にハマっちゃいました」

ライブは、芸人、観客、スタッフの三角形で作られるが、K‐PROは芸人ファーストの方針を貫く。それが、より多くの観客を喜ばせることに繋がるからだ。事実、K‐PROがお笑いライブシーンで確固たる地位を築いたのも、芸人自らが「K‐PROライブがめちゃくちゃ面白いよ」と口コミで各所に広めてくれたことが大きかったと語る。

「ライブの盛り上がり=芸人さんのテンションにかかっているので、楽屋の雰囲気作りは重視していますね。所属事務所の違う芸人さん同士の間を取り持ったり、食べ物や飲み物を用意したり。スタッフが芸人さんのために動けば、気持ちよく舞台で実力を発揮してもらえ、自然とお客さんの満足度も上がります。そして、お客さんには『また来たい』、芸人さんからも『また出たい』と言っていただけるんです」

そうして芸人から一目置かれる存在になった児島さんは、現在のお笑いライブシーンをどう見る?

「テレビに出たい一心の芸人さんが多い時期もありましたが、今は、芸人さんの間で、舞台への憧れが強まっているのを感じますね。うちで新ネタライブを月1で続けるスピードワゴンさんや、アルコ&ピースさん、三四郎さんといった方々が努力を努力と見せず、飄々と舞台でネタをする姿を見て、後輩が『忙しい先輩にできて自分たちにできないわけがない』と奮起するいい流れも起きており、本当に今、お笑いライブシーンが熱いですね」

専用の劇場を持った児島さんが抱く、次なる夢とは?

「『ナルゲキ』を、関西を含め、全芸人さんに立ったことがあるよって言ってもらえる場所にしたいですね。それと、劇場を持ってから、かえって外に飛び出したいと思うようになったんです。西新宿には来られない方々にも、出張ライブでK‐PROの生の舞台を届けていきたいです」

西新宿ナルゲキ 「エクストリームス」は前売り¥2,300/当日¥2,600。当日から1週間アーカイブが見られる配信チケットは¥1,300。主に日曜昼に行われる「K‐PRO プレミアムLIVE」もおすすめ。東京都新宿区西新宿7‐21‐20 関東交通共済協同組合ビルB2 TEL:03・6904・7052 148席

児島気奈さん ’04年、お笑いライブを運営する「K‐PRO」を立ち上げ、これまでに数々のライブを主催。“お笑い界の母”と評されるほど芸人に愛され、今年4月には、『アメトーーク!』で“ココで育ちました K‐PROライブ芸人”がOAされた。

※『anan』2022年8月10日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) 取材、文・小泉咲子

(by anan編集部)