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現役司法修習生の注目デビュー作! ロースクールが舞台のミステリー

2020.8.27
二転三転四転する展開のなかで、法律の面白さを伝えてくれるミステリー『法廷遊戯』。これが新人のデビュー作というのだから驚きだ。著者の五十嵐律人さんは司法試験に合格した現役の司法修習生で、本作でメフィスト賞を受賞した。

ロースクールで起きた不可解な事件。現役司法修習生の要注目デビュー作。

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「弁護士や裁判官を目指していたというより法律が好きでロースクールに進学しました。法律の面白さをいろんな人に伝えたいなと思い、小説ならそれができると考えて、書くことにしました」

本作は2部構成。第1部は、ロースクールの学生たちが「無辜(むこ)ゲーム」という模擬裁判を繰り広げる。主要人物は3人の学生。傷害事件を起こした過去を持つ久我清義、彼と児童養護施設で一緒に育った織本美鈴、ゲームの審判者で有能な結城馨。

「本格的な法廷劇にするより、学生のゲームの話にしたほうが法律に興味のない方でも面白く読めると思いました。実際にイベントで模擬裁判のシナリオを作ったことがあって、勝手に復讐ものに仕上げたこともありました(笑)。主人公の久我を過去に罪を犯した青年という設定にしたのは、罪を犯すにはそれなりの理由があるし、だからこそ分かることもあると思ったからです」

そして第1部の終わりで現実の事件が起きる。主要人物の一人は命を落とし、一人は容疑者となり、一人は弁護を引き受けることに―。第2部では殺人事件だけでなく、痴漢冤罪事件や住所不定者の人生模様なども絡み、事件の様相が次々と変わるなか、関係者たちの切実な心情が浮かび上がってきて読ませる。だが、なんと、

「事件の真相は決めずに書き始めたんです。事前にプロットは作らず、1か月くらい体育座りして頭の中である程度考えてから(笑)、パーッと書き始めました。第1部を読み返して、これが伏線になるなどと考えつつ、予定調和にならないように書き進めていきました。司法試験でも、有罪か無罪か結論を決めて答案構成するのでなく、書きながら決めていくタイプだったんです」

だからこそ予想外の展開が待つミステリーとなったといえるのかも。すでに第2作にも取り掛かっていて、

「少年犯罪と家庭裁判所調査官の話に、神経犯罪学を絡めています」

さらに第3作の構想も出来上がっているというから、頼もしい!

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『法廷遊戯』 ロースクールに通う久我は、自分の暗い過去を告発する悪意の存在を知り、孤高の優等生・結城の力を借りて犯人捜しを始めるが…。講談社 1600円

いがらし・りつと 作家。1990年、岩手県生まれ。東北大学法学部卒業後、司法試験合格。本作で第62回メフィスト賞を受賞しデビュー。現在、司法修習生として学びながら法律関連の知識を深めている。

※『anan』2020年9月2日号より。写真・中島慶子 イラスト・松岡陽介 インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)