元彼からLINEがきたら…「復縁の可能性」を見極めるポイント3つ #30

文・土居彩 — 2020.3.22
新型コロナウイルスが運んできたもの。大型イベントの中止、テレワーク、世界的不景気、棚から消えるマスク、ごった返しのスーパー…。そこに元恋人からの突然の「体調大丈夫?」テキストを加えた人も少なくないのでは。元カレからの突然の連絡。その目的はただただ生存確認なのか、リモートワークの暇つぶしなのか、イケてる俺を再確認したいのか、はたまた未練によるものか。動揺して相手の心理を汲み間違えると、治癒した恋のウィルスに再び感染し、罹患しかねません。そこで今回は、有名社会心理学者が生みだした恋愛関係における投資モデルを用いて、元恋人へのヘルシーな向き合い方をご提案します。

【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 30

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忘れた頃にやってくる、元カレの連絡。

自然消滅だったのか、はたまたしっちゃかめっちゃかの騒ぎの末の別れだったのか。恋愛のみならず、人生には出会いと別れがつきものです。「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な恋はいずれもそれぞれに愛憎劇がある」と言ったのはトルストイだったか、どうだったか。

さて、天災は忘れたころにやってくると言いますが、半年ぶりの元カレからの連絡もしかりです。着信を見て浮き足立ったり、「何をいまさら」と憎悪の念に駆られたり。全くもって日頃のマインドフルネス瞑想の成果も試されるというもの。袖振り合うも多生の縁とはまさにそうで、浅い関わり、深い関わりと、私たちはいろいろな人との関係性のなかで生きています。そこでは恋愛でもビジネスでも、人間誰しも損せず得したいという気持ちが無意識に働くというのは、心理学者が考えるところ。

もう金輪際関わりたくないとか、薄〜くLINEするぐらいならいいとか、月イチぐらいで会いたいとか、他に気になる人がいるとか、恋の病で一瞬たりとも会えないと何も考えられないとか。恋愛ではこれぐらいでコミットするのが理想だという具合があります。そこで「恋愛は投資と同じ」と、カリル・ラズバルトという社会心理学者は、人が恋愛関係の深さを定めるための3つの要因を発見しました(1)。この3つで高得点を獲得する恋愛関係は、長く続くのだとか。一度別れた相手だとはいえ、元カレとどう関わっていくかを見定めるのにもこのモデルが適用できそうです。

長続きする恋の3つのポイント。

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1. 満足度の高さ
私たちは無意識に「笑顔がかわいいな」「ほっとできる」という相手のプラス面から、「口先ばかり」「ケチ」といったマイナス面を差し引き、二人の関係の満足度を決めています。満足度が高いほど「ずっと一緒にいたい」「もっと深く関わりたい」という気持ちになります。別れは、付き合いが進むにつれて新鮮さがなくなり、お互いの欠点が目立つようになって、どちらかもしくはお互いに、二人の関係を「プラス<マイナス」と感じたことで訪れたものです。

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現時点でお互いをプラスとマイナスの計算式に当てはめたとき、関係性はプラスに働きますか? 一方がではなく、お互いにです。そうでないなら同じことの繰り返し。心のなかで「お達者で」とつぶやきながらメールをゴミ箱行きしていっさいの連絡を絶つか、お互いにプラスでいられる新たな関係性を見定めてみましょう。そのためには3テキスト来たら1テキスト返すなど、投資する時間もテンションもまずは低め設定で、最適なバランスを模索するのが得策です。

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2. 投資の度合い
恋人や恋愛関係における投資とは、時間、労力、気遣い、お金、思い出、子ども、共通の友達、その他共有する財産などのことです。相手との関係性に満足していなくても、これが多いほど、別れにくいと考えられています。そこで相手が出してくれるというのに「悪いから」とワリカンしようとするのは逆効果。「今までの投資がゼロになってしまう」と思われず、あっさりフェイドアウトしかねないからです。と同時に買う価値の無い株式は、一株も買ってはならぬという計算も働きますので、あぐらをかいていると捨て銭だとみなされて、思わぬしっぺ返しを受けかねません。そう、実は奢られるというのも覚悟と責任を伴う行為。お互いに相手の望むものを察知して、投資し合うことが長続きの秘訣です。

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関係が長かった、強烈な思い出がある、けっこう頑張ったなど、相手からの再びの連絡は、投資したものへの惜しさによる可能性があります。それは残念ながら愛情とは違って、これまでの投資のリターンを期待する行動だとも考えられます。一度付き合うところまでいったので、新たな物件よりも投資する労力が少なくて済む。しかもすでに別れているため、株主資本がゼロになっても、大きな支障がないと判断した、といったところでしょうか。

この時点で相手との復縁を希望するなら、まずはあなたから投資していく必要があります。それも相手がほしいものを先に与えるということ。つまり、別れる原因になったものです。「仕事と私、どっちが大切?」とすごまず、ニコニコした時間が過ごせるとか。事前に投資したうえで期限を設定し、今度はあなたがほしいものが相手から回収できるかを冷静に見極めましょう。リターンがない場合は、投資が見合っていません。思い悩む暇はありません。アリアナ・グランデのように「Thank u, next!(ありがと、次!)」です。

3. 他に獲物がない
他に気になる人がいたり、仕事や趣味、友だちや子どもに夢中だったり、二人の関係に置き換わるものがあると、関係性の深さは弱まります。恋愛に重きを置かず、ひとりで生き、ひとりで死ぬのが怖くないというお一人さまタイプもそうなります。ではパートナーに満足して、十分な投資も行っているのに浮気する人がいるのはなぜか。浮気の発覚後の社会的制裁を踏まえるとまた違いますが、その時点では浮気相手から得られる心理的成果が本人的に大きいからです。「プラス>マイナス」の計算がここでも働いているのです。

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実は彼、今仕事がうまくいっていない、新しい恋が長続きしていないんじゃない? そこで向かったのが元恋人への思いというのは、往々としてあることです。それはそれで良いのですが、じゃあそこがうまくいった後の態度はどうなるでしょう。真剣な交際が始まりそうになったとたん、突然スパイのように再び姿をくらましはしないでしょうか。そこを冷静に見極めつつ、合わせて自分のニーズも確認する必要が。

あの夏、砂浜で夕焼けを見ながら交わしたキス……なんていう情景はいったん白紙にして、自分自身ときちんと向き合ってみたら、実は現時点では相手との時間は「プラス<マイナス」と割り出されるかも。そこで元恋人と関わることによるプラス面とマイナス面をまず瞑想でもしていったん心を落ち着けた後、ノートに書き出してみましょう。マイナスのほうが多い場合は止めにするか、新たなプラスの関係性を算段する必要がありそうです。

関係性とは、お互いを捧げ合うこと。

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これを喫茶店で書いていると、後ろの席の女の子が友達に「やっぱぁ、彼氏ができて何がいいって。自分以外の人で、自分のことのように応援してくれることかな。この人だけは、裏切らないっていうか。信頼っていうか、絆っていうか」と話していました。全くもって、羨ましい……。確かに関係性とは、お互いを捧げ合うということ。そして誰にでも自分にピッタリの関係性が存在するものだし、投資と同じくそれはときとしてマイナスに働いたり、プラスに転じたり、さまざまな局面を迎えます。

当然計算通りにいかずバカをやってしまうところも恋愛の醍醐味ですし、宙ぶらりんな状態に耐え抜いた末に、深い悟りを開くこともあります。とはいえ始まった恋も終わった恋も行き詰まりを感じたときは、この3つのスケールをそっと取り出し、あなたにぴったりの関係性をまずは内観してみてはいかがでしょうか。

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土居彩

編集者。東京の薪割り暮らしを綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にてダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)、芸術家で社会活動家の小田まゆみ氏の『Sarasvati’s Gift』(シャンバラ社)を翻訳中。
https://greenz.jp/author/doiaya/

『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』

参考
1. Rusbult,C,E.(1980). Commitment and satisfaction in romantic associations: A test of the investment model. Journal of Experimental Social Psychology, 17, 172-186. ; Rusbult,C,E,(1983). A longitudinal test of the investment model: The development (and deterioration) of satisfaction and commitment in heterosexual involvements. Journal of Personality and Social Psychology,45,101-117.


©Kiattisak Lamchan / EyeEm/Gettyimages