10代も本当に接種していい? 医師が教える「新型コロナワクチン接種のメリットデメリット」

ウェルネス
2021.10.13

文・竹中奈織

新型コロナワクチンの10代のワクチン接種について、どうすべきか悩んでいる親子が多いのではないでしょうか。モデルナかファイザーか、はたまた。母であり医師である竹中奈織さんに、10代のワクチン接種のメリットデメリットについて聞きました。

10代へのワクチン接種はいまどうなっているの?

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日本ではモデルナ製もファイザー製も12歳以上の接種が認められワクチン2回接種完了者が全人口の60%を超え第5波が落ち着いてきましたが、12~19歳の2回接種完了者は26%※1であり、若者のワクチン接種が進んでいないことがわかります。

9月にアメリカではファイザー社が臨床試験で、5~11歳に対して、大人の3分の1の投与量でも効果も副反応も基準を満たすことを確認しており、承認がおりれば接種開始と言われています。さらに生後6か月~4歳を対象とした研究も進んでおり今後、世界的にも若者へのワクチン接種に関して関心が高まっていくと思っています。

私の子どもは12歳以下なのでまだ打てませんが、順番が回ってきた場合、今の段階では打つことを選択すると思います。もちろん母として子どものワクチン接種に関して心配がないわけではありません。

私がファイザー製のワクチンの2回目接種後に倦怠感と39度の高熱、関節痛、頭痛の副反応が出たため、ワクチンの安全性や効果を理解しているとはいえ、子どもにも同じような副反応が出ると思うと少しかまえてしまいます。

今回はワクチンの仕組み、ワクチンを打つメリットとリスクを現時点での報告と共にお話したいと思います。

mRNAワクチンってなに?

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今、私たちが接種しているファイザー製あるいはモデルナ製のワクチンは“mRNAワクチン”という種類のワクチンです。新型コロナウイルスの膜の表面には「スパイクタンパク質」という、トゲトゲした突起がついています。ウイルスが飛沫によってヒトの身体に入っても、ウイルスは自分だけでは増えることができないため、ヒトの細胞に入り込み、数を増やそうとします。その時にウイルスの表面にあるトゲトゲの突起を使ってヒトの細胞膜をこじ開けて中に入りこみ、ヒトの細胞でどんどんウイルスを増やすのです。

つまり、ウイルスがヒトの細胞に入るのに必要なこのトゲトゲした「スパイクタンパク質」をやっつけてくれる抗体や免疫システムが私たちの身体にあればいいのでは? と考えられて作られたのが新型コロナウイルスのmRNAワクチンです。

mRNAワクチンには、「こんなトゲトゲしたものを作ってください」という情報が含まれていて、筋肉注射されると細胞内にあるタンパク質を作る工場でワクチンの情報をもとにトゲトゲのスパイクタンパク質が作られます。作られたスパイクタンパク質が細胞内から外に出ていくと、免疫細胞たちに「異物がいるぞ!」と発見され、抗体や免疫システムが準備されるようになるのです。これがmRNAワクチンの仕組みです。

mRNAワクチンの開発が早かった理由は?

mRNAワクチンは驚異的なスピードで開発され、不安を持った人も多いと思います。しかしmRNAワクチンの歴史は長く、1990年から研究、臨床試験が進められていました。2019年に新型コロナ感染が発生した際、世界中でワクチン開発が早期に進められたのもそういった基礎研究の歴史があったからです。

なかでも、感染者が爆発的に多く出たアメリカでかなりの資金と人が集められたことで短い期間で開発することができました。急いで開発されましたがどこかの順番を飛ばしたわけではなく、感染者が多かったからこそ、いくつかの臨床試験を同時並行して進めることができたのです。しかし長期的な研究結果に関しては現在も臨床研究は続いておりこれから判断されていきます。

10代でコロナ重症化率は?

重症化の割合は30代を基準とした場合、40代では4倍、50代では10倍と高くなる傾向にありますが、10歳未満は0.5倍、10代では0.2倍(※1)とかなり少ないことがわかっています。

しかし、これまで日本国内で10代は約18万人が新型コロナウイルスに感染をしており、変異株によって10代や20代でも重症化や亡くなられた人が出ました。10代は重症化しにくいですが、しないわけではありません。また、肥満や糖尿病、腎臓疾患、肺疾患、悪性疾患や免疫抑制剤、心疾患、神経疾患など基礎疾患のある若者は重症化しやすいため注意が必要です。

10代のコロナの後遺症は?

コロナウイルスの厄介な点は後遺症が多くみられることです。感染後4週間以上にわたって咳や息苦しさ、だるさ、嗅覚・味覚障害、頭痛、記憶障害、不眠症、脱毛、めまいなどの後遺症が全年齢で報告されています。

新型コロナウイルスに感染すると軽症で自宅療養やホテル療養を終えた後、10代はまだ大規模な調査結果がありませんが20、30代でも半数以上に後遺症を残していることが報告され、嗅覚・味覚障害が特に目立つ傾向があります。

若者は感染しても無症状や軽症がほとんどですが、自宅療養やホテル療養を終えた後も長い場合は半年から1年後も後遺症が続いている人もいます。コロナにかかっても死なないから…ではなく、自分や周りの人の生活を変えてしまい、受験や就職、学校や社会生活に大きな影響がでることもあると知っていてください。

ワクチンの副反応の頻度と将来への影響

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12 ~19歳における接種回数はファイザー製で約303万回、モデルナ製は95万回、2回接種されています。(9月12日時点)その中での副反応の報告の頻度を年代別で見るとファイザー製は20代>30代>40代>50代>10代の順で多く、モデルナ製は10代>20代>30代>40代の順でした。また男性よりも女性の方が副反応の頻度が高い結果でした。(※2)

副反応はどちらのワクチンも1回目接種後には打った場所の痛みや腫れが目立ち、2回目接種後には発熱・倦怠感・頭痛・嘔気・関節痛などの副反応が多くみられることがありますが、ほとんどが数日以内に治まります。

全体的に副反応の頻度はわずかにモデルナ製のほうが多く、発熱37.5℃以上だとファイザー製は38%、モデルナ製は78%(※2)と明らかに違いが出ています。また、モデルナ製は約3~4%に接種から10日前後に接種部位のかゆみ、赤みが出ることがありますが(モデルナアーム)、冷やしたり、かゆみ止めを塗ることで自然と良くなります。

これらの副反応の違いはモデルナ製がファイザー製よりもmRNAの量が約3倍あることや、mRNAを包む膜の違いにあるとも考えられていますが詳細はまだわかっていません。

その他にアレルギー反応であるアナフィラキシーがあり、ファイザー製では100万件中4件(※4)モデルナ製では100万件中1.5件(※5)非常に稀であり、もし起きたとしてもワクチン接種後の30分以内に起こることが多いため、医療スタッフによって適切に対応されています。

そしてよく見られる反応として迷走神経反射があげられます。緊張や痛み、睡眠不足などのストレスがあると接種後に一時的に血圧が下がり脳への血流が減ることで意識を失ったり、気分が悪くなることがありますが、接種後15分以内に起こりやすく横になったり椅子に座っていると回復します。

特に10代では将来の妊娠への影響や長期的な健康への影響を心配する声もありますが、mRNAは非常に壊れやすい性質を持っていて、細胞に取り込まれると短時間で分解され、作られたタンパク質も数日で分解され体内には残りません。

またDNAの遺伝子に組み込まれることもないためワクチンで将来不妊になることも考えにくく安全性は高いワクチンです。また臨床試験は継続され、今後も結果が公開されていきます。

10代に特に注意したい副反応は?

ワクチン接種が進むにつれ若い男性に心筋炎の報告がされるようになりました。2回目接種後1週間以内に発症することが多く、胸の痛みや息切れ、違和感などの症状をきたしますがほどんどが軽症で医療機関の対応で回復しています。

現在国内の報告ではモデルナ製での心筋炎報告がファイザー製を上回り(※6)、北欧の一部の国ではモデルナ製の若者への使用一時中断が発表されています。ワクチン接種後に激しい運動は避けるように特に若い男性は配慮してください。ワクチンでの心筋炎の頻度としては稀であり、新型コロナウイルス感染による合併症として心筋炎・心膜炎になるほうが圧倒的に多いため、感染予防が大切です。

若い世代でもワクチンを打つ意義とは

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日本人の1.3%が新型コロナウイルスに感染しており、いつ誰が感染してもおかしくない状況にまで感染拡大し、私たちはこの1年半の間に多くの人や学校生活や娯楽や人生におけるさまざまな経験の機会を失いました。そして感染によって合併症や後遺症を残す人もいます。

また若者は人とかかわる機会を多く持ちやすいですが、感染していても無症状や軽症で済んでしまうことで、友人や家族へと感染が広がっていくことが懸念されています。

若者がワクチンを打つことで自分の命や生活だけでなく周りの人も守ることができます。まだ特効薬のような治療薬がないうちは感染拡大予防の一つとしてワクチン接種は有効です。

残念ながらワクチン接種でも感染を完全に防ぐことはできずブレイクスルー感染の報告もされ、どちらのワクチンであっても3回目接種は必要と言われています。しかし、ワクチンによって、感染しにくくなること、感染しても無症状であること、後遺症を少なくすること、重症化を防ぐこと、排出されるウイルス量が少なく期間も短くなることから周りへの影響も減らせることがわかっています。

自分だけでなく周囲の感染も防げるという点で若い世代でもワクチンを打つ意義があるのです。

10代にはモデルナ? ファイザー?

どちらも安全性と有効性が認められています。モデルナ製は副反応がファイザー製より多く報告されていますが、接種後の抗体量も多いことや変異株に対する予防効果も高いことも報告されています。

しかしどちらであっても重症化や後遺症リスクを下げることができるためどちらのワクチンでも打てるタイミングがあれば、できるだけ早く免疫をつけることを考えていただきたいと思います。

参考
※1  厚生労働省HP 
※2・6 厚生労働省HP副反応疑い報告の状況について 000838806.pdf (mhlw.go.jp)
※3  厚生労働省HP新型コロナワクチンの副反応について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
※4  厚生労働省HP
※5  厚生労働省HP 000830626.pdf (mhlw.go.jp)

竹中 奈織 
兵庫医科大学卒業後、病院勤務を経て産業医へ。シンガポール駐在経験のある3児のママ。妊娠糖尿病や妊娠高血圧になったことで予防医学を学ぶ。多くの人に今だからこそできる対策を伝えていきたい。

資格
日本内科学会認定医
日本医師会認定産業医
日本抗加齢医学会専門医

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