「生理は敵」と考えると精神がすり減ってしまう。
写真左・岸田奈美さん、右・中元日芽香さん
中元:岸田さんは女性特有の不調に悩まされたことはありますか?
岸田:以前はほとんどなかったんですが、30代に突入する頃から生理痛がひどくなってしまい…。あまりにつらくて初めて婦人科に行ったんです。同じ頃に、仕事を頑張りすぎて情緒不安定になり、心療内科にも通院をしていました。
中元:その経験によって、生活に変化はありましたか?
岸田:健康だし、とことん頑張れると思っていたけれど、自分を過信してはダメだと痛感。今は、生理に関しては家族やマネージャー、親しい編集者の方に「来週あたり、たぶんアカンから」と事前に宣言して、未来の自分に向けて前向きに“諦める”ようにしています。
中元:私もピルを飲むようになってから周期が一定になり、生理の時に予定を詰めすぎないように対策できるようになりました。それまでは、生理痛やPMSがつらい時は「仕事の邪魔しないで!」という感情でいっぱいで、生理と仲良くしてあげられなかったですね。
岸田:「生理は敵」って思っていると、自分が自分に裏切られているような気がして精神がすり減ってしまうんですよね。それに、休む基準は法律で決まっているわけじゃないから、自分で決めないといけない。私は自分を過信して痛い目を見たので、今は自分の感覚を信用していません。だから、スマートウォッチで睡眠の質やストレス値を計測して、自分の心身の状態を判断するようにしています。また「先週しんどそうだったから、今週は休みましょう」といった周囲の提案を素直に受け入れるのも大切だなと。
中元:自分への期待値が高い人ほど、周囲が休むことを勧めてくれても「私はこんなはずじゃない」と頑張ってしまう。人間なのだから毎日100%のパフォーマンスを発揮するのは無理で、60%の日もある。そう考えるようになってから、私も少しラクになれました。
岸田:私も経験があるんですが、生理痛で苦しんでいる時って八つ当たりしてしまったり、相手を思いやる余裕がなかったりするので、無理すると人間関係を壊すことにつながりがち。頑張りすぎないことが、結果的に、自分も周囲もハッピーにしてくれると思うんです。
中元:生理でつらそうな友達や同僚への対応って難しいですよね。必要以上に「大丈夫?」と心配しすぎると相手が「迷惑をかけてしまっているかも」と余計に気にしてしまうので、あえて構いすぎないことも大事だと思っています。
岸田:そう、心配ではあるけれど他の人にはやってあげられることがあまりないんですよね。だからこそ、やっぱりつらければ休むほうがいい。それに、自分が休むことで、他の誰かも休みやすい組織になっていく。「私は組織の“休み偏差値”を上げているんだ」って考えれば、休むことへの後ろめたさも減るんじゃないかと思います。とくに男性上司には言いづらいかもしれませんが、つい頑張りすぎてしまう女性は、不調を3割増しくらいで伝えたほうが理解してもらいやすいですよ。
中元:岸田さんもそうだったと思うのですが、歳を重ねるごとに体も環境も変化していく。10代の頃は平気でも今は違うなら、それを受け入れて、今の自分を把握することも大事だと改めて感じました。
岸田奈美さん 1991年、兵庫県生まれ。株式会社ミライロを経て、作家として活躍。著書に『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)、『もうあかんわ日記』(ライツ社)など。
中元日芽香さん 1996年、広島県生まれ。2012年、乃木坂46メンバーとしてデビュー。’17年にグループを卒業し、現在は心理カウンセラーとして活動。新著『なんでも聴くよ。』(文藝春秋)が発売中。
衣装はスタイリスト私物
※『anan』2024年9月25日号より。写真・水野昭子 スタイリスト・岡安幸代(中元さん) 取材、文・音部美穂
(by anan編集部)