間宮祥太朗「今やる意味があると思った」 不朽の名作『破戒』に挑む

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2022.07.08
1906年に出版された、島崎藤村の小説『破戒』。これまで、木下恵介監督と市川崑監督により映画化された不朽の名作が、60年ぶりに、前田和男監督により映画化された。主人公の瀬川丑松を演じたのは、間宮祥太朗さん。被差別部落に生まれ、父の戒め通りに出自を隠して小学校教員になった丑松の、苦悩を描いた難役に、どのような想いで挑んだのだろう。
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「なぜ、今また映画化するんだろう、と考えながら原作と脚本を読みました。その上で、物語が持つ普遍性を語り継ぎたいという製作陣の意志にも納得して、ぜひ演じさせてほしいとお返事しました。部落差別をテーマにした作品ですが、現代にも、人種差別や新たに名前のついた多くのハラスメントなどが存在します。僕自身、学生時代に学校の授業で習っていた時よりも、差別を身近に感じているからこそ、今やる意味があると思ったんです」

暗く、重いテーマと向き合い、気迫のこもった芝居で、芯の強い、そして純粋な丑松の人間性を丁寧に演じきった間宮さん。

「同僚や上司、生徒たちに対して、立場や年齢ではなく、対ひとりの人間として向き合うのが、丑松の素敵なところ。全てのお芝居に悩みましたが、生徒たちに自分の出自を告白し、戒めを破るシーンに向けて、逆算しながら演じていきました。それは、熱量の配分というより、結末に向かうために進むべき道を通るという感覚かな。プレッシャーを感じていた重要なシーンだったので、撮り終えたあとは、ホッとしました」

一方で、石井杏奈さん演じる志保と、言葉は交わさなくとも惹かれ合う描写が、とても美しい。

「言葉もツールも多い今の時代とは違い、丑松と志保の、気持ちを隠しているのに溢れ出てしまう感じは、僕もすごく素敵だと思う。可愛らしい二人を、もどかしく感じてもらえたらいいなって。また、繊細な表情の移ろいや、あえて丑松の面持ちがわからないように後頭部だけを撮ることで、どんな表情をしているんだろうと、観ている人が作品にまた一歩近づくと思っていて。そんな、説明しすぎない余白みたいなものを生み出した、監督の手腕も活きていると思います。丑松を演じた僕が思う『破戒』があり、みなさんがそれぞれ感じる『破戒』があるはず。そうやって、この作品が広がって、想いが増えていけば嬉しいです」

映画やドラマなど、出演作をどんどん増やし、多彩なお芝居でエンターテインメントを届けてくれる間宮さんが、役者として大切にしているのはどんなことだろう。

「(少し考えて)作品や役によって、大切にしていることが変わることかな。例えば、『ナンバMG5』の難波剛と、丑松がそれぞれ大切にしていることは違うから。切り替えるというよりは、現場に入れば自然と変わります」

プライベートでは、今まであまり触れてこなかったエンターテインメントに惹かれているそう。

「ピクサー映画や、日本の昔のテレビドラマなどを見るようになりましたが、この前たまたま行った『ムーミンバレーパーク』もすごく新鮮で。ムーミンママの“今は絶対に旅に出るべき。じゃないと、家族が悪い方向に向かう気がするの”という言葉が素晴らしくて、家族で気分転換するという発想は刺激になりました」

映画『破戒』 亡くなった父からの戒めで、被差別部落出身であることを隠して、地元を離れ、小学校教員として奉職する瀬川丑松(間宮)。生徒から慕われるよい教師であったが、出自を隠していることに悩み、差別の現状を体験するたびに心を乱しつつも、下宿先の士族出身の志保(石井杏奈)に、恋心を抱いていた。そんな時、丑松はある事件をきっかけに、決意を胸に教え子たちが待つ最後の教壇に立つことに…。7月8日より全国ロードショー。

まみや・しょうたろう 1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。主演作に映画『殺さない彼と死なない彼女』、ドラマ『ナンバMG5』ほか。ドラマ『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)に出演。

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※『anan』2022年7月13日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・津野真吾(impiger) ヘア&メイク・三宅 茜 取材・文・若山あや

(by anan編集部)

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