
CD1枚目の音がはじまる直前、コンサート会場にワープして客電が落ちる瞬間のワクワクが頂点に達する高揚を感じた。予想通り、アカペラからはじまるオープニング。耳がゾワッとした。今年ソロデビュー50周年を迎えた山下達郎がリリースしたライブ・アルバム『JOY 2』。
収録されたライブ音源は、2008年からのものだ。つまり山下さんが55歳になってライブを再開した時期から昨年までの18年分の膨大な数の音源、600超の公演の中から選ばれたトラック。3枚組、全38トラック、220分と思う存分聴いてちょうだいな、と言わんばかりの大ボリュームに仕上がった。収録した会場はホールクラスから地方都市の市民会館、ライブハウスまでさまざまだが、音の違いについてはほとんどなく、同じ一つの会場で収録したかのよう。ところで全国ツアーを再開した理由について、当時ご本人が「このままでは音楽はすべて配信で聴く時代が来るのではないか」と危惧した、とインタビューで語っていたことを思い出す。その思いがあったからこそ、いまこうして、この素晴らしいライブ・アルバムを何度でも楽しめるというわけだ。
個人的には湘南住まいの私にとって、「SPARKLE」や「さよなら夏の日」「THETHEMEFROMBIGWAVE」など、サマーソングが揃った《Disc1》はかつて達郎ソングを聴きまくっていた、あの熱い時代へ、ひらりと時間旅行したような気分になる。
山下さんといえば、コンサート以外では決して姿を見せないアーティスト。数年かけてスタジオにこもり、一作品ごとに新しい切り口やポップさで楽しませてくれるスタジオ・パーソンの印象がある一方、『JOY2』を聴きながらグレイテスト・ショーマンでもあると改めて感じた。独特の高低差のあるヴォーカルの魅力はもちろん、そしてギタープレイもカッコいい。もちろんこのうるさ型のバンマス(?)を支えるサポートミュージシャンの凄さといったら。ほんと、国宝級でしょう。
’80年代の日本のポップミュージックが“CITYPOP”という名称のもと海外で爆発的に人気を博しているけど、なかでも山下さんは奥様の竹内まりやさんと並んでレジェンド的な存在だ。本作でも当時のナンバーをいまの新しい演奏、パフォーマンスで聴かせてくれているのが「高気圧ガール」や「RIDEONTIME」「蒼氓」など名曲の数々。1989年に『JOY』を聴いたとき、いつか『JOY2』が世に出ることを首を長くして待っていた。37年待っていてよかった!
Profile
山下達郎
やました・たつろう 1976年、アルバム『CIRCUSTOWN』でソロデビュー。2015年には芸術選奨文部科学大臣賞選出。2025年には1986年から続く『クリスマス・イブ』40年連続オリコン週間シングルランキング100位入りという記録がギネス世界記録に再認定された。
1989年発売!

『JOY-TATSUROYAMASHITALIVE-』
1989年11月に発売された2作目のライブ・アルバム。'80年代の10年間の音源を収録。ジャケットアートワークは『JOY2』と同じくアンドレ・ミリポルスキー。¥5,016(WarnerMusicJapan)
New!

『JOY 2/TATSUROYAMASHITALIVE』
2008年から18年間に実施した全国ツアーの600を超える公演から本人が選んだベストオブベストテイクを38トラック収録。【初回生産限定盤(4CD)】¥6,900【通常盤(3CD)】¥6,600(WarnerMusicJapan)
anan 2515号(2026年10月14日発売)より































