
舞台『僕らの時代じゃない』に出演中の鈴木杏さんにインタビュー。
台本を読んだ時、自分自身に鏡を突きつけられているような気持ちになりました
高校の同級生カップルの結婚式で再会し、居酒屋に集った3人。とりとめのない会話から始まった3次会だったが、いつしかお互いが本音をぶつけ合い、場は混沌と化してゆく。『僕らの時代じゃない』は、鈴木杏さんをはじめ、森田剛さん、峯田和伸さんという魅力的なキャストが集い、そんな居心地の悪い状況が展開されてゆく。
「作・演出の三浦(大輔)さんは、普段は隠しているけれど内面に持っている人間の本当の部分を、いろんな方向から炙り出そうとしている作家さんなのかなと思います。でも、稽古に入る前に三浦さんの手がけた映画『愛の渦』なども観返してみたら、すごくド直球な風刺の中に純粋性みたいなものも感じたんです。若い頃は、インパクトの強い題材のほうに意識がとられていたけれど、年齢を重ねて、奥底にある本当に描こうとしていたことがわかってきたのかもしれません。あらためて好きな作風だなぁと思いました」
それにしても、その会話の内容があまりに生々しく、観る側は突き付けられるものがある。ましてや、演じる側は余計に、だろう。
「台本を読んだ時、自分自身に鏡を突きつけられているような気持ちになりました。でも、白か黒かで簡単に二分されがちな今の世の中で、本来人間はグレーな生き物なんだと、自分自身を肯定してもらえる感覚にもなったんです」
居酒屋というワンシチュエーションの中でおこなわれる会話劇。それだけに、「会話の緩急や場の空気の変化みたいなところを、すごく丁寧に稽古している」そう。
「とにかく言葉で殴り合う、泥くさいガチンコ勝負みたいな演劇なんです。ただ同時に、緊迫した空気をふっと和らげるような、お客さんが思わず笑っちゃう部分も大事にされている気がします。共演の峯田さんは台本の理解が深いし、森田さんは場をグッと引っ張ってくれる力がすごくある方。頼りになるのはもちろんですが、ふたりともそこにいるだけでなんか面白いんですよ。この面白い生き物に食らいついていきながらも、どこか隙のようなものも出していけたらというのが今の課題です」
三浦作品へは初参加というが、不思議と違和感がない。むしろ、自分を一切飾ることをせずに全身で役に向き合っていく鈴木さんという俳優だからこそ辿り着ける境地があるのではと期待が高まる。
「どんなにさらけ出してもそれは役であって、私は自分の体を役に貸しているだけ、という気持ちがあるんだと思います。中学生の頃から、人間の内面の暗い部分を描いたような作品が好きだったし、そういうものに挑戦したいと思っていました。お芝居の中で自分をさらけ出すことに関しては、蜷川(幸雄)さんの舞台でしっかりと叩き込まれたし、蜷川さんの稽古は、毎回、徹底的に内面を引きずり出される感じでしたから、どこかリミッターみたいなものが壊れているのかもしれません(笑)。でも、作品を通して、自分自身の内面を見つめる機会があることは、見て見ぬふりをして過ごしてしまうより、人生にとってはよくて、いい歩き方ができるのかなと思っています」
Profile
鈴木杏
すずき・あん 1987年4月27日生まれ、東京都出身。映像作品のほか数々の舞台で活躍し、2021 年には読売演劇大賞で大賞・最優秀女優賞を受賞。出演ドラマ『虚ろな十字架』(WOWOW)が配信中。

『僕らの時代じゃない』
SNSでの誹謗中傷を乗り越え結婚した芸能人カップル。その高校の同級生3人が、結婚式の2次会後に居酒屋に集った。ぎこちない空気の中、話題はとんでもない方向へ──。上演中~10月27日(火) 東京・紀伊國屋ホール 作・演出/三浦大輔 出演/森田剛、鈴木杏、峯田和伸全席指定1 万1000円 キョードーインフォメーション TEL. 0570-200-888 愛知、京都公演あり。
写真・小笠原真紀 スタイリスト・安藤真由美 ヘア&メイク・菅野綾香 インタビュー、文・望月リサ
anan 2515号(2026年10月14日発売)より































