イショクのヒーローチーム、王道を行く! 映画『ハイファイブ!』

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群像劇の名手カン・ヒョンチョル監督が描くのは、臓器を移植されたことで規格外の能力を手にするヒーローチーム。


ヒーローものは倒すべき敵があってナンボ。そのヴィランがイケてる

臓器を移植されたレシピエントが、それぞれの臓器に対応した規格外の能力を手にする。『サニー 永遠の仲間たち』など群像劇の名手カン・ヒョンチョル監督が描くのは、そんな事情で誕生した寄せ集めヒーローチームの大奮闘。

彼らがすごい能力を得たのは、ドナーが超人的な存在だったから。結果、心臓を譲り受けたテコンドー少女ワンソは、驚異的な怪力とスピードを手に入れる。肺を移植された脚本家志望の青年チソンは、人並み外れた肺活量で万物を吹き飛ばせるようになり、角膜を移植された自由人キドンは電磁波を操れるように。腎臓を譲り受けた乳酸菌飲料配達員ソンニョの能力はまだ覚醒していないものの、肝臓を移植された現場作業班長ヤクソンは回復能力を手に入れたという次第。

しかし、これがワンソとヤクソンの能力以外は、単独ではあんまり世のため人のためになりそうもない。そもそもキドンの能力は、「なぜ角膜で?」とツッコみたくなるくらい。でも、そんな能力も全員が力を合わせればものすごいことになるというのが、ヒーローもののお約束なわけで。とはいえ、5人は性格も背景も違うがゆえに、活動前から分裂の危機に。そんな彼らを一つにするのが、謎のドナーの臓器を移植された6人目の存在・新興宗教の老教祖ヨンチュンの野望なんですね。膵臓移植によって自分が恐るべき力を手にしたことを知ったヨンチュンは、ほかの5人の力も自分のものにして、「神」になろうとするんですよ。

過保護な父親と、彼を心配させまいと超能力を隠しつづけるワンソとのやり取りや、いい意味で空気の読めないソンニョを交えたヒーローチームの会話は笑いがいっぱい。ソンニョの乳酸菌飲料配達カートが、それぞれの能力を利用することでスーパーヒーロービークルばりのアクションを繰り広げたり、その見せ場をカーチェイスには不似合いなリック・アストリーの「Never Gonna Give You Up」が彩ったり。ポップな楽しさ満載の前半は、それだけでエキサイティング。

でも、ヒーローものは倒すべき敵があってナンボ。そしてそのヴィランがイケてるとくれば、言うことなし! なにしろ、さらなる力を得たヨンチュンは若き日の容姿も手に入れる。その変貌した姿を演じるのがパク・ジニョン。危険なカリスマ性を放つヨンチュンときたら素敵すぎて、思わずワンソたちを応援するのを忘れそう。教条を唱える姿も絵になるし、その口上をキメようとしても寄せ集めヒーローたちには腰を折られちゃうのも面白い。かっこいいのにしっかり笑いに絡むのが、たまらないんです。こんなにアゲてくれるヴィランは、トム・ヒドルストンが演じたロキ以来かも!

ユニークな発想から生まれているけれど、スピリットはヒーローものの王道を貫いているこの作品。過保護な父親にワンソが息苦しさを感じていたり、実はそれぞれ葛藤やトラウマを抱えているヒーローたちが、おたがいの力も借りて、その問題に向き合っていく姿も、やっぱり胸アツ。ヤクソンの作業現場に貼ってあるポスターの標語も、本物のヒーローについて考えさせてくれる名言ですよ。この標語も胸に刻んでね。

『ハイファイブ!』

監督・脚本/カン・ヒョンチョル 出演/イ ・ジェイン、アン・ジェホン、ユ・アイン、ラ ・ミラン、キム・ヒウォン、オ・ジョンセ、シ ン・グ、パク・ジニョンほか

10月16日より 新宿ピカデリーほか全国公開。

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文・杉谷伸子

anan 2514号(2026年10月7日発売)より
Check!

No.2514掲載

上質なご自愛。

2026年10月07日発売

たまには自分をいたわり、ゆったりとした時間を過ごしたいもの。忙しない日常で疲れた心と体をリセットするための、ちょっと上質なご自愛のアイデアを集めました。

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