
未知の才能を発掘し、共に作品を生み出すオーディション『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之- 』。メインパートナーを務める山田孝之さんの情熱と想いを解き明かします。
Index
What’s?
『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之- 』
俳優の阿部進之介さん、映画プロデューサーの伊藤主税さん、山田孝之さんなどが企画した、本気で俳優を目指す人を探すためのオーディション。経験不問、年齢は15歳以上(上限なし)などの条件で参加者を募り、15~84歳、約1万4000人がエントリー。その様子は10月1日(木)よりLeminoにて独占配信。
人間性を試すことで俳優に必要なものが見えるはず
── 『THE OPEN CALL』の始まりを教えてください。
2020年から、俳優の阿部進之介と今回のプロデューサーの伊藤(主税)さんと「MIRRORLIAR FILMS」(年齢、性別、職業など関係なく、誰もが自由に映画制作に参加できる短編映画制作プロジェクト)をやっていて、面白い人を発掘して育成したいという考えのもと、短編映画を作っていました。その流れで長編映画にも挑戦したい、そしてせっかくならしっかりオーディションをして、しかもその過程まで番組にして見せてしまおうと。スターキャストで固めた作品ではなく、本気で俳優を目指す人をオーディションで選ぶ過程から見せることに意味があると思いました。
── その意味とは?
俳優って何をしているかわからないじゃないですか。役作りや芝居のこと、俳優が何を考えているのかを知ってもらうのは大事なことだと思ったんです。純粋に芝居がいいかどうかだけではなく、オーディションにより人間性まで試されることで、俳優にとって必要なものが見えてくるはずだと。
── オーディションが進行中ですが、今のところ審査をしてみての感想を教えてください。
なんで活躍していないんだろう、と不思議に思うぐらい芝居が上手い人がいっぱいいます。会議室みたいな部屋で、私服で芝居をしてもらうんですが、すぐにグーッとその芝居に引き込まれて、そのうち背景や衣装までも見えてきて。芝居が終わった頃には3シーンぐらい先までイメージできるから、うわ、すげえ! みたいな。参加者はそれぞれ、演じる人物の背景などの設定を自分なりに作ってくるんですが、その人生が、芝居を終えたあとにどう見えてくるかというのはかなり大きいですね。オーディション番組はいま世界中にありますけど、ここでは歌わないし踊らない。芝居だけを見ることで何がいいのか、悪いのかを可視化して言語化したものを番組にするので、俳優という仕事が何かというのは伝わると思います。最終的に選んだキャストで映画を作りますが、すでに彼らの芝居を見るのがめちゃめちゃ楽しみです。
── 期待が膨らみます。記者会見では「役があれば参加したいし、一緒に高め合いたい」と発言されていました。このプロジェクトの経験はご自身にどんな影響が?
普段、どれぐらいワクワクするかで仕事を選んでいるんですが、今回も初めましての人がたくさんいる中で、すげえな、俳優って面白いなとワクワクすることはモチベーションに繋がっていくのかな。長年、自分のことに必死になってやっていると、やっぱりどこかのタイミングで「何のために俳優をやっているんだろう?」と疑問が出てきたりもしますから、ワクワクすることは大事なんですよね。過去に僕がプロデュースをして、阿部進之介が企画・原案・主演をした映画『デイアンドナイト』でも、現場で皆さんの芝居を見ていて、俳優ってすげえな、僕も自信を持って「俳優です」と言っていこうと思いました。
── 10〜20代は数多くの作品でお芝居を磨き続け、30代では映画『デイアンドナイト』や『ゾッキ』などで制作にも関わるようになって。そして40代の今はこの新たなプロジェクトに挑戦。俳優としてのフェーズとか、人生設計みたいなものはお持ちですか?
ないです。いつ死ぬかわからないんで。ただ、長く続けるうちに後輩が増えていったり、結婚して子供が生まれると、じゃあ子供が自立するまでにあと何年あるか…みたいな意識は勝手に出てきます。そんな中で、10歳下の後輩が、20代の頃の自分と同じようなことをグチっているのを聞くと、何も変わっていないんだなって思う。じゃあ実際に自分がプロデューサーをやってみれば、その人たちの苦しさがわかったり、何をしているのかが理解できるのかなって。自分の立ち位置から動かずに、外から見ているだけだとわからないから、じゃあそっち側にも立ってみようと思ったりするんです。
── 立場を変えることでステップアップや気づきにもなるんですね。
『ゾッキ』で監督をやった時は、衣装合わせに俳優が来てくれただけでこんなにも嬉しいんだと思いました。だって脚本を読んで断られることだってあるのに、実際に衣装合わせに来てくれるってことは、出演してくれることが確定したってことじゃないですか。正直、僕自身の衣装合わせの時、身長と体重が同じで顔が濃い人なら自分じゃなくていいだろうとか思っていたこともありました。
── 先ほど、何のために俳優をやっているのかと思う瞬間もあるとおっしゃっていましたが、27年間俳優を続けてきたモチベーションを保つ工夫はありますか?
20代の頃から架空の逃げ道として“いつ辞めてもいい”と思っていて。これ一本で生きていくとか、これしかないと思うと執着が湧くし、生きづらくなるから。
── そう思ったきっかけは?
あります。ブルース・リーも「Be water(水になれ)」と言っていますが、例えば、ミュージシャンの方がドラマで芝居をする様子を見ていると、なんであんなに肩の力が抜けていていいんだろうと感じるんです。それってたぶん、ミュージシャンという帰る場所があるから。肩の力を抜くというのは一番難しいのでいまだにできませんけど。でももし俳優の仕事がなくなったら、今までそこに費やしてきた時間は空くわけで、そうなると次にやりたいことは見つかると思います。だからいつもワクワクできるんです。
頑張っていない人も「頑張れ」と応援したい

── アンアンの今回の特集テーマは“応援”です。
『THE OPEN CALL』そのものが応援でしかないですよね。普通のオーディションよりもカメラがたくさん入り、日数も長ければやることも多い。参加者には、頑張れ頑張れ、楽しんで! という気持ちでいっぱいです。
── 逆に、ファンや観客から応援されているという実感や、それが活力になることはありますか?
俳優にとって、作品を見てもらうことが一番の応援だと思っています。僕の場合、活力は自分から出てくるもの。新たなプロジェクトや作品へのオファー、役と向き合い一体化できることもそうですが、役がなかなか掴みきれない時も活力になる。自分がどう活力に変えるか。そうじゃないと、壁にぶつかった時に凹んじゃうから。それができない人は結構多いと思いますが、僕は壁にぶつかった瞬間に切り替えられます。だって凹んでいても壁はなくならないから。
── それは昔からの考えですか?
僕の母は宮古島出身なんですが、島の農家さんたちは、台風が来て農作物が全部ダメになったからといって、凹んでてもどうにもならないんです。すぐに切り替えて次をやろうと立ち直って生きてきた。これは実際にある言葉らしいんですが、僕にもそんな“台風DNA”があるみたいです。
── 妙に納得できますね。
そうですよね。ただみんなが壁にぶつかって、まだ「痛ぇ」って言っている時に、「次行こ!」と言われても着いていけないよと言われたので、一回黙りますけど。
── なるほど。今、個人的に応援したいことはありますか?
最近インスタで見つけたミュージシャン、Maddie Ashmanは歌がいいので応援しています。他にも画家など、応援したくなる人はたくさんいます。SNSってそういう出会いがあるのでいいですよね。でも僕は基本、全員応援しているんじゃないかな。
── 全員…人類ってことですか?
人だけじゃなく、コンビニの前に猫がいたら、「頑張って生きろよ」と猫用の食べ物を買ってあげたり。家の植物の元気がなくなれば「頑張れ」と思うし。頑張っている人はもちろんですが、頑張っていない人も「もうちょい頑張れよ」って応援したくなります。
── 山田さんは「頑張って」と応援されたら嬉しいですか?
僕はちょっとひねくれているところがあるので、「頑張って」はプレッシャーになるかも。「楽しんで」のほうがいいですね。
Profile
山田孝之
やまだ・たかゆき 1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。俳優として数々の映画やドラマで主演を務めながら、近年は企画・プロデュースでも手腕を発揮。映画『正体』で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。
写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・飯田恵理子(CORAZON) ヘア&メイク・南辻光宏 取材、文・若山あや
anan 2513号(2026年9月30日発売)より

































