何に対して、どんなときに確認を? 〈性的同意〉が成立する3つの条件とは。
ananが〈性的同意〉を取り上げて、今年で4年目。この言葉や意味も徐々に広がっていると思いますが、弁護士の寺町東子さんに改めて解説をいただきました。
「体を触る、キス、挿入など“性的な行為”に対して、お互いに積極的に望んでいるかを確認することが、〈性的同意〉です。今からすることが性的な行為であることを理解できており、嫌ならいつでも断れる状況で、さらに自分が“この人としたい”と思っている。この3つがあることが、性的同意が成立している状況。互いに“したい”という意思表示を明確にする、それがとても大切です」
1、判断能力がある
セックスがどういうものであり、自分がセックスをすることの心身への影響も理解ができている。その上で、自分がセックスをするかしないかの判断ができる状況にあることが大事。それが判断能力。
「泥酔中や眠っているときは、そういった判断はできないもの。意識があり、する・しないを自分で決められることがまず一つ」
2、断る自由がある
「相手がどんな人であろうと、“したくない”と断る自由はある。同意が成立するためには、相手との間に力関係や上下関係がなく、対等であることが重要です」
例えば会社の上司など明らかに立場が上の人から迫られ、不利益を憂慮して応じてしまったとしたら、それは真に同意のあるセックスとはいえません。
3、この人と性行為がしたい
「セックスする、しないという意思に加え、“誰とするか”も、性的同意においては重要な要素。自分がしたいと思う相手としか、する必要はありません」
イヤな相手としなくていいのはもちろんですが、暗い場所で気づかず夫や恋人だと思ったら違った、なりすまして騙された、というのも同意のないセックスになります。
◎今年7月に刑法が変わり、同意のない性行為やわいせつな行為は〈不同意性交等罪〉〈不同意わいせつ罪〉という罪に。
2017年、110年ぶりに性犯罪に関する刑法が大幅改定。しかしまだ多くの課題の積み残しがあり、今年6月にさらなる改正案が可決・成立。これまでの強制性交等罪と準強制性交等罪は、〈不同意性交等罪〉として処罰されることに。また盗撮を処罰する〈撮影等罪〉が設けられ、性行為への同意を判断できないとみなす年齢も16歳未満に。
どんなときに同意が必要? 断るときはどうしたら? 6つのケースで解説。
「セックスしていい?」。したいと思った側が、相手に同意をとろう。
先に“したい”と思った側が、「セックスしたいんだけどいい?」と相手に確認をするのが、性的同意の最も基本的なルール。アクションに移るのは相手の同意が得られてから、が基本です。女性も、自分がしたいと思ったら、きちんと相手の意思確認を。
「手を繋いでいい?」「キスしたいけどどう?」。したいことを伝えて、相手の気持ちを確認しよう。
相手の同意が必要なのは、ベッドの上の行為だけではありません。手を繋ぐ、キスをする、抱きしめるといった、他者の体と接するときには、必ず相手の意思を確認しましょう。人の体に触れるということは、本来とてもセンシティブなことです。
途中で挿れたくなくなったら、その段階で「挿入したくない」と断ってもいい。
キスしたんだから挿入もOK。未だにそう思う人もいるようですが、これは×。本来はキス、前戯、挿入の段階ごとに同意が必要。挿入の寸前に、「やっぱり挿れたくない」と途中でセックスをやめる権利は、女性側にも男性側にもあります。
恋人でも、夫婦でも、毎回確認を。相手に「したくない」と言われたら、無理強いはしない。
恋人や夫婦といった関係ならば、相手といつでもセックスできるし、また相手から請われたら応える義務がある…というのは大きな間違い。どんな関係でも、セックスしたいときは毎回同意をとる。「したくない」という相手に強要するのは×です。
「どんなセックスをしたい?」。したいことを伝えるのも、ある種の同意。
〈性的同意〉には、セックス自体をしたい・したくない、という意思以外にも、“こんなことをしたい”または“これはしたくない”といった、セックスの具体的な内容部分を共有する側面も。コミュニケーションをとることが、いいセックスへの第一歩。
断るときは「あなたのことは好きだけど、今日は体調が良くないから」など理由を一緒に伝えよう。
仲が良い相手ほど、断るのは難しいと思う人は多いはず。理由がある場合はその理由を説明し、「セックスをしたくないだけであなたを拒否しているわけではない」という気持ちを伝えましょう。お互い気持ちを伝えやすくする、その努力は大切です。
寺町東子さん 弁護士、社会福祉士、保育士。東京きぼう法律事務所所属。女性や子供の権利に関してさまざまな働きかけをしている。性暴力に関する執筆やコメントも多数。
※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。イラスト・ながたなつき
(by anan編集部)