田代 わこ

木村多江「背負い投げされた気分」穏やかな俳優が思わず興奮した展覧会

2023.4.16
上野の東京国立博物館(トーハク)で、特別展「東福寺」が開かれています。紅葉の名所として知られる京都・東福寺は、実は文化財の宝庫。国宝や重要文化財に指定されている作品を数多く所蔵しています。今回、本展で音声ガイドナビゲーターを務める俳優の木村多江さんに、展覧会の見どころなどお聞きしてきました!

木村多江さんがナビゲーター!

木村多江さん

【女子的アートナビ】vol. 288

特別展「東福寺」では、京都・東福寺が所蔵する膨大な寺宝のなかからセレクトされた国宝や重要文化財指定のお宝など、約150件をまとめて展示。鮮やかな仏画や巨大な仏像、書画など、日本文化の魅力をたっぷりと味わえます。(会期中、展示替えがあります)

東福寺は、鎌倉時代前期に摂政・関白を務めた九条道家(くじょうみちいえ)が発願し、開山として円爾(えんに)を招いて創建された禅宗寺院です。

応仁の乱などの戦火を免れた貴重な文化財を数多く所蔵。国宝7件、重要文化財98件、合計で105件もあり、まさに文化財の宝庫といえるお寺です。

東福寺初となる大規模展覧会で音声ガイドを務めるのは、木村多江さん。今回、本展の見どころなどをお聞きしてきました。

想像を超えた楽しい作品がいっぱい!

――展示をご覧になって、いかがでしたか?

木村さん 禅宗の美術は硬いのかなと思っていたら、想像を超えて楽しいものがいっぱいありました。

例えば、《五百羅漢図》のところには四コマ漫画があり、その漫画にタイトルまでついていて、ストーリーもわかりやすく、ポップで楽しくなりました。作品そのものも色彩が豊かで美しく、描かれている羅漢のお顔も近所にいる人のような雰囲気で、身近な感じがします。

また、《虎 一大字》という書の作品も、虎の絵のような文字のような、あるいはカメレオンにも見えます。禅宗の教えにある「人の心次第」を伝えようとしていたのかもしれないですね。いろいろ自由に解釈ができ、想像が膨らみました。

すごく興奮しちゃいます(笑)

――木村さんは長年、NHKBSプレミアム「美の壺」でナレーションをされ、日本の文化にも精通されています。日本の美術工芸の楽しみ方を教えていただけますか?

木村さん  日本には、すばらしい作家や職人の方々がたくさんいて、世界に誇れる技術があります。今では再現できないような先人たちの技術もあり、そんな方々の技を発見できることが楽しいです。

例えば、今回の展覧会で見られる鎌倉時代の《二天王立像》も、あんな大きな仏像を寄木でどうやってつくったのだろうか、とびっくりします。今のようにデジタル技術がない時代、全体像をどのように考えてつくっていくのか、想像するとすごく興奮しちゃいます(笑)。

こんなにすごい作品が日本にあるんだよ、と私はみなさんに言いたいです(笑)。昔はどんなふうにつくったのか、どんな人がつくったのか、と想像しながら見ていただきたいですね。

――木村さんご自身にとって、美術に触れることで何か影響はありますか?

木村さん お芝居は、アウトプットのことが多いので、美術展に行っていろいろ拝見すると、作者の精神や魂に触れられる気がして、それがインプットになり、自分を鼓舞することにもなります。

想像力が膨らむような感動を、見ている人に与えることができる美術作品に触れると、私もそうなりたいと目指すものができます。美しいものやびっくりする作品を見ると、刺激になり、活力にもなります。

背負い投げされた気分です(笑)

――最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

木村さん この展覧会は、今まで抱いていた禅宗美術のイメージを覆されて、背負い投げされた気分です(笑)。それくらい楽しかったです。圧倒的で、いろいろなことを想像して、思わず見ながらニヤニヤ笑いました。すごく楽しい気分にさせてくれる展覧会です。どの世代でも、楽しいことが好きと思う方は、ぜひ見に来ていただきたいです。

インタビューを終えて…

穏やかな優しい口調でお話をしてくださった木村さん。日本の美についてお聞きしたとき、作品や作り手について、とても愛おしそうな表情で話されているお姿が印象的でした。

木村さんが優しく語りかけてくれる音声ガイドを聴きながら、ぜひ展示を楽しんでみてください。

Information

会期    :~5月7日(日)※休館日は月曜日(ただし、5月1日は開館)
会場    :東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間  :9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
観覧料   :一般 ¥2,100、大学生 ¥1,300、高校生 ¥900、中学生以下無料

公式HP: https://tofukuji2023.jp 

京都会場:京都国立博物館 2023年10月7日(土)~12月3日(日)