
明治時代の斬新ヌード画も! 重要文化財の「意外な秘密」が明かされる展覧会
オール重要文化財の貴重な展覧会!

『重要文化財の秘密』会場入り口
【女子的アートナビ】vol. 287
『重要文化財の秘密』では、重要文化財として指定された明治以降の作品を展示。日本画や洋画、彫刻、さらに工芸も含めた51件を、会期中に展示替えをしながら紹介しています。
そもそも重要文化財とは、なんでしょう?
国宝とは、どう違うのでしょうか?
重要文化財とは、日本にある有形文化財のうち、「製作優秀で我が国の文化史上貴重なもの等について文部科学大臣が定めたもの」。そのうち、特に優れたものが「国宝」に指定されます。
現在、日本にある重要文化財は10,872件。いっぽうの国宝は、906件。1万以上もあるなら、あまり貴重な感じがしない…と思ってしまいそうです。
ですが、実は明治以降の近代美術で重要文化財に指定されているのは、わずか68件のみ。そのうちの51件が本展で見られるので、かなり貴重な展覧会だといえそうです。
どうしてこの作品が重要文化財に…?

萬鉄五郎《裸体美人》1912(明治45)年 重要文化財 東京国立近代美術館蔵(通期展示)
本展を担当された東京国立近代美術館副館長の大谷省吾さんは、「重要文化財だからすばらしい、という受け身の視点ではなく、どうしてこれが重要文化財に指定されたのだろう? という視点から作品を見ていただきたい」とコメント。
さらに、重要文化財の指定に関する「秘密」のひとつを教えてくれました。
大谷さん 萬鉄五郎の《裸体美人》は現代になってから評価された作品です。萬は東京美術学校時代、最初は優等生でしたが、卒業制作で本作品を描いて指導教官たちを驚かせ、成績も19人のうち16番目になったと伝わっています。
当時は斬新すぎた作品でしたが、時代を経て「新しい時代を切り開いた作品」として認められ、2000年に重要文化財として指定されました。
最短で44年!

横山大観《生々流転》1923年(大正12年) 重要文化財 東京国立近代美術館蔵(通期展示)
本展の作品はオール重要文化財なので、すべてが見どころですが、なかでも目を引くのが会場に入ってすぐの細長い展示室で紹介されている横山大観の《生々流転》。長さ40メートルもある大作です。
本作品に隠された「秘密」は、明治以降に指定された全68件の重要文化財のうち、「最も制作から短期間で認定された」という点。
本作品が描かれたのは、大正時代の1923年。重要文化財に指定されたのは、1967年。つまり、最短でも認定に「44年」もかかるのですから、いかに大変なことかわかります。
ちなみに、明治以降に制作された絵画などの美術作品のうち、国宝に指定されたものはゼロ、とのこと。でも、本展で展示されているのは、いつか国宝になるかもしれない作品ばかり。まとめて見られるこの機会をどうぞお見逃しなく!
春まつりも開催中!

なお、東京国立近代美術館では、4月9日まで「美術館の春まつり」も開催中。鮮やかな花を描いた屛風や現代の日本画が並ぶ展示室が設けられ、また桜が見える前庭には床几台も置かれています。
千鳥ヶ淵など近隣の桜と一緒に、ぜひ美しいアートも楽しんでみてください。
Information
会期 :~5月14日(日)※休館日は月曜日(ただし3月27日、5月1日、8日は開館)
会場 :東京国立近代美術館
開館時間 :9:30-17:00(金曜・土曜は9:30-20:00)*入館は閉館30分前まで
*本展会期中に限り9:30開館(ただし「MOMATコレクション」は10:00開場)
*入館は閉館30分前まで
観覧料 :一般 ¥1,800、大学生 ¥1,200、高校生 ¥700、中学生以下無料
公式HP: https://jubun2023.jp/