スタッフへのお礼は必要?【引っ越しマナー】心付けや差し入れ時のNGマナー

文・能美黎子 — 2024.3.9 — Page 1/2
新生活に向けて3、4月は引っ越しの繁忙期です。引っ越しをする際に、依頼をした引っ越し会社の担当者に対して心付けや差し入れなどのお礼を渡すべきか悩むかたも少なくないかと思います。お世話になるのだから感謝の気持ちを渡したいという思いもありますが、実際には渡す必要があるのでしょうか? 今回は、引っ越しのマナーについて、秘書歴約15年でマナーに詳しい、能美黎子さんが説明します。

引っ越しの際の心付けや差し入れは必要?

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【元社長秘書のマナー講座】vol. 27


4月に始まる新生活に合わせ、引っ越しの機会があるかと思います。引っ越し当日、引っ越し作業をしてくれたスタッフに、心付けや差し入れなどのお礼を渡すべきか悩むかたもいるのではないでしょうか。実際に渡す必要があるのか、でもお世話になるのだから「なにかお礼を渡したい」という気持ちもありますよね。しかし、近年は「依頼主からのお礼、金銭はいただかないように」と指導が入っている会社もあるため、引っ越し会社への差し入れは、渡すタイミングや品物に気を付けないとかえって困らせる可能性もあるため注意が必要です。今回は、実際に引っ越し会社に対する差し入れの必要性や内容、渡し方についてご紹介します。


実際どうなの? 引っ越し会社のスタッフへの心付けや差し入れは必要?

「心付け」とは、作業などをしてくれた人に対して正規の料金とは別にお礼として渡すお金のことです。一生懸命働いてくれたお礼をしたいと考えるかたもいらっしゃるかもしれませんが、実際に個人的にお礼や差し入れは渡すべきなのでしょうか?

基本的には渡さなくてOK

引っ越し作業をしてくれた会社へのお礼は基本的に必須ではありません。以前は、引っ越しの際の作業員に対して心付けを渡す習慣がありましたが、現在は引っ越しで心付けを渡す人はだいぶ少なくなり、代わりに差し入れをする人が増えたようです。しかし、心付けや差し入れは自分の意思で感謝を示したいと思って渡すものであり、決まりではないことを覚えておきましょう。

それでも引っ越し会社に差し入れしたい場合はどうすればいい?

1. 差し入れは渡すものに注意が必要

引っ越し会社によっては心付けなどのお金を受け取らないよう作業員に指導していることもあります。そのため、事前に差し入れの種類やマナーなどについて確認しておくことが大切です。作業員に対する感謝の気持ちを伝えるとともに、引っ越し作業の助けになるようなものを選ぶのがポイントです。また、自分自身が負担になってしまうような差し入れも避けましょう。

2. 現金以外のおすすめの差し入れ

引っ越し会社に現金以外の差し入れをする場合は、休憩の時に食べられるような飲み物やお菓子などがおすすめです。飲み物を渡す場合は、缶や紙コップタイプなど飲み切らないといけないものよりは、こぼれにくい蓋つきのペットボトルタイプがおすすめです。お菓子も好きなタイミングで個々が食べられるよう個包装されたものを選ぶといいでしょう。また、ウェットティッシュも一緒に渡すと喜ばれますよ。相手の気持ちに立って差し入れの品物を選ぶことが大切です。

3. 現金を渡す場合の金額の目安と注意点

現金を渡したい場合は、依頼先の会社で禁止されていないことを確認してから渡すようにしましょう。渡すお金はむき出しの状態ではなくポチ袋などに入れて渡すのが基本です。心付けは、そもそも感謝の気持ちを示すものなので金額に決まりはありませんが、作業員1人につき1,000~2,000円が相場と言われています。数百円という単位では逆に印象が悪くなりますし、数万円ともなれば恐縮されてしまいます。お昼代として1,000円を渡すかたが多いようです。

引っ越し会社のスタッフにお礼や差し入れを渡すタイミング

1. 基本的に荷物搬出後の移動前

差し入れは、渡すタイミングも重要です。タイミングが悪いと作業の邪魔になる恐れがあるため、荷物搬出が終わって一息つけるタイミングなどを見計らって渡すようにしましょう。

2. 心付けの場合は作業前がおすすめ

引っ越し業者への差し入れは基本的に荷物搬出後の移動前に渡しますが、現金を渡す心付けの場合は作業前に渡すのがおすすめです。作業後は、次の現場の準備などで慌ただしくなる可能性があるためです。引っ越し会社の方針で心付けを断られた場合は、無理に渡さず別のタイミングで飲み物などを差し入れると良いでしょう。また、まとめてリーダーに渡すと全員に分配されない場合があるため、ポチ袋に入れて1人ずつ渡すと良いでしょう。

3. 心付けや差し入れ以上に喜ばれること

心付けや差し入れももちろん喜ばれますが、料金を支払って作業を依頼しているからといって依頼する側も最低限のマナーを守らなければいけません。運びやすいように荷造りをしておくことや、家電のコンセントをテープで本体に止めておくなど、作業をするかたが仕事をやりやすいようにしておくことが最も喜ばれることかと思います。
電子レンジやオーブントースターの扉も開かないようにコードと一緒に養生しておくなど、運ぶ際のことを考えて工夫をしておくととても喜ばれるようですよ。


おわりに

心付けや差し入れをする行動も素敵なことですが、荷造りをする際にも荷物を運ぶ人のことを考えた行動を心がけてみてくださいね。相手を思いやった行動が、引っ越し当日に作業をするかたにも伝わり、お互いが気持ちのいい引っ越し作業となるでしょう。新生活が皆様にとって素敵なスタートになりますように。


<筆者情報>
ライター:能美黎子
大学卒業後、新卒にて最大手保険会社にて約7年秘書の経験を経て、ITコンサル企業の社長秘書に転職。その後、数社の社長秘書を経験し秘書歴約15年となる。秘書検定準1級を取得。
今までの経験を活かし、接遇や礼儀作法、マナーなど“品格”を大事にした執筆作業を行なっている。


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