壮絶…「太るのが怖い」拒食と過食嘔吐、繰り返す摂食障害との戦い
摂食障害なんて知らなかった。
だけど、食べる意味がわからなくなった
もともとよく食べるほうでしたが、太りにくい体質でした。幼い頃から「痩せの大食いだね」と言われることがよくありました。”痩せている=良いこと” という図式はいつからできあがったのでしょうか。私は、痩せていることをよく褒められ、うらやましがられました。
食欲に変化が出てきたのは15年ほど前。中学校2年生、いじめられていた頃です。言葉の暴力もあり、容姿を酷く罵られました。学校から帰って鏡を見て、顔を引っ掻きながら泣きました。髪の毛を抜きながら泣きました。体中を殴りながら泣きました。誰かから蹴られた痛みなのか、自分でつけた痛みなのか、心の痛みなのか、もうわからなくなっていたのです。ひたすら泣いて、泣き枯れて、また泣いて。それを繰り返していたら、悪夢の朝が始まっていました。
希死念慮や自殺願望が強くなってきた頃です。あるとき思いました。「私はなぜ食べているのだろう」と。生きるために食べているという行為が、よくわからなくなってしまったのです。
太ることへの恐怖感が、食欲の変動を増長させた
食べる意味がわからなくなってから、食欲が落ちてきました。食欲が落ちると、食べなくなります。食べなくなると、当然痩せます。もともと痩せ形でしたが、さらに痩せていきました。お風呂で鏡に写る私は、細くてきれいに見えました。お風呂から上がると体重計に乗り、だんだん減っていく体重に快感を覚えました。幼い頃褒められ、羨ましがられた ”痩せている体型” が、もっと痩せていっていたからです。容姿を罵られる毎日のなか、細い体と体重計の針だけが心の支えのように感じました。痩せていくことが自己肯定感へとつながってしまったのです。
やがて、毎日体重計に乗り、0.01kgの増減に一喜一憂するようになりました。0.01kgでも増えていると、自分を責めるようになりました。痩せられない自分が許せませんでした。でも、この当時すでに最重度の拒食症体重だったのです。栄養失調と脱水症状で倒れて、救急車で運ばれることもありました。
きっかけは思い出せませんが、食べられない期間が続いた後で、物凄い食欲に襲われる期間がくるようになりました。衝動的な食欲を抑えることができず、必要以上にものを食べました。親に見つからないようスーパーで買い込んだり、ひとりで食べ放題の店に行ったりしました。食欲が満たされると、次は強い罪悪感が襲ってきます。体重も増えます。太っていく恐怖感に抗えなくなったとき、私は初めて吐きました。トイレで無理矢理、吐きました。なぜか涙が止まらなかったけれど、胃液が出るまで吐きました。
いじめから何年も経ったけれど。摂食障害とは戦い続けている
食べない、食べては吐く、を繰り返すのが日常になってから何年も後のこと。摂食障害の存在を知りました。拒食症と過食嘔吐を繰り返す人もいるのだと知りました。私は十二分に痩せていたし、”痩せたい” の認識が違うのだな、と思いました。
摂食障害を知り、私が痩せすぎていることを知っても、なかなか認識を変えることができません。私は今でも、最重度の拒食症体重です。もう、いじめられていません。もう、暴力に怯える日々ではありません。それなのに、「太るのが怖い」んです。「痩せすぎだから太りなさい」と言われるようになりました。だけど、体重を増やすことが、たったひとつの自己肯定感を否定することになりそうで、怖いんです。
私は今でも食べられなくなります。衝動的に食べて、衝動的に吐いてしまいます。食べられないことにも、食べすぎることにも、吐いてしまうことにも、罪悪感を覚えます。けれど、体重を増やすことへの ”罪悪感” がより強く残ってしまうのです。”贅沢病” だと揶揄されることを知りながらも、食べること、太ることと向き合えない自分が悲しくなります。
だけどいつか、私自身の認識が変わるように。食べられないときでもひと口だけ食べたり、たくさん食べたくなったときには財布を持たないようにしたり、吐きたくなったときは寝るようにしてみたりと、少しかもしれませんが、努力をしているつもりです。
” 痩せている=良いこと” という図式はいつからできあがったのでしょうか。今でこそ、健康美が推進されています。それにもかかわらず、「ダイエットしたい」という声をよく耳にします。摂食障害のきっかけは人それぞれ。無理なダイエットが引き金になることもあります。一度摂食障害になるとなかなか治せないということも、私自身が実感しています。
海外から ”ボディ・シェイミング” という言葉を聞くようになりました。他の人と比べて自分の体型を恥じることを指しますが、他人の体型を非難する場面でよく使われます。健康を損なうような体型は改善したほうが良いと思いますが、そうでなければ、自分の体に誇りを持てる社会になるよう願います。きっとそれが、摂食障害患者を減らすのではないかと思うからです。私はまだ、摂食障害と戦っています。体重が軽すぎて体力がなく、倒れてしまうこともあるからです。当事者の方も、一歩一歩前に進めると良いなと思っています。そして、新たな患者が増えないよう切に願っています。
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