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元恋人のデート現場に遭遇した日…|12星座連載小説#112~牡牛座10話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.5
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第112話 ~牡牛座-10~


前回までのお話はコチラ

『それじゃあ、祥子。今日はありがとう』

バイバイと手を振り、祥子の家を出る。

「は~い、またね」

彼女はそう言って、さらに小声で、

(「志田っちと上手くやるんだよ」)

と加えた。

『ハイハイ』

私は“照れ”を隠すために、生返事をする。

外に出ると、太陽の光が眩しい。すっかり頭痛は収まっていたけど、二日酔いには少々つらい。

……さて、どうしようかな。取り敢えず、近くのコンビニでお茶でも買おう。

コンビニまで歩くこと3分。

お茶を手に取り、ついでにシュークリームも……、というところで手を止めた。

……我慢しておこう。

少しずつでも、体重を減らしていかなくちゃ。雅俊さんに嫌われちゃう……。

そして、“あの人”にも…

「ヴーヴー」

ちょうど、ポケットの中のスマホが振動した。

えーっと。志田さんからだ!

相手の顔が見えているわけでもないのに、急にあたふたしてしまう。

メールを開くと……

「良かった。安心しました。また是非ご一緒しましょう! 今度はランチでも^^」

……ホッ。良かった。

普通、あんな風に酔いつぶれた女と、また会いたいなんて思わないわ。本当に心が広いのね、志田さんって。

今の私にとって、“安心感”は何より大切な要素。雅俊さんもそうだった。いつだって私を包み込んでくれていたわ。

志田秀。

彼からのメールに

「はい! こちらこそ^^」

とだけ返して、お茶を買い、家に帰り始めた―――

帰宅する頃には、時計の短針が15時を指していた。

お洗濯しなきゃ。昨日から着ている服が、少し汗ばみ気持ち悪い。服を脱いで洗濯機をまわし、シャワーを浴びる。

……ふと鏡をみる。

胸はそれほどないのに、お腹にお肉がついているなぁ。志田さん、きっと重たかっただろうに。

よく、持ち上げられたもんだ。クスリと笑ってしまう。

私は、改めてダイエットを決意した。

洗濯物を干したり、掃除をしていると、あっという間に17時に。そろそろ食事の支度をしなくちゃ。

今日からダイエット食に切り替えよう。しらたきヌードルが、満腹感があって、しかも美味しいって聞いたわ。あとは、ササミの梅肉添えと塩キャベツ盛りでいいかしらね。

メニューも決まったことだし、買出しに出よう。

近くのマーケットよりも、ひと駅離れたところにある業務用スーパーの方が安いのよね。運動にもなるし、ちょっと遠いけど歩いて行こう。

―――少し早歩きしながら風景を楽しむ。

これまで、景色を楽しむ余裕なんてなかった。離れていても、常に雅俊さんに縛られていたから。

志田さんと出会って、ほんの少しだけ“執着心”から解放された気がする。

いつもと同じ町並みなのに、どこか違って見えるのはなぜだろう……?

この時、私は心の中で、むくむく大きくなりつつある存在に気づいていなかった。

……正確に言うと、気づかないフリをしていた。

隣町の業務用スーパーが見えてきた。いつもならまとめ買いをするんだけど、ダイエットのためにも、必要なものだけを買って、頻繁に来るようにしようかな。その方がムダもないしね。

食べ物がパンパンに詰まった自宅の冷蔵庫を思い出し、そう思った。

さて、まずはしらたきを探そう。カゴを手に取り、お店の中に入ると、

―――え?

あの小麦色の肌
白く光る歯
シュッと通った鼻
長い手足

あそこにいるのって―――

雅俊……さん……

そして隣には、彼の腕に絡みつく女の姿が。

本能的に私は、影に隠れた。

あれが……あの人が……。雅俊さんの“新しい恋人”。

少し化粧が濃いけれど、細身でスラッとした女性が、私がいるはずだった“彼の隣”にいる。

現実はいつも残酷だ。

私は心のどこかで、雅俊さんはまだ、私のことを想ってくれているものだと期待していた。

でも、実際はそうじゃない。非情なものね。

私は、“幸せそうな二人”を直視する勇気もなく、その場を立ち去った。

―――走る。

視界がぼやけて、前が見えなくなる。手で拭って、また走る。

周囲に誰もいないのを確認して、公園のトイレに駆け込む。

そこで私は嗚咽を漏らした―――

厳しい現実を突きつけられるよりも、甘い空想にいつまでも浸っていたかった。

まるで楽しい物語の途中で、いきなり幕を下ろされたような気分。

もうこのまま私、消えてなくなってしまいたい。

「ヴーヴー」

スマホが振動する。

今は、誰とも関わりたくない……。

「ヴーヴー」

スマホはまだ振動し続けている。電話……か。

そっとポケットに手を入れ、スマホを取り出す。暗いトイレの中で、スマホ画面に「志田秀」という文字が浮かび上がっている。

『志田さん……』

絞り出すような声で、男の名を呟く。

そして、通話ボタンを押す。

『もしもし』

私は志田さんを、雅俊さんのことを忘れるために利用しようとしているのかもしれない―――


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
清水和歌子 牡牛座28歳 保育士
子供好き。学生の頃から付き合っていて、結婚まで考えていた彼(飯田雅俊)に振られる。彼との恋をずっと引きずっており、復縁を望んでいる。ややぽっちゃり体型だが、男ウケする柔和な笑顔が特徴的。結婚していい奥さんになるのが夢。友人の紹介で、同郷の志田秀と引き合わされ、淡い恋心を持ちながらも、過去を忘れられずに苦しむことに。


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