池田エライザ「できるわけがないと思ったところにこそ、人生の楽しみ方みたいなものが潜んでいる」

2024.3.3
辞書づくりの現場を通じて、言葉や、感情の言語化と向き合うことの面白さを教えてくれる連続ドラマ『舟を編む ~私、辞書つくります~』が、現在放送されている。池田エライザさんは、ファッション誌から辞書編集部へ不本意な異動をすることになった岸辺みどりを演じる。
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「みどりちゃんは感情の幅が広く、豊かな気持ちを持っているのに、言葉を知らない子。美しくない気持ちも頑張って言語化しようともがく彼女の姿は本当に美しいと思ったし、一緒にとことん転んで、折れて、学んで、立ち上がっていきたいと思いました。演じるにあたり、“みどりちゃんは今こういう気持ちかな?”と辞書を引いてみたりもしました」

みどりが配属された辞書編集部には、言葉に異常なまでのこだわりを見せる真面目な上司の馬締(まじめ)光也(野田洋次郎)をはじめ、辞書づくりに熱い想いを持つ人たちが集う。それはドラマの現場も同様だったと言い、「ずっと撮影が続いてほしいと願っていたので、クランクアップの日は辛くて家に帰って泣いてしまいました」と振り返る。そして、今作との出合いが、コミュニケーションにおける言葉の選び方の重要性と、あらためて向き合うきっかけにもなった。

「松本先生(柴田恭兵)の『辞書はあなたを褒めもしませんし、責めもしません』や、馬締さんの『悪い言葉はない』という言葉は、普段の生活の中で、何度もふと頭の中に降りてきてくれます。私自身、おしゃべりは好きだけど言葉にすることは苦手で、頭の中で“違う”と思いながら話していることも多くて。でも、相手に自分の気持ちをわかってもらおうとする、ちょっとおこがましいとも思えるようなことに真摯に向き合い、伝えたい気持ちを表す言葉を選ぶことの素晴らしさってあるなと、演じる中で感じていました」

また、希望とは違う仕事に奮闘するみどりの姿に自分を重ね、感じることもあったのだとか。

「好きなことだけではなく、苦手であったり、慣れていないことに挑戦する仕事も、楽しいものになるんだなと、みどりちゃんを演じていて感じました。たしかに、私にとって演技のお仕事は、早起きや習い事、集団行動など苦手なことばかり(笑)。続けていることが自分でも嘘みたいだと思うけれど、できるわけがないと思ったところにこそ、発揮できる意外な能力があったり、人生の楽しみ方みたいなものが潜んでいて、ワクワクするんだと気づきました。そういうところも、ドラマで伝えられたらいいなと思います」

小さい頃から本が好きで、「家にある一番分厚い本が辞書だと気づき、よく手にとって眺めていました」と言う池田さんだが、辞書に対する印象にも変化があった。

「撮影にあたり、用例採集カード(辞書づくりで使う言葉の用例を書き留めた紙)の保管庫に行き、一人の人が50年間かけて書き留めた100万枚を超えるカードが並んでいる様子を見ました。作中に『辞書は入り口だ』という言葉が出てきますが、誰かが言葉を知ろうとした時の入り口が辞書には数十万語もあるんだと思うと、本当に尊い職業ですよね」

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NHKプレミアムドラマ『舟を編む ~私、辞書つくります~』 毎週日曜22時~、NHK BSプレミアム4K・NHK BSで放送中。全10話。3月3日放送の第3話では、辞書編集部に慣れてきたみどりのもとに、原稿執筆者の秋野教授(勝村政信)から怒りの連絡が来てしまう。

いけだ・えらいざ 1996年4月16日生まれ、福岡県出身。映画『おまえの罪を自白しろ』ほか、映画やドラマなど数多くの作品に出演。ELAIZA名義でアーティストとしても活動、新曲「ピーチジュース」が配信中。

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※『anan』2024年3月6日号より。写真・内山めぐみ スタイリスト・髙橋美咲(Sadalsuud) ヘア&メイク・長野一浩(MARVEE) インタビュー、文・重信 綾

(by anan編集部)