髙橋藍「常に自信を持つことを意識した」 石川祐希と語る“海外で戦うことの意味”

2023.9.10
今夏の国際大会ネーションズリーグでメダルを獲得し話題沸騰中のバレーボール男子日本代表(龍神NIPPON)。その快挙に、「日本はどうしてこんなに強くなったのか?」という声があがっている。その理由の一つに、イタリアで世界トップレベルの選手と日常的に戦っている石川祐希選手、髙橋藍選手の2人の存在がある。そこで2人に海外で戦うことの意味を聞いた。
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――海外のチームに一人で飛び込んで、そこで競争を勝ち抜くためのメンタルや、必要なものって何だと感じていますか?

髙橋藍(以下、髙橋):僕は2シーズン経験して、海外の選手の主張の強さやアグレッシブさはすごいなと思ったし、自分もそこで戦っていくためにはそういうものが必要だなと。あと、海外の選手に比べたら僕は身長が低いので、最初はなめられるというか、評価が低い部分もあったんですけど、常に「自分はここで戦える選手だ」という自信を持つことを意識しました。それぐらいの気持ちでやらないと負けてしまうなと思ったので。

石川祐希(以下、石川):僕も、やっぱり主張ができないと厳しいかなと思いますね。自分のせいにされることも多いので。例えば2人の間のボールをどっちが取りに行くかという時も、海外の選手は「オレは今のは無理だった」とか平気で言うので(苦笑)。そういうところでも戦えないと生き残っていけない。自分が悪くなくても、悪いように見せられちゃったら評価は下がるので。だから言葉も話せないと。間違っていても自分の思ったことを口にする。そういうのは海外でしか経験できないよね?

髙橋:そうですね。

石川:日本だと空気感で察してもらえたりするけど。

髙橋:海外では言わないと伝わらない。やっぱりコミュニケーションは大事ですよね。信頼を築くためにも。

石川:そうだね。コミュニケーションをとるために、語学力は必要。あとは自己管理。日本なら友だちもいるし、レストランもいろんなものがあるけど、イタリアは基本的にパスタやピザ、リゾットとか。その中で好きなものばかり食べていたら体がどんどん変わっちゃう。何でも我慢するというわけじゃなく、自分に合うものをしっかりわかって摂ること。お酒や睡眠に関しても、これ以上飲んだらよくない、最低でもこれだけ寝ないといけないとか、まず自己分析。それができないと、「イタリアが合わなかった」というふうに環境のせいにしちゃうと思うから。自己分析と、そのあとの自己管理ができないと厳しいかなと。プロ選手としては当たり前のことなんですけど。

髙橋:祐希さんはそこは徹底していますよね。自分も参考にさせてもらっています。やっぱり日本のほうが何かしら融通が利いたり、便利なんですけど、海外で活躍するためには、今ある環境の中で自分のルーティンを作って、バレーボールにつなげていくことが重要なのかなと。

石川:僕の場合は厳密に決めすぎると、それができなかった時にストレスになったりするので、基準はあるけど、それに縛られすぎないことも意識しています。睡眠時間は8時間ぐらいとるようにしているけど、アウェイのバス移動などで、それができない場合もあるし、チームスポーツなので基本チームが優先。自分のペースでできない時にも対応できるように、幅を持たせて、心に余裕を持つことも大事だなと。あとは、海外は、楽しめてないときついよね?

髙橋:うん、そうですね。

石川:藍に「イタリアどお?」って聞くと、「あ、楽しいっすよー」って返ってくるんですよ。どんな環境でもそんな感じで心から楽しめていると、長く続けられるんじゃないかなと思いますね。

髙橋:僕はもともとの性格が、どこでも楽しめるし、コミュニケーションをとるのも好きなので、馴染むのも早いほうだと思います。パドヴァは若い選手が多くて共通の話題が見つけやすかったり、街も自分に合っていましたし。自分が望んで、せっかく海外に挑戦しに行っているので、日本では得られないものを、バレーボールでも、それ以外でも得たいし。いいものを見て学んで、街も楽しみたいなという思いがあります。

石川:最初は楽しめない人もいると思うけど、そこはもう頑張って耐えるしかないと僕は思っていて。慣れてきたら自然と楽しくなってくる。それを待てるか待てないか。

髙橋:そういう根性もいりますね。

石川:僕も、日本に帰りたいなとか、寂しいなと思う時期もゼロではなかったので。でも徐々に言葉を話せるようになったり、食事もいろいろ試すうちに美味しいものが見つかって、自然と楽しくなってくる。そういうパターンもあると思います。

――楽しむといえば今の代表もみんな楽しそうにプレーしていますが、重要な試合の前に眠れなくなるとか、プレッシャーはないんですか?

石川:ないよね?

髙橋:うん、ないっすね。僕はあまりプレッシャーを感じないタイプなので。もちろん日の丸を背負う責任感は持っていますけど。自分がバレーボールを好きでやってきて、自分のバレーを多くの人に知ってもらえればいいというマインドなので。

石川:たぶんすごいプレッシャーを感じているという選手は今はあまりいないと思います。感じている人がいても、たぶんいつの間にかなくなっちゃう。今って僕も藍も、他にもリベロの山本智大や小川智大とかもそうですけど、なんていうか、遊び心を持ってやれているので。試合前でも普通にバスケやサッカーをしたり。その姿を見て楽しんでリラックスしている選手もいるし。でも、やる時はやる。メリハリがハッキリしているのでいい環境なのかなと。

髙橋:そうですね。練習が終わってからもしゃべったり、一緒にどこかに行ったり、普段からコミュニケーションも多いので信頼関係もできるし、上と下の関係もいいですよね。

――SNSなどを見ると髙橋選手も石川選手にタメ口だったり…。

石川:あーもうそんな感じだね?

髙橋:え、でも僕も時と場合によりますけどね。メリハリです(笑)。

石川:下の子たちはちゃんと先輩に対するリスペクトは持っているので。上の人も許容範囲が狭くないし、そういうのも一種のコミュニケーションだと、みんなわかってやっているからいいんじゃないですかね(笑)。

Yuki Ishikawa(写真左) 1995年12月11日生まれ、愛知県出身。192cm、84kg。アウトサイドヒッター。中央大学時代からイタリア・セリエAでプレーし、今季で9シーズン目。日本代表では2021年から主将。初のオフィシャルブック『14 quattordici』が12月に発売決定。9/6から早期予約受付開始。詳細はhttps://yuki-14.net
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Ran Takahashi(写真右) 2001年9月2日生まれ、京都府出身。188cm、83kg。アウトサイドヒッター。19歳で東京五輪出場。日本体育大学に所属しながら、’21‐’22シーズンからイタリア・セリエAへ。今季はモンツァでプレーする。国内外に多くのファンを持ち、インスタグラムのフォロワー数は150万人を超える。
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※『anan』2023年9月13日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・藤長祥平 ヘア&メイク・TOYO(BELLO) インタビュー、文・米虫紀子

(by anan編集部)