細田佳央太、舞台『メルセデス・アイス』は「子供の視点で受け止めてもらえたら嬉しい」

2023.8.8
演出家の白井晃×ストーリーテラーのフィリップ・リドリー。これまで何度となく評判を呼んできた組み合わせ。人間のグロテスクさをファンタジーで包み込むリドリーのブラックな物語を、白井さんは、静謐で美しいけれどどこか不穏な世界観の中で繊細に描き出す。その世界に魅了されたひとりが細田佳央太さんだ。

大人の方も子供の柔軟な視点で楽しんでもらえたら嬉しいです。

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「吉沢亮さんが出演された『マーキュリー・ファー』という舞台が衝撃でした。タイミング的に、僕にとって久々に観た生の舞台だったことや、ロシアのウクライナ侵攻が始まった時期だったことも影響していると思いますが、舞台上で表現されている以上の大きなものを受け取った気がして。素晴らしいけれどしんどくもある、ある種、観る側の体力や考える力的なものが問われる舞台を作られるってどんな方なんだろう、と。いつかご一緒できたらと思っていたら、まさかこんなすぐに実現するなんてとても嬉しいです」

現在、絶賛稽古中。実際に体験した白井演出の魅力とは?

「僕のようにずっと映像をやってきた人間からすると、白井さんの演出や説明の仕方がとてもわかりやすいんです。この作品では、基本的に全員が何かしらの役でずっと舞台に出ています。映像なら、カット割りやクローズアップでお客さんが誰に注目すればいいかを見せますが、舞台は編集ができない。だから流れをみんなで作る必要があると説明されて、すごく腑に落ちました。難しいけれど、こんな見せ方をしたらどうだろうかって考えるのも楽しいです」

そもそも、それが舞台をやりたいと思っていた理由なのだとも。

「生の舞台と映像では見せるものが違うようだけれど、やっていることは同じお芝居です。舞台で自由に動けるようになれば、映像でも自由度が上がるし、カット割りの可能性も広げられるはずで、間違いなく今後に生かせるだろうと思っています」

本作はリドリーによる児童小説が原作で、“影のタワー”で生きる3世代の家族を描いた物語。

「かわいらしいやり取りがある一方で、どこか生々しい怖さもある。最初は変に重く受け止めて、神妙な顔でやらなきゃと思っていたけれど、リドリーの原作本の挿絵がすごくかわいらしくユーモラスで、そこを表現したいから楽しんでやってほしいと白井さんに言っていただけて、気持ちが楽になりました。大人も楽しめるけれど、子供向けのプロジェクトですし、たぶん本番中に子供から思いもよらないレスポンスがあるだろうなと思うので、とりあえずそのときの心の準備だけはしています」

映像の世界でも、アドリブを求められることがあるはずだけど?

「基本はカットがかかるまで芝居を止めるなと教わってきたので、アドリブにはがんばってついていけるようにしています。でも、あとで自分はセンスないって思うことも(笑)。ただ、格闘しながらですけれど、苦手ではないかな」

大人の読者に向けてもひと言。

「子供の柔軟性ってすごくて、目の前のことを現実的にとらえるのではなく想像で楽しんだりできる。大人の方もそんなふうに、子供の視点で受け止めてもらえたら嬉しいです」

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せたがやこどもプロジェクト2023『メルセデス・アイス』 建設中の“影のタワー”に憧れて育ったロージーとティモシーは、やがて結婚し、念願のタワーに暮らし始める。彼らの間に生まれた男の子・メルセデスは甘やかされて育ち、やがてとんでもない事件を引き起こす。8月11日(金)~20日(日) 三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 原作/フィリップ・リドリー 翻訳/小宮山智津子 演出/白井晃 出演/細田佳央太、豊原江理佳、東野絢香、松尾諭ほか 一般8000円ほか(18歳以下無料招待あり) 世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515 宣伝写真:二石友希

ほそだ・かなた 2001年12月12日生まれ、東京都出身。4歳から活動を始め、’19年の初主演映画『町田くんの世界』で注目される。大河ドラマ『どうする家康』の松平信康役では強烈なインパクトを残した。

シャツ¥39,600 カットソー¥46,200 パンツ¥49,500 シューズ¥66,000(以上OURLEGACY/EDSTROM OFFICE TEL:03・6427・5901)

※『anan』2023年8月9日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・岡本健太郎 ヘア&メイク・菅野綾香 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)