マンション価格高騰、海外出稼ぎ…知らないと損をする、日本のお金の“今”を解説

2023.5.17
目まぐるしく変わる世の中で、日本のお金の“今”がわかるキーワードを、経済のスペシャリスト2人がズバッと解説。お金とのあたらしい付き合い方も見えてくるかも!?

ニュースでよく聞く言葉でも「実はあまりわかっていない…」と感じることも多いのでは?

「ニュースを見て、よくわからないままイメージだけで鵜呑みにし、判断すると危険です。『海外に出稼ぎに行ったら儲かりそう』『マンションは今買うほうがいい(もしくは買わないほうがいい)』などと、安易に行動に移して後悔したらもったいないですよね。以前は、経済の話がわからなくてもなんとかなりましたし、『そんな言葉を知っていてすごい!』なんて褒められましたが、今はしっかり理解しないと損をする可能性もある時代です」(経済アナリスト・森永康平さん)

昨年秋には円安が大きく進んで話題になったり、最近は物価がどんどん上がったりと先行き不透明の今、不安な人も多いのでは。

「家計でも経済でも、未来のことは誰にもわかりません。自分でさまざまな情報を集めて、予測するしかないのです。そのためには、お金に関するキーワードを知っておいて損はないと思います。ニュースがわかるようになり、周りの人とお金に関する雑談ができるようになると、より理解が深まると思いますよ」(ファイナンシャルプランナー・泉美智子さん)

コロナ禍など思いがけないことが起き、経済の動きを肌で感じる今、お金について自分ごととして考えることが大切。

「老後資金が足りるかどうかや、AIの発展によって自分の仕事にどのような影響があるかといったことは、一人ひとりがしっかり考えたいですね。経済のことは難しいと思いがちですが、知れば知るほど、実はどれも自分に身近な話でもあるので、面白いと思います」(森永さん)

「世の中について考えることで、今後どんな制度や仕組みが必要かがわかれば、例えば選挙に行くときも、自分の意見をしっかり反映した投票につながるでしょう。ぜひ、世の中の経済を自分ごととしてとらえ、賢く生きていってほしいですね」(泉さん)

マンション価格高騰

もはや手を出せないくらいの値上がり! いつ、どこに買うのがいい?

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都心を中心にマンション価格が高騰している。新築だけでなく、中古も値上がり傾向だ。

「金融緩和による低金利で住宅ローンが借りやすく住宅需要が高まったことが一因と考えられます。都内は物件の価格が上がり続けて、今は高すぎる印象です。都内の便利な場所で3LDKくらいの物件を探すと、すぐに1億円ほどになってしまいますよね。でも、少し場所を変えて、例えば埼玉の所沢なら、4000万円くらいから、いい物件が見つかります。都内へ電車で30分ほどと意外と近くて便利です。また、普段リモートワークで、週1回出社するような働き方なら、都内から電車で1時間半くらいのエリアで探すのもよいと思います。高い物件を買うと、リビングコストが長期で大きくかかってしまうので、しっかり考えることが大切です」(森永さん)

【東京23区新築マンション平均価格の推移】

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「全国 新築分譲マンション市場動向 2022年」(不動産経済研究所)より

食品などの値段が上がり始めた実感が広がったのは最近の話だが、東京23区の不動産については、データを見るとだいぶ前から上がり続けていることがわかる。

【私たちにできる対策】
「『もっと値上がりする前に買っておこう』という声も聞きますが、勇み足には要注意。家とは長い付き合いになり、例えば子どもが生まれれば教育環境を考えて引っ越しをしたくなるかもしれません。いつか本当に必要なときに買えるよう、資金計画を立て準備しておくことが得策」(泉さん)

海外出稼ぎ

海外に行けば年収数千万円! …というのは、やっぱり夢?

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日本で年収300万円の人が「アメリカに行って年収が数千万円になった!」というニュースで注目を浴びた“海外出稼ぎ”。密かに興味がある人もいるのでは?

「海外に行けば収入が上がりそうだと魅力に感じる人も多いでしょう。でも、安易に考えるのは危険です。まずは物価の違いがあります。日本では500円あればランチが食べられますが、物価の高いアメリカではラーメンセットが3000円ほど。単純計算ですが、物価が6倍なら、収入が6倍になってもゆとりのある生活はできないでしょう。また、英語が話せなければ、アメリカに行っても仕事はなかなか見つかりません。英語が話せなくても誰もが採用したくなるスキルがあればよいですが、それなら日本でもたくさん稼げるはず。言葉のハンディを超えるような素晴らしいスキルが既にある人は別として、まずは日本国内でできることを考えたほうがよいと思います」(森永さん)

【世界の平均年収】

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アメリカ…74738ドル、ドイツ…56040ドル、カナダ…56006ドル、イギリス…49979ドル、フランス…49313ドル、韓国…42747ドル、イタリア…40767ドル、日本…39711ドル
OECD Average wages(2021)より

日本の平均年収は、アメリカ、ドイツ、イギリスなどのG7や、お隣の国・韓国に比べても低い状況。ただし他国は物価も高いため、海外に行けば稼げると早合点しないように注意。

【私たちにできる対策】
「『稼げるらしいから』と鵜呑みにするのではなく、まずは自分のスキルをしっかり磨きましょう。さらに英語もできるようになるとベスト。日本にいても今までより稼げるようになるはずです。もちろん海外での仕事に興味があれば、じっくり調べて、慎重に計画を立てて」(森永さん)

ChatGPT

副業で収入アップ? それともAIの進化で仕事半減?

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すい星のごとく現れて話題沸騰中のChatGPT(チャットジーピーティー)。AI(人工知能)なんてまだ実用には程遠いと思っていては、お金を得る機会を失うかも!?

「ChatGPTとは、AIが自然に会話をするように質問に答えるチャットサービスです。2022年11月に公開後、利用者が急増中です。以前は“AIに仕事が奪われるのでは?”という危機感を持つ声も多かったですが、私はAIを上手に使えるかどうかで、収入格差は広がると考えています。例えば、就寝中にChatGPTなどのAIにデータを調べて整理してもらったり、エクセルにまとめてもらったりできれば、朝起きてから仕事がどんどんはかどりますよね。逆に、AIでもできるような仕事なら、人に頼むよりも断然安くできるので、存続は困難に。これからは、人間にしかできない仕事に注力して、AIと共存することで、非常に効率的に稼げる時代になるのではと期待しています」(森永さん)

【私たちにできる対策】
「ChatGPTは誰でも使えるので興味があれば試してみましょう。例えば“何文字以内で”“これとこれを入れて”と、AIに対して明確に指示出しできるスキルが身につくと、副業も可能になり、収入アップにつながるはずです」(森永さん)

森永康平さん 経済アナリスト。金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO。証券会社や運用会社等を経て、現職。複数のベンチャー企業のCFOや監査役も兼任。著書に『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)等。

泉 美智子さん ファイナンシャルプランナー。子どもの環境・経済教育研究室代表。全国各地で講演活動やテレビ、ラジオ出演のほか、経済絵本などの著書多数。監修に『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)等。

※『anan』2023年5月24日号より。イラスト・小迎裕美子 取材、文・西山美紀 構成・菅野知子

(by anan編集部)