斎藤工「不思議で、すごく貴重な体験」 ドラマで妊娠・出産する男性役に

2022.4.24
自分が妊娠するとは思っていなかった男性も妊娠・出産するようになった世界を舞台に、Netflixとテレビ東京が共同企画、製作したNetflixシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』。妊娠をきっかけに見えていなかったさまざまな社会問題に直面しながらも変化していく主人公・桧山健太郎を演じるのは、斎藤工さん。コミカルなタッチで描かれる本作だが、見る者にシビアなテーマを突きつけてくる。

妊娠や出産の現状について考えるきっかけになってほしいです。

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「妊娠を告げられた直後の桧山健太郎は、自身に宿る命の存在よりも、広告代理店で築いたキャリアや居場所が奪われるかもしれない危機感を第一に考えます。スマートに生きることをモットーとしてきた人間の末路がこれなのかと感じたし、自分も心当たりがありました。個を追求するか、それとも他者に対して自分の力を注ぎ込む出産を選ぶのか。まさかの状況が起こった時に見える自分の本性と、どう向き合っていくのかという残酷なテーマが、男性の妊娠を通じて描かれています」

撮影では特殊メイクを施し、大きいお腹のフォルムや重みを体感。すると、体だけでなく気持ちにも変化があったという。

「何か選択をする時に、自分の体ではなく、お腹の方にプライオリティを置くようになるという、不思議で、すごく貴重な体験をしました。また、スタジオや外の現場でも、“ここに手すりがあるから助かるな”“つかまるものが欲しい”と、これまでとは違うところに気づくこともあったし、妊娠している“役”だとわかっているはずなのに、周りの方への接し方も変わりました。妊娠している人への自然な手助けが、社会の中にもっとあふれたらいいなと心から思います」

と、心を寄せる斎藤さんは、今作と出合う前から、現場に託児所を作る取り組みを行っている。

「この業界における女性スタッフの方が、男性もそうですけど、妊娠や出産をきっかけに現場を離れざるを得なかったり、一度、仕事から断絶されてしまうケースが多くあります。また、お子さんを育てながら現場に復帰することも限りなく少ない。そんな状況に疑問を感じていたんです。海外の現場に参加するとスタッフの家族と過ごす時間が守られていて、仕事とプライベートが共存できているので、日本でもなんとかできないかなと。とはいえ、撮影中ずっとではなく数日間なので、まだまだ足りないのですが、イベントにならないよう、続けていけたらと思っています。そんなプロジェクトに取り組んでいる最中に、今作のようなお話をいただいて。見た方が妊娠にまつわる現状について考えるきっかけになればいいなと思っています」

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『ヒヤマケンタロウの妊娠』 原作は坂井恵理による同名コミックス。4月21日~Netflixにて全世界独占配信。広告代理店に勤める桧山健太郎は予想外の妊娠をし、パートナーの瀬戸亜季(上野樹里)と共に右往左往。周囲の風当たりも強い中、二人は決断をくだすが…。
©坂井恵理/講談社 ©テレビ東京

さいとう・たくみ 1981年8月22日生まれ、東京都出身。神永新二を演じる映画『シン・ウルトラマン』が5月13日、全国公開される。監督を務める映画『スイート・マイホーム』は2023年に公開予定。
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※『anan』2022年4月27日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・三田真一(KiKi inc.) ヘア&メイク・赤塚修二(メーキャップルーム) インタビュー、文・重信 綾

(by anan編集部)