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松たか子 “東京キャラバン”は「芸能の原点な感じがする」

2020.5.25
野田秀樹さんが発案し、総監修の立場から演出を手がけ、俳優やダンサー、ミュージシャンに、能楽師や書道家、美術家といったジャンルレスなアーティストと、アイヌ古式舞踊や琉球舞踊といった日本各地の土地に根付いた伝統の芸能をミックスさせた「東京キャラバン」。スタートとなった’15年の東京・駒沢から東京キャラバンに参加している松たか子さんにお話を伺いました。
matsu takako

「最初に野田さんから説明されたのは、歌だったり表現だったり展示物だったりを見せるサーカスをやる、みたいな感じだったと思うんです。想像がつかなかったけど、『僕が書く言葉をただ朗読してくれればいいから』と言われて。でも最初に行ったリハーサルで動きをつけられまして…私はいつから、野田さんに読むだけだと言われて朗読だけだと受け取るようなつまらない人間になったんだ、と自分を反省しましたね(笑)」

これまで’16年の福島・相馬、’17年の京都・亀岡、二条城の4回出演。「できることをできる時に参加するという感じです」と微笑む。

「駒沢の頃は、個々のパフォーマンスがもう少しはっきり分かれていましたが、相馬、京都と、それがだんだん混ざっていっている感じがします。とはいえ、いま風にアレンジするわけではなく、それぞれがいつも通りのスタンスでがっぷり組んでいるのが面白い。私たち俳優やダンサーは、その隙間を探して動いている感覚ですね」

隙間、と松さんは言うけれど、何をか言わんや。EGO‐WRAPPIN’の中納良恵さんとは歌手として歌で共演も果たしている。

「中納さんと歌った時は、緊張もすごくしたけれど、ほんの数分の間、彼女を私が独り占めしているような特別な感覚があって。それはとても気持ちいい時間でした。歌に合わせて能楽師の津村(禮次郎)さんが舞っていて、その舞の意味を100%は理解できていなかったとしても、全員が同じ時間、同じ緊張を共有し合っているよろこびはありました」

ほかに印象的だったパフォーマンスとして、村田製作所チアリーディング部も挙げてくれた。チアリーディングとはいえ、そこは電子部品を扱うメーカー。踊るのは球体の上に乗った小型ロボットだ。

「ロボットが舞妓さんたちと一緒に踊るんですけれど、製作所のみなさんの熱意と愛情がすごかったんです。時間をかけて舞妓さんの動作を研究してプログラミングして動かしていく。芸能とは違うかもしれないけれど、普段あまり出会うことのない技術者の方々が参加してくれたことが嬉しかったですね。しかも技術者のみなさんが、ロボットたちに、親バカなくらいの愛情を注いでいるのがわかるんです(笑)。そんな光景を目にすることができて良かったですね」

一夜限りの現場で生まれるライブ感が楽しい。

一般的に本番までに1か月以上の稽古を重ねる演劇と比べ、数回の打ち合わせとリハーサルで本番を迎える東京キャラバンは、どこか通りすがりのような感覚だとか。

「お客さんが通りがかりに観ているように、私もたまたま声をかけられて時間が空いていたから参加した、みたいな気持ちでいます。基本的に一夜限りのものだから、何が起きてもそれは失敗とかそういうことじゃなく、とにかくやり切って全部をOKとする。その現場でのイベント性というかライブ感が楽しいです」

予想外の展開も不測の事態も引き受けて、その上で楽しめてしまうのが松さんという人なのだろうと思う。自分をこう見せたいという自意識より、まずは飛び込んでみる強さに清々しい潔さを感じる。

「ある意味、ズルいんだと思います。こうやったら自分が素敵に見えるっていう方法がわかって、その通りにできたらどんなにいいか…。でもその自信がないから、この役をやってくれと言ってくれた人の思い描くものにできるだけ沿おうとするんだと思います。もし違っていたのなら、その人のイメージが違っていた、ということにして(笑)。結局、自分を信じてないというか、自分を疑っているんじゃないでしょうか」

歌舞伎の家に生まれ、女優としてさまざまな舞台に立つ一方、歌手としても活躍する松さん。伝統芸能である歌舞伎への想いも伺った。

「私の場合、ただ舞台を観ていたというだけですから…。ただ、父(松本白鸚)が歌舞伎だけでなく、ミュージカルもやったりシェイクスピアもやったりしていましたから、歌舞伎だけが特別なものじゃなかったというのは、よかったところかなと思います。でも、観るものとして歌舞伎はすごく好きですよ。女形さんの表現のひとつとして、階段を一段ずつ上がるとか、体を小さくするとか、か弱く華奢に見せる技術がある。舞台上でどう嘘を上手につけるかにずっと全身全霊を込めてきて、それが伝統芸能として残ってきた。そのことはとても素敵ですよね」

あらためて、松さんが感じる東京キャラバンの魅力とは?

「いろんなアーティストが、それぞれの流儀を持ったまま自由に混ざり合う、その決まりがあるようでないところでしょうか。私なんかは、そのなかで隙間を探して楽しんでいる感じ。それを観て楽しんでくださる人がいるって、芸能の原点な感じがするなって」

matsu takako

’17年、京都・二条城にて、松さんは野田さん作の物語『夏の魂の中で』を朗読。EGO‐WRAPPIN’の中納良恵さんとアカペラ歌唱でのコラボレーションも。撮影:井上嘉和

まつ・たかこ 1977年生まれ、東京都出身。近作の舞台にNODA・MAP『Q』。今年2月のアカデミー賞授賞式では『アナと雪の女王2』の日本版声優として出演し話題に。公開待機作に映画『峠 最後のサムライ』が。

東京キャラバンは、東京オリンピック・パラリンピック開催により世界からの注目が日本に集まるタイミングで、東京を文化の面から盛り上げるために立ち上げられた。発案者である劇作家・演出家・役者で東京芸術劇場の芸術監督を務める野田秀樹さんが提唱するのは、多種多様なアーティストが東京キャラバンの旗印のもとに集い、ジャンルを超えて交わることで、新たな可能性を見出す場を作ること。’15年の東京・駒沢を皮切りに、これまでにリオデジャネイロや、東北、京都、九州、四国、岡山、富山、北海道など各地を旅しながら、様々なアーティストが集い、全16か所で開催。出演するのは、俳優、ダンサー、ミュージシャンなどのほか、地方に根付いた伝統芸能の担い手やパフォーマーたち。あらゆる表現が入り乱れたパフォーマンスは、各地で観客を熱狂させている。今年5月に予定していた公演は延期となったが、今後の開催が注目されている。

※『anan』2020年5月27日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) ヘア&メイク・赤松絵利(esper.) 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)