一族の因縁に巻き込まれ…新鋭作家が描く、庭を巡る異世界ファンタジーコミック

2019.3.18
美しき庭に眠る不思議な力をめぐる“作庭師”たちの幻想譚。由紀円香さん『作庭師の一族』2とは?
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「もともと庭という空間になんとなく惹かれていて、物語性を感じていたんです。その直感はわりと当たっていて、本当に物語を考えて庭が構成されていたりとか、水の流れが近くにある大きな川の流れと同じになっていたりとか、小さな世界が庭のなかに造られていることを知り、マンガにしてみたいと思いました」

本作で登場する作庭師とは、簡単に説明すると、不思議な力で庭の管理をする職業、というか存在のこと。

「私は京都に住んでいるのですが、歴史のある庭は方位などを重視していて、陰陽五行の影響も受けているらしいのです。陰陽師って調べてみると、ひとりでやっていたとは思えないほどの仕事量で、実はそれが分業制で土地方面の専門家がいたとしたら…というのが作庭師なんです」

物語は、朝日名家に代々伝わる庭を、夜鶴来(よつるぎ)おぼろという作庭師が修繕に来るところから幕を開ける。この家に暮らす女子高生のひなたは、おぼろと出会うことで、朝日名と夜鶴来というふたつの作庭師の一族の因縁に巻き込まれていく。

「おぼろはいかにも作庭師然としていますが、自我が確立されないまま重いものを背負ってしまった人。ひなたは逆で、普通の明るい女子高生だったのに、作庭師の一族であることを知り大人になっていくんです」

2巻では、おぼろの抱えている恐るべき因果が徐々に明かされ、ひなたのほうは選ばれし者である運命を受け入れ、覚醒していく。ふたつの一族の行く末は読んでのお楽しみだが、庭に一歩足を踏み込んだら広がる異世界という設定は、『不思議の国のアリス』的なファンタジーの王道ながら、日本的モチーフが魅力的で、一族の因縁と結びつける展開にもどんどん引き込まれてしまう。

「あの角を曲がったら別世界につながっている、というような感覚に以前から憧れていて、日常のすぐそばにあるファンタジーを描いてみたかったんです。初めての連載でしたが、想像しているだけでは考えが及ばないようなこともたくさんあって、作者として物語に責任を持つことの大切さを教えてもらいました」

新鋭作家によるアクション、ホラー、人間ドラマありの幻想譚。庭の見方が変わってしまうかも!

『作庭師の一族』2 「朝日名」と「夜鶴来」、ふたつの作庭師の一族に起こった悲劇とは。そしておぼろとひなた、それぞれの決断とは。めくるめく展開から目が離せない完結編。講談社 640円

ゆき・まどか マンガ家。京都出身。第1回THE GATE奨励賞を「はるのうた」で受賞してデビュー。本作が初連載。インスタグラムアカウントは@yuki_madoka

※『anan』2019年3月20日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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