実は「しんどい」「無理」は愛しい気持ちの表れ? 現代“恋愛”用語のリアル

2018.11.10
今の時代の愛し方が見えてくる! 現代用語にみる「愛しさ」辞典。リアルに使う“男子を愛でる言葉”とは?

愛について語る表現も、時代によって少しずつ変化中。今どきの言葉遣いからは、時代のありようや社会的な背景が見て取れる。今回アンケートでピックアップした言葉を日頃から使っているというお二人、臨床心理士の山名裕子さんと、漫画家のはるな檸檬さんが、みんなのリアルな思いを読み解いていきます。

「愛しい」気持ち、だだ漏れ状態のワード6選。

【しんどい】
意味:辛さを感じるくらい、とにかく愛しい。

愛しさ辞典

もともとはネガティブな言葉が転じて、逆説的に最上級の褒め言葉に進化。用法例は「かわいすぎてしんどい_|‾|○」「好きすぎてしんどい」など。「愛しさのあまり、心がきゅーっと締めつけられてしんどくなるイメージ」(21歳・学生)。「自分の子供への愛情表現にも頻出」(はるなさん)

【たまらん】
意味:萌える。ぐっとくる。
昭和のスケベなおじさんが発していそうな元祖オヤジ言葉が、一周回って女子言葉に進化しつつ復帰。現代では「萌え」とほぼ同義に。「食べ物にもモノにも人にも使います」(26歳・会社員)と、使い勝手のよい表現。「言葉自体は一般的だから、アレンジがきくし、使いやすい表現」(はるなさん)

【尊(とうと)い】
意味:崇め倒したいくらい神々しい。
対象となる相手と同じ位置にいるのが申し訳ない、という謙遜の気持ち。用例としては「尊い、ありがとうございます」と感謝の気持ちを添えたり、「好きな人のかわいすぎる表情を見たときに、『これはずるい…自分のかわいさわかってるの尊い…ずるい…』と思う」(23歳・会社員)と様々な使い方が可能。

【あざとい】
意味:「ずるい」の肯定版。かわいすぎて降参。
もともとの意味が転じて褒め言葉に。「ただし直球ではなく、相手のステージを自分より1段上げた上で、へりくだって褒める謙譲語」(山名さん)。「相手の狙いをわかった上で魅了されていると伝える言葉」(はるなさん)。人はもちろんペットや二次元のキャラクターなどにもよく使われる。

【沸(わ)いた】
意味:最高にテンションが上がった、興奮した。
極度の興奮により気持ちが高まり、やや取り乱した状態。2016年のギャル流行語大賞にも選ばれたワード。「沸点に達するくらい愛しさが高まっているという気持ちを、客観的かつ簡潔に伝える言葉。『テンションが最高潮に上がった』のショート型ともいえるかも」(はるなさん)

【無理(むり)】
意味:愛しさが極まり、キャパオーバー。

愛しさ辞典

逆説型の肯定語。「好きなアイドルのライブに行って彼らが登場すると、『えっえっ無理待って無理しんどい、えっ』と混乱しながら無理を連発してしまう」(23歳・会社員)など、「しんどい」など類義語との合わせて使われることも多い。「無理無理無理無理無理無理」と反復させると、さらに強調される。

今どきの「愛しさ」を表現する言葉たち。その裏にあるものについて、山名さんとはるなさんが対談しながらさらに読み解いていきます!

山名:今どきの言葉って、直接的だったり生々しい表現をできるだけ避けようとする傾向があるように感じました。例えばですが、彼氏、好きな人を意味する「かれぴっぴ」には、性的なニュアンスをオブラートに包むような気遣いが見えますね。

はるな:ひと昔前の言葉って、ダイレクトなんですよね。有名なトレンディドラマの名台詞「セックスしよ」とか。でも現代は逆に、性的ニュアンスをいかに排除するかが鍵になっているんですね。男らしくてかっこいいことを意味する「オスみ」も、性を感じさせる「雄」を「み」で中和しているんじゃないかなと。

山名:確かに、「○○み」は二丁目のママさんも言っているイメージ。

はるな:「かれぴっぴ」に関しては、リア充アピールにならない工夫として使われてるような気がするんですよね。茶化してると見せて、相手に変に気を使わせない心配りというか。

山名:謙譲語ってことなんですよね。SNSの時代になり、批判を避けたい心理があって。弱い立場として振る舞うことで、相手を立てる方向へ自然と向かっている気がします。

はるな:「尊い」は、まさに相手を立てまくってますね! もう自分なんか地下深くに潜ってしまいたい、くらいの勢いで使っちゃう(笑)。

山名:「あざとい」にも、相手を上げて褒めるニュアンスがあると思います。相手のずるいとも取れる部分に降参しつつ、「かわいい!」的な。

はるな:わざとらしささえも受け入れた上で、自分はあなたに夢中です、って上げてあげる。それってつまり、俯瞰した目線を持っているということなんでしょうね。恋人や好きな人など身近な相手ですら、第三者として楽しむぐらいの距離感なのかも。茶化すことで、生身の人間である相手との間にひと膜作る感じ。

山名:自虐しつつも、茶化したり、直球勝負を避けることでシリアスに見せない。“配慮型”の、優しいコミュニケーションといえるでしょう。

はるな:なるほど。相手に気を使わせないようにする配慮が、語感をかわいくしたりカジュアルにしている、という面があるんですね。

山名:若い世代のクライアント様は、自分を下げてやや自虐的に話をする印象があります。相手を傷つけないように、負担にならないようにという愛情の表れなんでしょうね。

はるな:私も、愛しさを表現する言葉を探求するあまり、逆説的に表現しがちです。だから、「しんどい」みたいな否定的な言葉が逆の意味で使われるのはすごく共感できる。まだまだ言葉が足りない!(笑)

山名裕子さん 臨床心理士。メンタルケアオフィス「やまな mental care office」代表。心の専門家として、テレビや雑誌などで幅広く活動中。

はるな檸檬さん 漫画家。コミックエッセイを数多く手がける。ウェブメディア「ベビモフ」にて「子育てデレデレ日記」を連載中。宝塚の大ファン。

※『anan』2018年11月14日号より。イラスト・はるな檸檬 取材、文・矢吹紘子

(by anan編集部)


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