「本当の答え」はいつも心の中に…|12星座連載小説#102~魚座9話~
【12星座 女たちの人生】第102話 ~魚座-9~

前回までのお話はコチラ。
こんなに気持ちよく目覚めたのは、いつぶりだろう……。
右隣で、愛する夫がスヤスヤ眠っている。左隣には、娘と息子が。
朝5時。外はまだ薄暗いけど、私の身体は自然と動き出す。
まずは、家族みんなの朝支度。それが終わったら、占い館に連絡を入れなくては。うまいこと提携先の電話占い会社に紹介してもらえると良いんだけど……。
その後、資格取得のための資料請求かな。とは言っても、心理カウンセラーとして活動するのにどのような資格が必要なのか、実はよく知らないから調べなくちゃ。
眠っているみんなを起こさないよう、そっと寝床を離れ、キッチンで朝ごはんの準備を始める。
トントントントン……
グツグツグツグツ……
家庭の朝の音と匂いが、部屋に広がっていく。
ここ最近の私は、家事を片手間に行っていた。自分の仕事に気を取られ、てっちゃんに甘えてばかりで……。
でも、これからは自宅で、家事と育児をこなしながら、キャリアアップを目指すの!
―――珍しく燃えている。

仕事はきちんとしていたものの、どうしても家族に対する“申し訳なさ”が拭いきれなかった。
同年代のお母さん達が知ったら、「何て贅沢な!」と驚かれるくらい自由にさせてもらっていた。
今度は、キチンと両立させなくちゃ……。
卵焼きを焼いていると、てっちゃんが起きてきた。
「おはよ。早いね」
『おはよう! 今日から私、家のこともちゃんとやるからね!』
「ああ、うん……あんまり飛ばしすぎるなよ。“継続は力なり”だからね」
てっちゃんは、本当に現実的。テンションの差に少し寂しくなったけど……。
そしていつもの朝が始まる―――
騒々しくも微笑ましい、我が家の朝だ。
午前9時半。家事ミッション完了。
ヤバイ、もうエネルギー切れ!? 疲れてるかも。いかんいかん! 頭をブンブンと横に振り、気合いを入れる。
占い館は12時オープンだから、電話してもまだ誰も出ないわね。先に資格について調べてみようかしら。
PCを立ち上げる。検索してみると……、
心理学系の資格は、想像以上に沢山あった。
認定心理カウンセラー、認定心理士、産業カウンセラー、精神保健福祉士、臨床心理士など……正直、よく分からない。
講義を受ける必要があるもの、試験を受けないとなれないものなど、種類はさまざま。
調べれば調べるほど、迷いが生じてくる。占い師の私には一体何が向いているのだろう。
“セラピスト”まで検索範囲を広げると、さらに複雑だ。ヒプノセラピー、アーユルヴェーダ、ヨガ、気功、アート、ハーブ、メイク、カラー……。
もはや、何に役立つのかさえ分からない。
その時、私は麗蘭先生の言葉を思い出した―――
「“ハートの問題”なんだよ」
ハッとする。
私は、ステータスにとらわれ過ぎて、一番大切なものを忘れかけていた。
そんなんじゃない。人を癒し、笑顔にしたいんだ――
窓から差し込む太陽の光が眩しい。ベランダには、綺麗な花々が咲いている。
私の趣味で育ててきた、赤、白、黄の色とりどりの花……
てっちゃんが、「ベランダだけど、花畑みたいで気分がいいね」って言っていた。
そうだ。

―――私は“花”が好きなんだ
生まれて間もない頃、庭に咲く花を見てニッコリ笑ったらしい。それで私は、“花子”という名前をつけられた。
学生時代は、何だか垢抜けない、この名前を好きになれなかったけど、年齢を重ねていくうちに気にならなくなっていった。
……私は、みんなの“花”でありたい!
そう、これだ!
「花 心理」
思いつくままに、検索をかける。
『へぇ……』
思わず声が漏れる。いろんな情報が出てきた。
花と心の関係、花言葉、資格……。
その中に、“フラワーエッセンス”という、私の心をとらえて離さないものがあった。
花の持つエネルギーが人々の感情に働きかけ、心のバランスを取り戻させ、健康に導いてくれる……というもの。
これだ。
私は、頑張れない人に「頑張れ」と言いたくない。頑張りたい人に「頑張らないで」とも言いたくない。
みんなそれぞれ、本当は心の中に“答え”を持っているんだから。神様からもらった“自然治癒力”を大切にしよう。
“答え”が見つかった気がした―――
魚座 第3章 終
【今回の主役】
和辻花子(フレイア華) 魚座33歳 占い師
既婚者であり、夫に和辻哲夫、子供に和辻長輝(9歳)と和辻夢叶(5歳)がいる。家庭と仕事の兼ね合いで悩みつつも、占い師としてそこそこの人気を得ている。しかし、あるお客の鑑定をきっかけに、占いの限界を感じて心理カウンセラーの資格を取ろうと考える。
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