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なぜ男性優位なの? テイラー・スウィフトが問う「現代社会の闇」#27

取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani — 2020.3.6
もしどんなあなたでも愛してくれる、大好きなパートナーが手に入るとしたらどうですか? そのためには、心理学やスピリチュアル世界では、まず徹底的に自分を大事にせよとよく言われます。そこで必要になるのは、世間の常識のまま自分で作った「男性だったらこうすべき」「女性だったらこうあらねば」という思い込みを壊すことです。実は最善のパートナとの出会いに、一見関係ないように見えるテイラー・スウィフトの最新MVが訴えかける”男性性優位社会”の闇やセクハラ問題。これが最高のパートナーシップ実現の大きなカギを握るんです! そこで今回はトランスジェンダーで父になった友人から受けたアドバイスをもとに性別の壁を超えて、恋愛や仕事、友情などにおけるベストパートナーとの出会い、その育み方についてご提案します。

【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 27

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いつだって、どんなふうでも応援してくれて、ありのままのあなたの魅力を自分以上に愛してくれる人。そしてその人と一緒にいると、自分の可能性に気づくことができて、もっと良くなるように努力することが苦労じゃなく、そこに喜びや幸せを感じられる。そんな最高の友達やパートナーが手に入るとしたら、どうですか? ほしい!!!!

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愛されたいなら、人を変えようとしない。

そのためにどうしたら良いでしょう? その鉄則としてよく語られるのが、人も自分も変えようとしないことです。心理学やマンドフルネスの世界では、これをアクセプタンス(すべてを受け容れる)と言いますが、それは人のイジワルや、自分自身に向けた暴力を見逃し、じっと耐えることではありません。腹が立ったら怒ってもいいんです。大切なのは、自分の心や体で起こっている変化に気づいて、コントロールせずにそれを受け容れること。ありのままの自分に抵抗せずに受け容れることで、不思議と自分も周りの人も変わっていくのです。

ありのままの人や自分を受け容れるというのは、実は自分のなかの男性性と女性性のバランスを整えることとも言えます。そう言われると「えっ、私は女性だけど?」「俺は男だよ?」という疑問が当然わきますね。でも私たちは100%男性性でできているわけではないし、女性性オンリーでも無いんです。

「性別の壁」というワナ。

ここでいう男性性とは、決断する強さや論理的に行動する力、そして女性性とは受け容れるしなやかさや思いやり、ときにインスピレーションに従える力のことです。生物学的に男性であっても女性であっても私たちは全員、その両方を持っていて、あなたとあの人の違いは、そのバランスの違いの現れです。

世の中が考える、ひとつの男性像と女性像を極端な形で描いてくれたのが、このテイラー・スウィフトの「ザ・マン」の新作ミュージック・ビデオです。この主演男優は、なんと特殊メイクで男性に扮したテイラー!

男装したテイラー・スウィフトが大暴れ!

彼女(彼)がオフィスで部下に賞賛させて悦に入り、満席の地下鉄では大股を開き、豪華ヨットにモデルをはべらせ仕事の電話で怒鳴り散らし、立ちションするとやりたい放題。出てくる女性と言えば拍手喝采するイエスマンな女性社員、ヨットに寝そべるモデル、行為のあとの美女です。そして「男だったら、もっと(今の場所に)ラクにたどり着けたのに」と男性性優位社会に生きる女性の苦しさを歌います。

そしてビデオの最後では、女性監督(テイラー演)が主演男優(男装テイラー演)に「もっとセクシーにできる? みんなにもっと気に入られるような感じでね」と演技指導するなんて、風刺が効いてる。

社会常識で自分を小さくしない。

ここで彼女が「オカシイんじゃない?」と問いかけているのは、「男性が」「女性が」といった性別の違いではなく、男性性優位の社会システムです。「男性はこうで、女性はこう」と批判、判断してしまうのも、それは偏見です。私が暮らしていたセレブや心理学者が集まる、カリフォルニアにあるエサレン研究所というスピリチュアルセンターは、かなりエッジの効いた場所でした。そこのスタッフたちに「私のことをshe(女性代名詞)でもhe(男性代名詞)でもなく、they(性別関係無い代名詞の複数形)で呼んでね」と言われることがよくありました。

さて「ザ・マン」の歌詞にある “アルファ”(Alpha)という言葉に注目してください。これは英語のアルファ・メール(Alpha Male)という言葉が略されています。アルファ・メールは男性ホルモンのテストステロンがばりばり、攻撃性も自己権威欲もエベレスト並みに高い猿山のボスのようなものです。ちなみにアメリカではトランプ大統領は、その代表格として殿堂入り。テイラーが問題提起しているのは、猿山のボス自体でなく、それを良しとする社会常識なんですね。

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私が日本で会社勤めをしていたとき、女性誌をたくさん出す出版社で働いていました。そこで上司が女性の編集長ってことも多かったし、取材相手のタレントさんの好物を調べ上げて取り寄せ、撮影に持っていくような細やかな気配りがサッとできる男性社員に学ぶことも多かった。会社を辞めてからも親身になって助けてくれた男性上司もいます。当時は会社の看板と、チームと家族の間みたいな関係性で守られていたから、退職するまでこういう社会常識を自分ごととして考える機会はありませんでした。

実は身近にいる「アルファ」たち。

でもフリーになってから、ずいぶん前の話ですけど、知人を介して別会社の男性編集長たちと数人で食事する機会があったんです。二次会が焼肉で、三次会がホテルのバーで。妙な雰囲気だったので三次会を辞退したら「そんなんじゃ、この業界でやっていけないからな!」とタクシー越しに叫ばれたことがあります。

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「こういうこと、本当にあるんだぁー」と驚きました。最後まで付き合った友人の後日談によると「タクシー代って1万円もらっちゃった♡」とケロッとしていたので、単に私が世渡り下手なだけかもしれませんが(汗)、どうにも気持ち悪かったんですねぇ。だからアクセプタンスでドロンと撤収です(笑)。

アメリカではこのようにジェンダーにパワーが絡むと大論争になります。例えばUberって会社を知っていますか? アメリカだと普通のタクシーよりも安いし、携帯アプリで予約から支払いまで済むしと便利で人気のオンデマンド配車サービスをしている会社です。

セクハラでも、仕事ができたらいいの?

ここのエンジニアだった元社員の女性に、その上司が「うちはオープンリレーションシップ(ほかの男女と自由にセックスしてもかまわない自由なパートナー関係のこと)だから」と社内チャットで性的な誘いをしたんです。困惑した彼女が人事部に相談したら「セクハラだけど、彼は優秀だから」と一蹴されてしまい、彼女のほうが望まない部署に異動せざるをえなくなったとか。のちに退職した女性がこの一件をブログに書いて大論争を招き、セクハラを容認していたUberのCEOは涙ながらに謝罪。昨年末にはいろいろあって取締役を辞任しました。

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外側の出来事は、自分の内側の現れ。

アメリカではこういった話があると「あなたはどう思うの?」「日本はどうなの?」と聞かれます。のちにトランスジェンダーであることを告白した一児の父の友人とも議論したことがあります。すると「僕個人の体験から話すと、自分のなかの男性性と女性性のバランスが崩れていると、ジェンダー絡みのパワーゲームに巻き込まれやすくなる」と言われました。それを聞いて最初は「えーっ、私や彼女のせいじゃなくて、あのオッさんたちがおかしいんじゃないのー!?」と思いました。

けれども、スピリチュアルセンターや禅センターを渡り歩き、老師に学び内省していくうちに、全てがそうとは言い切れ無いし、事件の場合は加害者が圧倒的に悪いと思うけど、私に起こったことに限ってはそれも一理あるなと。例えば当時の私は依存心が強く、自分で決めるよりもどこか「誰かになんとかしてもらいたい」と男性性が弱まっていました。それで心地よければいいのですが、自分的にハマっていなかった状態です。未だに「アレが正解だったのかなぁ」なんて思うところもあるから、嫌な思い出として記憶に残っているのでしょう。

さてトランスジェンダーでありながら、理解ある素敵な美しい女性と出会うまでに彼が実行してきた秘密を教えてくれたので、ここにシェアします。私も実践中なので、みなさんもその仲間になってもらえると心強いです。

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ベストパートナーを手に入れる方法。

1. 自分の男性性と女性性のバランスを整える。
「これがしたい!」と決断して実行する力(男性性)と、思いやりをもって相手を受け容れる力(女性性)。自分にどちらもありますよね? 誰かに言われるから、世間一般ではそうだから、ではなく、自分がしっくりくるバランスで行動しましょう。願うだけじゃ、最善のパートナーも欲しい関係性も手に入りません。どんな関係性を求めているのか、そのために今の自分に何ができるのか。行動をして、実行して(男性性)、一歩前を踏み出した自分をひとまず労い(女性性)、どんな結果も自分にとって必要な経験だと受け入れましょう(女性性)。
2. 自分のなかの官能性を認める。
性的なもの=エロと決めつけず、そこに自分の生命力や野生とつながる神聖さを見出しましょう。例えば日帰り温泉に行って、広〜い温泉にホッとつかり、自分の裸をくまなく観察してみると、あの人は胸が大きい、私の方がウエストは細い。なんて人と比べちゃったりするけど、姿形は本当に人それぞれ。それと同じように性への欲求だって、その表現の仕方だってみんな違っていいんです。あなたにとって何が気持ちよくて、何が気持ち悪いのか。タブーと捉えすぎず自分を探求したり、パートナーに求めてもOK! 官能性を楽しみましょう。
3. 自分の本質とつながる。
あなただけの官能性を認めた先に、「女性だったらこう」「男性だからこうすべき」という性別による偏見を超えたエネルギー、自分の本質とつながることができます。すると相手の官能性にも祝福できるようになり、あなたにとってぴったりの相手と最適な関係性を創造できますよ!

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彼がいうにはこんなふうに生きて行くうちに、男性だから、女性だからという区別性を超えた「唯一無二のあなた」という存在と向き合いたい人との最適な関係が築けるようになるのだとか。だからちょっと勇気がいるけど、世の中がいう「女性だったらこう振舞って」「男性ならこう行動すべき」という決め事もちょっと疑ってみてもらいたいんです。

そういえば夫が定職につかないとぼやいていた友人がいましたが、彼は掃除も洗濯も料理だってバッチリ作ってくれる最良のパートナー。「そういえば私、家に居るより働くほうが好きだったわ。男だったら外で働け、って勝手に思い込んでいただけかも」と気づいた彼女は復職し、子宝にも恵まれ、彼と幸せに暮らしています。だって彼女と彼はぴったりの相性だから!

彼や彼女のベストパートナーのように、社会常識とはちょっと違うかもしれないけど「私だったらこう」を生きた先に、バランスが整った状態の自分に一番必要な関係性が芽生えていきます。また最善なパートナーとは恋愛関係に限りません。仕事や友情、親子関係においても、最適な相手や関係性を育んでいけるはずです。

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土居彩

編集者。東京の薪割り暮らしを綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にてダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)、芸術家で社会活動家の小田まゆみ氏の『Sarasvati’s Gift』(シャンバラ社)を翻訳中。
https://greenz.jp/author/doiaya/

『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』