腟外射精、射精のときだけコンドーム…は間違い! “正しい避妊”を医師が解説

ウェルネス
2024.08.13
生理と妊娠、そして体を守る避妊についておさらい。安心して体を重ねるための、基礎知識です。

楽しい人生を送るために体や性について知ろう。

避妊 健康

性は自分の人生と深く繋がっている、と医師の村田佳菜子先生は言います。

「生理や妊娠は、日々の生活だけでなく、女性の人生に大きく影響を及ぼすファクターです。例えば、生理が重くて思ったように働けない人でも、低用量ピルを服用すれば生理を軽くできるという知識があれば、それを使うことで理想の働き方を実現できる。また将来的に子どもを持ちたいけれど今ではないと思う人は、正しい避妊の知識を身につけ実践すれば、望まない時期の妊娠を避けることができるんです」

どんな人生を歩みたいかを今決める必要はないけれど、自分の可能性を考えたとき、“望みを実現できる体であること”はとても大切。特に女性の場合はそこに、いわゆる性や生殖にまつわるあれこれが大きく関係してくる。

「妊娠だけでなく、女性がかかりやすい病気についても、知識を持っていれば体からのシグナルをキャッチできます。常に体と向き合いケアをすることを忘れないでください」(村田先生)

【生理】40年近く毎月訪れる生理。自分なりの付き合い方を探そう。

早い人は10歳くらいに初潮がやってきて、だいたい50歳前後まで続くといわれる生理。女性が妊娠するためのシステムで、体内で女性ホルモンが増殖することで排卵が起き、同時に子宮内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすい状態になる。しかし卵子が受精せず着床しなかった場合、子宮内膜は剥がれ落ち、月経血として体外に排出される。これが毎月1回繰り返されます。

「生理に伴う痛みや、経血量は人それぞれ。どう付き合うかは自分で決めていいんです。低用量ピルなどで痛みや経血量をコントロールも可能、自然に任せて観察したいという人は、そうすることもできます。ただし、生活に支障が出るような痛みや経血量の生理は、女性特有の病気のサインの可能性も。ちょっとおかしいな、と思ったら気軽にクリニックに行ってください」(村田先生)

【妊娠】排卵した卵子と精子が出合って受精。無事に着床して成長できたら、妊娠。

卵巣から排出された卵子は、腟に挿入された男性のペニスから射精される精子と出合うべく、卵管にてスタンバイ。めでたく精子がやってきて受精すると、細胞分裂を繰り返しながら子宮に移動し、ふわふわの子宮内膜に到着。着床すれば、自然妊娠の成立です。

「一般的に月経があるということは、月に1回排卵があり、子どもを育てることができる子宮である、という指標であることは間違いない。ただ生理があっても排卵がない場合もあります。なので生理があるからといって必ずしも妊娠できるわけではありません」

女性の体は敏感なので、ちょっとしたことでホルモンのバランスが崩れ排卵日がズレ、“ここで排卵するはず!”と妊娠を狙ってセックスをしても、うまくいかないことも多々。妊娠がいかに不思議なことかがわかります。

【避妊】「避妊しないなら、セックスしない」。流されない強い心を持ちましょう。

前述のとおりセックスは生殖行為。生理のある女性がセックスをする場合、常に妊娠の可能性があると考えましょう。いま妊娠を望んでいないなら、必ず避妊をする必要が。現在日本で最もメジャーな避妊方法は、男性が性器に装着するコンドーム。その他に女性が主体的に使える避妊法として、低用量ピルや子宮内に入れる器具・IUSなども。

「ただ、どの避妊方法も100%避妊ができるわけではありません。さらにピルやIUSのみでコンドームを使わない場合、性器が直接触れ合うので性感染症に感染する危険があります。一番望ましいのは、男性側はコンドームを使い、女性側もピルやIUSなどを使うという、W避妊。過剰と思うかもしれませんが、そのくらいやって初めて、安心して体を委ねられるもの。自分の体の自己決定権を持つようにしましょう」

主な避妊方法

低用量ピル

使用方法:毎日服用
失敗(妊娠)率:0.3~8.0%

女性ホルモンが2種類入った錠剤。毎日飲むことで、排卵を抑制。
エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが入った錠剤。毎日1錠決まった時間に飲むことで、女性ホルモンの量が低く一定に保たれ、排卵が止まり、同時に子宮内膜が厚くならなくなり、高い避妊効果が期待できる。避妊目的だと自費。月経困難症など症状がある場合は保険適用になる。

「避妊効果が非常に高いのですが、特に最初の7日間に飲み忘れると排卵する可能性があるので要注意。吐き気や不正出血、また体質によっては血栓ができる危険がある人も。定期的に診察を受けながら使うほうが安心です」

IUS

使用方法:子宮内に装着
失敗(妊娠)率:1%以下

子宮の中に入れる小さな器具。最長で5年間、高い避妊効果が持続。
女性の子宮の中に入れるTの字型の小さな避妊具で、大きさは3cmくらい、柔らかいプラスチック製。子宮内で黄体ホルモンを放出することで、入り口の粘液を変化させて精子が侵入するのを阻害したり、内膜の厚膜化を阻止し受精を防ぐといった働きをします。〈ミレーナ〉の商品名で知る人も多いのでは。

「一度入れれば、5年程度効果が持続。ピルを毎日飲むのはちょっと…という人にはおすすめ。ただ日本で使えるIUSは小さいサイズがないので、出産をしたことがない女性だと子宮口が狭く、挿入するのが痛い場合も」

コンドーム

使用方法:男性器に装着
失敗(妊娠)率:2~15%

日本では一番ポピュラーな避妊法。でもこれ1つでは、万全ではありません。
男性の性器に装着することで、射精した精子が腟内に入らないようにしてくれるアイテム。しかしこちら、そもそもは性感染症予防のためのものなので、他の避妊方法に比べると、失敗率(妊娠する確率)が一番高い。

「大事なのは、正しく装着できているかどうか。サイズがぴったり合ったものを根元までしっかりつけること。また射精の直前ではなく、挿入の始めから使うこと。ちなみに日本のコンドームはサイズ展開が少ないので、そのあたりでもう少しバリエーションが増えるといいな、と思っています」

アフターピル

使用方法:性行為後服用
妊娠阻止率:84%

72時間以内に服用し、着床を阻害。あくまでも、失敗したときの最終手段。
例えばコンドームが途中で外れた、または破れてしまったとき、あるいはピルを飲み忘れたなど、避妊が不十分だったときは、セックスから72時間以内にアフターピルを飲むと、妊娠を阻止できます。錠剤には黄体ホルモンが含まれていて、これを内服することで排卵を抑制し、妊娠を阻止。購入には処方箋が必要。

「服用するタイミングが早いほうが、妊娠を阻止できる確率は上がります。とはいえ、副作用もあり避妊効果は100%ではありません。なお、次の生理が来るまで、妊娠しなかったかどうかはわかりません」

間違った避妊法

改めて確認、それ、避妊になりませんから。
そんなこと、未だにやってる人いるの…? と思いますが、正しい避妊の知識が身についていない人もまだまだいます。以下の4つは避妊法ではありませんので、ご注意を。

腟外射精

コンドームをつけずに腟に挿入し、射精の寸前にペニスを抜き、腟の外に射精する、というもの。大丈夫と信じている男性は多いようですが、射精の前に出る分泌液にもすでに精子が混ざっており、生命力の強い精子ほど、先に分泌液に混ざってくる、という説もあるとか。そこに1つでも精子がいれば、妊娠する可能性はゼロではありません。腟外射精でのセックスは、避妊をしなかったときと同様の対処が必要です。

射精のときだけコンドーム

とりあえずコンドームをつけない状態で腟内にペニスを入れ、一度抜いてからコンドームをつけ、腟内で射精する、というやり方。確かに直接射精はしていませんが、“腟外射精”同様、分泌液が出ている状態のペニスを挿入しているわけですから、精子が侵入している可能性はなきにしもあらず。男性器が勃起したら、挿れる挿れないにかかわらずコンドームをつける。妊娠だけではなく、性感染症予防の観点からもぜひ。

生理中のセックス

着床のために整えられた子宮内膜が経血として体の外に排出される、生理。ということは、卵子がいない=妊娠しない時期! という人がいますが、女性の体に100%はありません。生理だと思ったら不正出血だったということもありますし、また排卵時の出血だったという場合は、妊娠の確率は上がります。いずれにしても、“安全日”は1日もないということを覚えておきましょう。

腟内洗浄

腟の中に射精したあと、腟の中を洗えば妊娠しないと思っている人がいるようですが、これも大間違い。腟内に入った精子は頸管粘液に包まれ、すぐに子宮頸管に入っていくものもあるので、腟内を洗浄しても、頸管内に入った精子は洗い流せません。またコーラや炭酸水で洗えば大丈夫、といったことを未だに信じている人がいるようですが、むしろ腟を炎症させる原因に。無意味どころか、体に悪影響しかありません。

むらた・かなこ 女性医療クリニックLUNA、都立東部地域病院勤務。婦人科医として働く傍ら女性性機能外来を担当。特にワギニスムスの診療を得意とする。日本性科学会員、関東ジェンダー医療協議会理事。

※『anan』2024年8月14日‐21日合併号より。イラスト・oyumi 取材、文・小寺慶子

(by anan編集部)

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