2012年にジャズ作曲家としてメジャー・デビューした挾間美帆さん。ニューヨークを拠点に指揮者としても活躍中。デビュー10周年を迎え、その歩みを振り返る。

ジャズ作曲家として歩んだ実りある10年。

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「〈ジャズ作曲家〉って少し矛盾しているように聞こえますよね。即興音楽なのに作曲する必要があるの? って。でもジャズにもメロディを書いたりリズムを決めたり作曲の要素もたくさんある。こうして活動を続ける中で、多方面で活躍しているアーティストから『ジャズが好きだけど即興はできないから楽譜を書いてくれませんか?』と言われることも増えて。自分の作曲や編曲をいろんなところで表現できるようになったのは大きな収穫でした」

最新アルバム『ビヨンド・オービット』は、フレンチホルンやストリングスを含む13人編成のジャズ室内楽団「m_unit」でレコーディングされた。ラージ・アンサンブルと呼ばれるこの編成は、華やかでニュアンスに富んだサウンドが魅力。

「決して簡単ではない珍しい編成の楽団です。それを楽しめる音楽家たちが、私が書いた数秒ごとに主人公が変わるようなスコアを完璧なチームワークで演奏してくれます」

宇宙をイメージした3編の「エクソプラネット組曲」も聴きどころ。

「宇宙や星座がもともと好きなのですが、作曲していたのがパンデミック中で、ニューヨークで暮らしていたこともあり、現実社会について考えることが嫌になってしまって…。宇宙について調べていたら、楕円形の軌道を描く小惑星があることを知り、『エリプティカル・オービット』という曲ができました。政治的なことは音楽に反映させたくなかったので、インターネットをシャットダウンして音符と向き合いました」

音のクオリティにもこだわって作った音楽宇宙。その繊細な美しさは、たくさんのチャンスを掴みながら歩んできた彼女の足跡そのもの。

「人との出会いやチャンスを逃さないために、自分の感覚を磨いて準備しておくことは大事です。まだ音大生だった私が、ジャズピアニストの山下洋輔さんに初めてお会いした時にフリージャズの動画を見せられて『これにオーケストラをつけられますか?』って聞かれたんです。そこでプレゼンした内容が良かったので仕事を依頼していただけたそうなのですが、今の私が考えても答えがわからないですね(笑)」

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メジャー・デビュー10周年記念アルバム『ビヨンド・オービット』。第62回グラミー賞にノミネートされた前作から5年ぶり、13人編成のジャズ室内楽団m_unitによる第4弾。¥3,300(ユニバーサルミュージック)

はざま・みほ 作・編曲家、指揮者。国立音楽大学卒業およびマンハッタン音楽院大学院修了。2012年にジャズ作曲家としてメジャー・デビュー。ニューヨークを拠点にワールドワイドな活躍を続けている。

※『anan』2023年9月20日号より。写真・内山めぐみ 取材、文・上野三樹

(by anan編集部)

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