田代 わこ

下半身が「布」で隠された裸体画… 明治期にセンセーションを巻き起こした話題の作品

2023.4.30
東京・丸の内にある静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で、特別展『明治美術狂想曲』が開かれています。本展では、明治時代をキーワードにした絵画や工芸品を展示。「腰巻事件」でセンセーションを巻き起こした話題作も登場します!

国宝や重要文化財など約50点を展示!

特別展『明治美術狂想曲』展示会場

【女子的アートナビ】vol. 293

日本の西洋化がはじまった明治時代、人々の生活だけでなく、美術の世界でも大きな変化がありました。

油彩画が広まり、欧米好みの工芸品が生み出され、また古くからある日本の仏教美術が軽視され、排除されたのもこの時期です。

そんな明治時代の社会の変化を軸に、本展では、油彩画や日本画、工芸品など静嘉堂所蔵のコレクションを約50点展示。国宝や重要文化財を含む貴重な作品が紹介されています。

「美術」が生まれた!

河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》明治2~5年(1869~1872)※前期と後期で場面替えがあります

では、本展の見どころをピックアップしてご紹介します。

第一章は「『美術』誕生の時―江戸と明治のあわい―」。

1868年にスタートした明治時代、欧米に追いつこうと日本社会の近代化が急激に進んでいきました。「美術」という言葉が生まれたのも、美術館ができたのもこの時代です。

そんな時期に描かれたのが、河鍋暁斎の《地獄極楽めぐり図》。江戸と明治の文化がミックスされた作品です。

暁斎は、江戸後期の狩野派の技法を身につけた絵師ですが、浮世絵や明治のモチーフも作品に取り入れ、本作には当時は珍しかった汽車も描かれています。(汽車の場面は5月7日まで展示)

人気の国宝も展示!

左:薩摩焼《色絵金彩麒麟鈕香炉》明治9年(1876)頃、右:薩摩焼《色絵金彩獅子鈕香炉》明治9年(1876)頃 

続く第二章「明治工芸の魅力―欧米好みか、考古利今か―」では、美しい工芸作品がずらり勢ぞろい。

明治時代、日本では外貨獲得のため、欧米人に好まれる華やかなデザインの工芸品が数多く製作されました。「超絶技巧」と呼ばれる細やかな技術を使った作品も多く、海外でジャポニズムブームが盛り上がっていきます。

1867年に開催された「パリ万国博覧会」で人気があったのは、薩摩焼。明治以降も人気が続き、欧米に輸出されました。本展で見られる薩摩焼も、とっても華やかです。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12~13世紀)

この章では、国宝の《曜変天目(稲葉天目)》も展示されています! 本作品は、古美術が再評価されるきっかけとなった「第1回観古美術会」(1880年)に出品されました。

重要文化財 橋本雅邦《龍虎図屛風》明治28年(1895)前期展示

次の第三章「博覧会と帝室技芸員」では、橋本雅邦の迫力ある作品《龍虎図屛風》を見ることができます(5月7日まで)。

本作は、1895年に京都で開かれた博覧会に出品されたものです。当時の評価はあまりよくなかったそうですが、1955年、重要文化財に指定されました。

渡辺省亭原画 濤川惣助《七宝四季花卉図瓶》明治時代19~20世紀

また、超絶技巧の七宝作品も、見どころのひとつ。《七宝四季花卉図瓶》は、色彩が華やかで、とても美しい作品です。こちらは、フロア中央部にある吹き抜けの空間「ホワイエ」に展示されています。

下半身が「布」で隠された…!

黒田清輝《裸体婦人像》明治34年(1901)

最後の第四章「裸体画論争と高輪邸の室内装飾」では、黒田清輝の《裸体婦人像》が登場!

本作品は、近代洋画の父と呼ばれた画家、黒田清輝が渡欧中、白人女性をモデルにして描いたものです。

帰国後、1901年の白馬会にこの絵を出品したとき、警察が介入。公共の場で裸体画を展示することが認められず、下半身部分が布で覆われてしまいました。このセンセーションを巻き起こした出来事は、後に「腰巻事件」と呼ばれるようになりました。

当時のメディアを賑わせた話題作は、その後、西洋文化を理解していた岩﨑家が購入。高輪にある屋敷に飾られていました。

ミュージアムショップで販売中の公式図録も、センセーショナルなデザインです

人気の「ぬいぐるみ」は先着で購入可能に!

静嘉堂@丸の内ミュージアムショップで販売中。 税込価格¥5,800 ※ お一人様1個のみ

アートを楽しんだら、ぜひ静嘉堂のミュージアムショップにもお立ち寄りください。

以前の記事でもご紹介した、国宝《曜変天目(稲葉天目)》の「ぬいぐるみ」。あまりに人気で、しばらく入手困難でしたが、現在は先着で購入できるようになりました!

1日10個限定ですので、ご興味のある方は、10時の開館時間にあわせてお出かけになると、入手しやすいかもしれません。(※最新情報は、公式サイトでご確認ください)

展覧会は6月4日まで開催。

Information

会期    :~6月4日(日) [前期]4/8(土) ~ 5/7(日)[後期]5/10(水) ~ 6/4(日)※休館日は月曜日、5月9日(火)
会場    :静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)
開館時間  :10:00 – 17:00 (入館は16:30まで)。金曜日は18:00 (入館は17:30)まで。
観覧料   :一般 ¥1,500、大高生 ¥1,000、中学生以下無料

公式HP: https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/