人のスマホを見るのはアリ?「妻のを見るのも怖い」実力派俳優が熱弁
田口浩正さん・益岡徹さん・淵上泰史さん
【映画、ときどき私】 vol. 351
劇中に登場するのは、「モテない独身男」「50代のセレブ夫婦」「40代の倦怠期夫婦」「30代の新婚夫婦」という7人の大人たち。そのなかで、益岡さんは叩き上げの美容外科医、田口さんは法律事務所勤務のパラリーガル、淵上さんはカフェレストランの雇われ店長をそれぞれ演じています。今回は、現場での様子やスマホに関するご自身の経験などについてお話いただきました。
―本作はイタリアで大ヒットした大人のためのコメディを日本版としてリメイクした作品ですが、最初に脚本を読まれたときはどのように感じましたか?
益岡さん 脚本を読んだときは、まだオリジナルの映画を観る前でどんな内容か知らなかったこともあり、「これは大変そうだな」という印象でした。特に、冒頭のシーンは僕から始まりますからね。
―確かに、ワンシチュエーションでセリフも非常に多い作品なので、「大変そう」と思われるのもうなずけます。
淵上さん 僕もオリジナルを観ずに脚本を先に読ませていただきましたが、「スマホを見せ合う」というひとつの条件でこんなにも人はもたつくものかと、おもしろいアイディアだなと感じました。何でもないような会話が積み重なっていくだけなのに、みんなが窮地に追い込まれるんですよね。「最終的にこの人たちは一体どうなるんだろう?」というのも含めて、非常に興味深かったです。
田口さん 僕も岡田惠和さんの脚本が非常に優れていて、おもしろいなと思いました。会話だけでキャラクターが見えてくるあたりなんかは、本当にすばらしいですよね。打ち上げのときに話していたんですが、実は益岡さんとは『アルジャーノンに花束を』というドラマでも岡田さんの脚本で共演していたんですよ。
舞台の稽古に近いイメージで作っている感覚だった
―この作品も脚本のすばらしさが際立っていますが、演じるうえでの難しさはありましたか?
益岡さん 大変だったというよりも、さりげないセリフのやりとりが多かったので、どこが自分の番かというのをしっかりと稽古しないといけないところはありました。どちらかというと、舞台の立ち稽古に近いイメージで作っているような感じだったと思います。
田口さん 僕たちも最初は台本を持ちながらやってましたけど、プロデューサーさんから「セリフは年内に覚えて、新年から台本は外してください」と何回も言われていたので、そういうプレッシャーはありましたね……。
益岡さん でも、田口さんはちゃんとセリフ入ってましたよね?
田口さん いやいや、何をおっしゃっているんですか。キャストのみんなと「もう覚えた? 今日は外す?」みたいなやりとりを毎回していましたよ(笑)。
―では、ご自分のシーンで印象に残っていることはありますか?
淵上さん たくさんあるんですけど、僕は冒頭でいきなりダンスをしなきゃいけなかったシーンですね。というのも、ダンスなんてしたことがなかったうえに、そこだけ特に稽古もなかったので……。しかも、本番ではなぜか曲も流してもらえず、僕にとってはプレッシャーでしたね。主演の東山(紀之)さんに教えてもらうかなとも考えたくらいです(笑)。
―最終的に、東山さんにダンスは教えていただいたんですか?
淵上さん 別にダンスがうまい人という設定でもないと気づいたので、教えてもらわずに自分でやりきりました。
対人関係には割り切れないこともあると気がついた
―冒頭から注目ですね。そのほかに、ご自身の役柄に関して苦労した点があれば、教えてください。
益岡さん 僕は、夫婦のなかでもお互いのことを「許すか」「許さないか」のポイントをかなり突きつけられたように感じました。今回はどちらかというと、僕よりも妻のほうがあることをしでかしますが、そのときに気がついたのは、対人関係においては割り切れないものもあるんじゃないかなということ。
気まずいまま続く関係もあると思うので、そのあたりは少し難しかったというか、考え方を少し変える必要があるんだろうなと思いました。
―そこは、まさに“おとなの事情”といった部分かもしれませんね。実際に演じられてみて、感じたこともありましたか?
田口さん 今回僕が演じた役は、何かするたびに「はい、はい」と全員から言われるような役どころだったので、みなさんに転がされているような感じでした。特に妻役の常盤(貴子)さんと掛け合いの多かった東山さんは、僕のやることをしっかりと受け止めて芝居をしてくださっていたなと。本当に、みんなにかわいがられた役だったなと思っています。
―現場の雰囲気は、いかがでしたか?
田口さん みんなでテーブルに集まっていると、芝居とは関係ないたわいもないことを話したり、料理を普通に食べたりして、すごく楽しかったですね。撮影中もそういう雰囲気がそのまんま出ていたんじゃないかな。
オフの自然な感じも映画に映し出されている
―ということは、オフの自然な空気感もそのまま映し出されていたと?
田口さん 何となくその感じは映っていると思います。
益岡さん うん、そうだね。
田口さん 同じシーンを撮り直すときも、スタッフから言われることなく、自然と自分で料理の調節なんかもしてましたしね。
益岡さん オンとオフがシームレスな感じはあったと思います。そこで繰り広げられる会話も「それセリフなの?」と思うくらいのものが多かったので。あと、印象に残っているのは、通常だとテストのあと本番で完成度をグッと上げないといけないんですが、さりげない芝居をしながらもテストのときからみんな本気だったなと。映像をいいものに仕上げるために必要な瞬発力が非常に高い現場だったと思いました。
―なるほど。ちなみに、ムードメーカー的な存在の方はいらっしゃいましたか?
淵上さん 益岡さんじゃないですか?
益岡さん え⁉ 僕ですか(笑)?
田口さん でも、誰かひとりだけというよりも、みんなそれぞれにムードメーカー的なところがあった気もしています。
―本作では、人間関係についても考えさせられますが、演じるなかで気づいたことはありましたか?
淵上さん 今回の男性キャストのなかでは、僕が一番年下ということもあり、気の遣い方は大事だなと感じました。というのも、先輩たちに囲まれるなかで、あまり気を遣いすぎても逆にみなさんに気を遣わせてしまうので、そのあたりのバランスは考えさせられたところです。
でも、益岡さんと田口さんをはじめ、みなさんとても優しい方ばかりでフランクに話してくださったので、いいお兄さんができたようなうれしさがこの現場ではありました。
「大人なら他人のスマホは見ない」が前提
―撮影を通じて、みなさん仲良くなったと思いますが、もしこのキャストでスマホをさらし合うゲームをするとしたら、どなたのスマホのぞいてみたいですか?
田口さん いや、そもそもあんまり人のスマホって見たくないかもしれないです。
益岡さん うん、普通は見ないよね。
淵上さん そうですね、見ないと思います。
田口さん 僕なんて、妻のスマホでさえ見るの怖いですから(笑)。何かあったら嫌だなと思って……。
益岡さん 確かに、「他人のスマホは見ない」という前提があるからこそ、それを覆して踏み越えてしまったらどうなるのか、というのがこの映画のおもしろいところですからね。
田口さん でも、世の中には見る人もいますから……。ということで、「大人は見ない!」ということですかね?
益岡さん まあ、そもそも僕は人のスマホの見方がわからないというのもありますけど(笑)。
―(笑)。ananwebでは、以前オリジナル版の監督に取材をしたことがあり、本作のきっかけについて、監督のお友達がバイク事故に遭ったときに、スマホを奥さんに預けたら秘密がバレてしまったという出来事がこの映画のアイディアになったとうかがいました。みなさんにも、そういったスマホの失敗談はありますか?
田口さん 押し間違えたとかの単純な失敗ならありますけど、自分がスマホに隠していることを公に発表したくないというのがまずはありますからね。なので、いまのエピソードみたいな話をここでは言わないですよ!
でないと危険というか、自分の首を絞めることになりますからね……。ということで、申し訳ないですが、スマホに関するおもしろいネタはありません(笑)。
スマホでは詰めの甘さにヒヤッとすることもある
―どんな秘密か非常に気になりますが、ほかのおふたりは何かありますか?
淵上さん 僕は先輩にメールを送ったときに、「〇〇さん」と書かないといけないのに「さん」を忘れてしまい、呼び捨てになっちゃったことに送ったあとで気づいたことはありました。そしたら、「普段から俺のことこう呼んでるの?」と言われてしまったりして(笑)。「つけ忘れただけで、違います!」と言いましたが、そういう詰めの甘さが出てヒヤッとしたことはありますね。
益岡さん あるある! 僕もボタンを押しているときに、ちゃんと押してるはずなのに違うところを押してて、全然違うふうに文字が変換されててとんでもない文章になっちゃうことがあるんだよね(笑)。まあ、それはそれでおもしろいなと思うこともあるんだけど。
田口さん ありますね。あとは、「てにをは」をミスして間抜けな文章になっちゃうんですけど、想像すればわかる範囲だと、書き直すほどでもないかなと思っちゃったり。
益岡さん そうそう。かといって、送る前に見直すこともしない人なんだなと思われるのも嫌だしね。でも、そういうときに限って、間違えて送信ボタンを押しちゃうことがあるんですよ。
内心の自由とスマホは別だという知恵をつけるべき
―そうですね、大多数の人がうなずいていると思います。では、ご自身にとってスマホとはどんな存在ですか?
田口さん たとえば、よくあるスパイ映画とかで機密情報を手にするために、他人の指を切ったり、目をくり抜いたりみたいなシーンがありますけど、さすがに僕が寝ている間に妻が指紋認証で勝手にスマホを開いてまで見ているとは思っていません。
でも、妻は見ていなくても、クラウドにはスマホの情報がすべていってるわけですよね? たとえば、何を見ているかという履歴ってすごく重要じゃないですか、男って。いや、僕は何も怪しいのは見てないですけど、もしそういうのばっかり見てるのがバレたらはずかしいですからね。って、何の質問でしたっけ(笑)?
―「スマホとは?」についてです(笑)。
益岡さん 誰にでも“内心の自由”ってありますよね? つまり、「心のなかでは何を思っていても自由だ」ということです。でも、いまはスマホに頼りすぎてしまっているせいか、そういう気持ちがスマホのなかにも株分けされて増えちゃった感じなのかなと考えています。
だから他人には見せられないんじゃないかなと。そういう意味でも、これからはスマホと内心の自由とは違うものなんだという知恵を私たちがつけるべきなのかもしれませんね。
インタビューを終えてみて……。
劇中でも見せていた息の合ったやりとりで、笑いの絶えない時間となった今回の取材。お三方それぞれの自然体な魅力にすっかり引き込まれてしまいました。みなさんが一体どんなスマホをお持ちか非常に気になるところですが、驚きの“秘密”は劇場でお楽しみください。
スマホの秘密は手のひらには収まらない!
秘密を知って絆が強くなることもあれば、秘密を知らないからこそうまく行くこともあるのが人間関係のおもしろいところであり難しいところ。そんな人間模様を大きく左右してしまう力を持っているスマホだからこそ、どんなに見たくても、他人のスマホはのぞかないほうがお互いにとって幸せかも⁉
写真・北尾渉(益岡徹・田口浩正・淵上泰史) 取材、文・志村昌美
ストーリー
ある出来事で出会い、強い絆で結ばれていた3組の夫婦とひとりの独身男性。年に一回集まって友情を育んでいた彼らだったが、1人の参加者の発言がきっかけとなり、「スマホに届くメールと電話のすべてを全員に公開する」というゲームを始めることに。
隠しごとは何もないと言いながらも、全員が祈っていたのはスマホが鳴らないこと。なぜなら、そこにいる誰もが“絶対に知られたくない秘密”をそれぞれに抱えていたからだった。そして、スマホに着信があるたびにパーティは修羅場と化していくことに……。
翻弄される予告編はこちら!
作品情報
『おとなの事情 スマホをのぞいたら』
1月8日(金)より、全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2020 Sony Pictures Entertainment(Japan)Inc.All rights reserved.
https://www.otonanojijo.jp/