「父子家庭で育ったことを誇りに思います」弾丸ストライカー・上門知樹のすべて

取材、文・伊藤順子 — 2023.7.22 — Page 1/2
多彩なシュートが「エグすぎる!」と注目を浴びている、セレッソ大阪の上門知樹選手に独占インタビューをしました。オン&オフの気になるあこれこれを大公開します!

何事も「楽しむこと」がいい結果に結びつく



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『キャプテン翼』の大空翼さながら、ジェットコースターのように急降下するドライブシュートや難易度の高い無回転シュートなど、まさに漫画のようなハイレベルな神業を得意とする、セレッソ大阪が誇るミッドフィールダー・上門知樹選手。シュート動画はSNSでも数多く取り上げられ、「エグい!」「無双!」と絶賛の声が止みません。魔球を操るヒミツと、知られざるプライベートの顔を紐解きます。

ーー上門選手と言えばシュートというイメージが広く定着しています。

プロサッカーの世界で生きてくうえでの、僕の一番のストロングポイントです。俊敏性といった動きは他の選手もできることですが、多彩なシュートを放つことは僕ならではの武器だと思っています。それがなければ、ここまで来られていないですね。

ーー体得するには、当然のことながらものすごい練習量が必要ですよね。

シュート練習で特に覚えているのは僕が中学生の頃のことですね。当時、サッカーW杯で本田圭佑選手が蹴った無回転シュートが流行ったんです。それを真似しようと、壁に向かってボールを蹴り続けたり、練習後も残ってシュート練習を重ねました。確かに難しい技ですが、うまくいかなくても全く苦にならなかったし、何より楽しくてずーっとやっていましたね。そこから、いろいろな種類のシュートを打ち分けできるようになったんです。

ーーできないことが続くと嫌になりそうですが、心がけていることは?

楽しむという気持ちが、僕がサッカーを続けるうえで一番大事なこと、忘れてはいけない原点だと思っています。と言うのも、中学高校の頃は試合でうまくいかない場面があると、ついイライラしたり仲間にキツい言葉を言ってしまうことがあったんですね。でも、それは何の解決策にもならないと自分でも気づいたし、監督からも指摘されたんです。そして、自分が楽しんだら、自分の持ち味も出せてチームの雰囲気もゲームもうまくいった。そんな経験から、楽しむということを常に意識しています。

ーーその考え方は、座右の銘である「なんくるないさー」に通じるような気も。広報の方によると、チームでもご出身のいわゆる“沖縄時間”(時間に捉われない)で過ごしているそうですね。

それでもだいぶ直ったんですよ(笑)。僕の地元、沖縄では時間を気にしないことが普通でしたが、プロに入って遅刻などで怒られて、それで初めて社会では通用しないと気づきました。今では遅刻なんてありえないと思っています。それでも、「なんくるないさー」は座右の銘には変わりありません。どんなことでも最終的にはどうにかなる、自分がどうにかする、そういう精神は持ち続けたいですね。


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ーー影響を受けた人や出来事を教えてください。

サッカー面では、FC琉球でご一緒した先輩の播戸竜二さんです。いろいろなアドバイスをいただいて、僕が成長するきっかけを作ってくれた恩人です。それ以外で言うと、やっぱり父親ですかね。偉大な人です。1、2歳の頃に両親が離婚して、僕は三兄弟の末っ子なんですけど父が全員を引き取って育ててくれました。あまりにも小さい頃のことなので僕にとって母親がいないことは当たり前の環境なんですよね。父は体力的にも経済的にもかなりしんどかったと思いますが、何不自由なく好きなことをさせてくれたので、不満も寂しさも感じないどころか父にとても感謝しているし、逆に男手ひとつで僕らをこんなに大きくしてくれたんだぞって、父子家庭で育ったことを誇りに思います。

ーー具体的にどんなお父さまなのでしょうか。

毎日朝早くから夜遅くまで仕事して、加えて兄や姉の弁当も作ってくれていた時期もあり、休んでいる印象がないんですよ。父の唯一の休日である日曜も、朝から僕のサッカーの送迎をしてくれていたので、大人になって改めて父のことを振り返ると本当にすごいなと思いますね。特に覚えているのは、サッカーのスパイクがボロボロになってしまった時のこと。買い替えるのはお金がかかるし迷惑をかけてはいけないと、ずっと黙っていたんです。そうしたら、父から気づいて、何で言ってくれないのか、子どもが気を遣うなと怒られたんです。それまで少し反抗期で父とケンカをすることもありましたが、それを機に歯向かうことはやめました。尊敬しないといけないと思うようになりましたね。

プロサッカー選手を推してくれたのも父です。本当は僕、兄の後を追って調理師になろうと専門学校に受かっていたんですよ。そんななか、当時J3だったFC琉球からオファーをいただいたのですが、サッカー選手としての収入面で少し不安があったことから、プロになる気はありませんでした。でも、父がすごく積極的で「誰でもできることじゃないからやってみたら」と背中を押してくれたんです。父の言葉がなければこの世界に入っていなかったですね。


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ーーお父さまの素晴らしさに胸を打たれる人は多いと思います。上門選手は三兄弟の一番下ということで、一般的に末っ子の特徴として甘えん坊がよく挙げられますけど、ご自身の性格はいかがですか。

父の実家に住んでいたので、父のほかに祖父母や兄と姉など、周りがいろいろお世話してくれたせいか、受け身かもしれないですね(笑)。なので自分から話しかけられず、シャイというか人見知りです。セレッソに来たときもしゃべれなくて…でも、みんな優しいので話しかけてくれて助かりました。慣れないと自分から動けないんですよね。特に女性の目を見て話せないです(笑)。サッカーでなら注目を浴びたいですが、プライベートでは自分のことをあまり見られたくないです。

ーー女性の話が出たので、好きな人のタイプ、好きな芸能人も教えてください。

よく笑う人、フィーリングが合う人がいいですね。「なんくるないさー」な考え方の人も好きです。好きな芸能人は長谷川潤さん。自分が沖縄出身だからか、はっきりした顔立ちの女性に惹かれますね。付き合ったら送迎は任せてください。車好きでもあるんで、どこでも迎えに行きます。

ーー休日の過ごし方は?

たまに外出してご飯に行くこともあれば、午前中はずっと寝ていて午後から出たりと日によってさまざまですね。また、同チームの毎熊晟矢選手と仲がよくて、休日に限らずふたりで外食しています。温泉やカフェにも一緒によく行きますね。僕、ストレス発散は眠ることなんですよね。12時間くらい平気で寝ます。毎熊もよく寝るから、生活サイクルとかひっくるめて相性がいいんです(笑)。


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ーマイブームや好きなファッション、音楽などもお聞きしたいです。

ゴルフを趣味にしたいんですけど、なかなか実行に移せていないので…う~ん(と考え込む)。調理師を目指していたから料理好きとよく思われるんですけど、そうでもないんです。ただなりたくて、志そうとしていただけなので(笑)。とはいえ実際、料理作りに一時期ハマって、課金までしてレシピを検索していましたけどもうブームは去りました。サッカーしか考えていないから、他に趣味を見つけるのって難しいですね。

ファッションは色にこだわりがあって白黒が多いです。シンプルなのが好きですね。音楽は洋楽も邦楽もランダムに流して聴いています。試合前はアップテンポなものを聴いてテンションを高めますね。同県出身のHYさんや安室奈美恵さんも好きでよくかけています。

ーーでは最後に、今後の目標や将来の夢、そしてメッセージもお願いします。

目標はJ1リーグ戦で2桁ゴールです。夢は、日本代表になること。みなさんがもし何かに迷っていたり、悩んでいたら、直感を信じることをおすすめします。僕はそれを重視していて、サッカーの道を選んだのも直感からでした。何かにピンと来たら、それをやり続けるんです。それが大事かなと思いますね。


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ひとつひとつの質問に、考えながら丁寧に答えてくれた上門選手。撮影時は照れからかひょうきんな一面も垣間見れ、終始和やかムードでした。そんな上門選手ですが、試合になると顔つきは激変。パワフルで巧なシュートは鳥肌&伝説級で必見です!  

上門知樹

1997年4月27日生まれ、沖縄県出身。セレッソ大阪所属。ポジションはミッドフィールダー。沖縄県立与勝高等学校卒業後、FC琉球に加入。その後、ファジアーノ岡山を経て、2022年より同クラブ。2023年7月12日の天皇杯大宮アルディージャ戦では2得点を挙げ、勝利に大きく貢献した。

https://www.cerezo.jp/team/players/satoki_uejo/

Information

セレッソ大阪公式ホームページ
https://www.cerezo.jp/

セレッソ大阪 vs パリ・サン=ジェルマンFC
https://psg-japan-tour.com/tickets/day-2