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揺れる女心「やっぱり元彼が好き…」|12星座連載小説#113~牡牛座11話~

文・脇田尚揮 — 2017.7.6
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第113話 ~牡牛座-11~


前回までのお話はコチラ

「あっ、もしもし志田です……」

『清水です。先日はどうもありがとうございました。ご迷惑をおかけしました……』

公園のトイレは薄暗く、日が暮れていくにつれ不気味な雰囲気を醸し出し始めた。さっき目撃したショッキングな光景に、すっかり心折れている私には、志田さんの声がとても温かく安心できるもののように感じられた。

「いえいえ、お気になさらないで下さい。私も飲み過ぎてやらかしちゃったこと、ありますし。その時は、同僚に介抱してもらいました」

『志田さんも、お酒で潰れたことあるんですね』

意外だった。あんなに生真面目で大人しそうな人でも、お酒で失敗することあるんだ。

「はは、恥ずかしながらです。……あの」

『はい?』

「あ、いや……」

『どうかされましたか?』

彼の言いたいことは分かる。でも……、私の口からは言わない。狡いのか勇気がないのか分からないけど、私は志田さんからの言葉を待っている。

「あの、近々一緒にランチしませんか? 清水さんのお話とても興味深かったです。もう少し、色々聞かせて欲しいなと思いまして」

志田さんの言葉に、私は涙が止まらなくなった。

『……ウッ、はい、私も……是非、お願いします……グスッ』

「清水さん、大丈夫ですか!? どうされました?」

私の不穏な空気を感じ取ったのか、志田さんが焦っている。当然よね……、会話の最中で、いきなり女が泣き始めたんだもん。

『いえ、何でもありません。少し花粉症で……』

「そうですか? ……お大事になさって下さいね。それじゃあ、来週末、土曜13時などいかがでしょう? 恵比寿駅待ち合わせで」

『ええ、分かりました。楽しみにしていますね!』

「それじゃあ、また」

『ええ、また』

「……あの……清水さん、何があったか知りませんが、元気を出してくださいね。では」

そして、通話が終了した。

―――複雑な心境。元彼のデート現場に遭遇して、そして逃げ込むように志田さんの優しさに甘えている。私は一体何がしたいのだろう。

涙を拭い、帰宅した頃には20時をまわっていた。


それから1週間、心の中はグチャグチャだった。

働いている最中、以前のように雅俊さんのことを考えることはなくなった。もちろん、“あの光景”を思い出すたびに辛い気持ちになるけど。そんな心の隙間に入り込んできたのが、志田さん。

雅俊さんのことを考えては悲しみに包まれ、志田さんのことを考えてその悲しみを癒す。不健全な恋心に罪悪感を覚えつつも、心は揺れるばかり……。

主任の春日先生は、上の空の私に「無理しないようにね……」とだけ、声を掛けてくれた。

おそらく、私の様子がおかしいことをみーたんに相談したのだろう。みーたんに、それとなく聞かれた。

職場の人達にまで迷惑をかけてダメだぁ。早く、このモヤモヤ状態から抜け出したい―――

今週、最後の仕事を終え、帰宅しながらそう思った。


―――今朝は自然と目が覚めた。

9時……か。今日は13時に、恵比寿で志田さんと待ち合わせだ。

雅俊さんとのデートの時のように、ドキドキすることはなく、普段通りのメイクに、ちょっとだけ女子っぽい服装をしただけ。変に、気合いを入れるのも恥ずかしいし……。

私はきっと、志田さんのことを雅俊さんほどは好きじゃないんだ。

この1週間、いろいろ悩んだけど、結局私は雅俊さん以外の男性を好きになることはできないのよ。

悲しい想いを胸に、朝食を軽くとり、着替えて恵比寿へ向かう―――

待ち合わせ場所に着くと、すでに志田さんはいた。15分前だっていうのに……、本当に几帳面な人ね。

『志田さん、こんにちは』

「あっ! どどどうも……!」

『今日はよろしくお願いします』

「はい、こちらこそ。ええと、早速ですが、近くのパスタ屋に入りませんか?」

―――パスタ屋……か

雅俊さんとの思い出に上書きするような気がして、少し躊躇する。

「パスタ、お嫌いですか?」

私の顔が一瞬曇ったのを見逃さなかったのだろう、志田さんが気遣ってくれる。せっかく、また会って食事をすることになったというのに、嫌な女ね、私……。

『いいえ、そんなことないですよ! 行きましょう!』

できるだけ明るく、私は否定してみせた。

パスタ屋に着いて、注文をする。

私は明太子スパゲティ、志田さんはボンゴレビアンコ。お互い、どこか遠慮しているようなチョイスだ。

「あの、清水さん」

最初に口を開いたのは、志田さんだった。

「前回お会いしたときから、何だか元気がなさそうなんですが、何かあったんですか?」

どうしよう。志田さんに、本当のことを言おうか、それとも……。

もし、本当のことを言えば、引かれるかもしれない。でも、こんな気持ちのまま、志田さんと楽しく過ごすことなんてできない。

……正直に話そう。

雅俊さんのこと、そして志田さんを雅俊さんを忘れるために利用してしまっていること、自分でも自分の気持ちが分からなくなっていること。

私は、すべてを語り始めた―――


【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
清水和歌子 牡牛座28歳 保育士
子供好き。学生の頃から付き合っていて、結婚まで考えていた彼(飯田雅俊)に振られる。彼との恋をずっと引きずっており、復縁を望んでいる。ややぽっちゃり体型だが、男ウケする柔和な笑顔が特徴的。結婚していい奥さんになるのが夢。友人の紹介で、同郷の志田秀と引き合わされ、淡い恋心を持ちながらも、過去を忘れられずに苦しむことに。


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