突然の「何してる?」連絡は避けるのがベター!? 誘い上手になるための会話例4つ
相手に合わせるより自分の気持ちを大切に。
傷つけたり、傷つけられたりすることを恐れるあまり、表面的な人間関係にとどまりがちといわれる現代。パンデミックも重なり、人との距離が遠のいたように感じる人も少なくないはず。では、人と人との間に立ちはだかる、見えない“壁”を取り払い、相手との距離を近づけるにはどうしたらいいのか。本やセミナーでコミュニケーションのあり方や言葉の選び方を発信する起業家の宮本佳実さんに、その心得を伺った。
「まずは、相手に好かれようとするのは逆効果! 嫌われたくないという気持ちが先走り、『こんなことを言ったら嫌われるんじゃないか』と自分が伝えたいことを言わずにいると、いつまでも距離は縮まりません。好かれるように相手に合わせた結果、縮まったように見えても、我慢の上に成り立っている人間関係はいずれ崩れてしまいます」
2つ目のポイントは、相手の話を膨らませる意識を持つこと。楽しい会話を積み重ねていくほど、相手との距離は縮まっていくことはわかっていても、会話を続けるのは難しい…。
「会話というキャッチボールを続け、膨らませていくには、どんどん質問をするのが一番! “どうして”“なんで”と問い掛けることで、相手に興味や好意を持っていることを示せます。聞かれてたくさん話せれば人は気分がいいですし、『こんなにも楽しく話せる人なら、信頼できそう』と思ってもらえるはず」
その上で、最後に宮本さんが強調するのは、誰とでも距離を縮め、仲良くなれるとは限らないということ。
「どれだけこちらが歩み寄っても、関係が変わらない相手は必ずいます。ドライに聞こえるかもしれませんが、そう割り切り、関係性ごとに距離を調整するほうがモヤモヤしません。自分らしく付き合える人との距離を縮めることに集中し、自分にとってかけがえのない大切な関係を深めて」
この3つの心得をベースに、距離を縮める具体的な方法を学んでいきましょう。ここでは、距離を縮めるLESSON1と2をご紹介します。
【LESSON1】「自分の想いと言葉」を事前にリスト化してみよう。
想いは文字化することで、確実に伝えられる。
相手との距離を縮めるのにとても有効なのが、自分の想いを言語化して伝えること。
「相手へのプレゼントになるような言葉を届けられたら、素敵な関係を築けること間違いなし! ただ、喜んでもらえるフレーズがパッと浮かばなかったり、褒め言葉のつもりが、誤解を招くこともあります。そうした事態を避けるために、あらかじめ文字でリスト化しておきましょう。そして、実際に伝えてみる。その反復練習によって想いを伝える力は強くなるので、リストを定期的にアップデートしていくといいと思います」
まずリスト化しておくといいのが、相手への感謝の気持ち。
「感謝は、そのまま相手への褒め言葉になります。また、日頃から感謝をしていると、その人に対して苛立つなど、負の感情が出てもブレーキをかけられますよ」
自分が人から言われて嬉しかった言葉もストックしておきたい。
「『誰かに言ってみたい!』と感じた言葉を溜めていけば、距離を縮める魔法のワードのネタ帳が作れます。ただ、自分は嬉しくても、受け手が違えば捉え方も変わります。言われた相手がどう感じるかという視点は忘れずに」
一方、せっかくの会話の機会が愚痴ばかりになると、建設的な内容にはならず、悪い印象にも。
「不満や愚痴は言葉として発さず、文字にして洗い出す。そうすると、頭の中が整理されるので会話の内容も自然とポジティブに。良好な関係を築くのに役に立ちます」
Q1. まわりの人に感謝したいことは?
“一緒にいると楽しい気分にさせてくれる”“対応が誠実で助かる”“ピンチの時に支えてくれた”など、事前にリストアップしておくと、わざとらしくなく、さらっと感謝の言葉を会話やメールに織り交ぜることができるように。
Q2. 人に言われて嬉しかったことは?
「自分のことをそんなふうに思ってくれていたんだ」と嬉しくなった言葉があるはず。たとえば、仕事面だったら“機転が利く”“集中力がある”“責任感が強い”など。人間性なら“社交的”“聞き上手”“ポジティブ”など。
Q3. いま抱えている愚痴って?
イライラすることや、困っていることなどを日頃から洗い出しておく。それだけでは単なる愚痴や悪口で終わってしまうので、今後自分がどうしたいのか、変化を促す行動にまで落とし込むと、建設的でポジティブな会話に!
【LESSON2】誘い上手になるための会話例を覚えておこう。
人を誘う時こそ相手の立場になるべし。
その人のことをもっと知って、仲を深めたい。でも、相手に負担はかけたくない。そんなジレンマに陥って、なかなか踏み込めず、距離を縮められないという人も多いのではないだろうか。
「相手を慮るのはとてもいいことですが、相手をより理解して、気持ちを近づかせたいのなら、食事を共にする、休日を一緒に過ごすなど、より密度の高い時間が必要になってきます」
人を誘うというのは、それまでの距離感から一歩踏み込む積極的なアクション。せっかく勇気を出してその行動に出るからには、成功させたいものだけれど…。
「距離の縮め方には、人それぞれのペースがあり、心地いいと感じる距離も十人十色です。強引に約束を取り付けたり、急に悩みを打ち明けたりすれば、相手を引かせてしまうことに…。なので、相手への負担を極力減らす、もっと言えば相手に断る余地を残すことが、誘う極意なんです。たとえば仕事終わりに、親睦を深めたくて食事に誘いたいなら、その場で具体的に提案したほうが『いつかごはんでも』というよりも実現度が高まりますし、断りたい人にとっては『今日はだめなんだよね』という口実になります。また、悩みを相談したいなら、事前にそのことを伝えておくべき。相手はまだ、あなたの悩みを聞くほどの仲だとは思っていないかもしれません。どんなシーンや目的であっても人を誘う時は、誘われた相手の立場を考慮することが成功の秘訣です」
【CASE1】仕事終わりに食事へ
まずは“断りやすい”ジャブで様子見を。
食事は日時を具体的に提示して誘うと、相手の気持ちを見極めやすく、断る側の負担も軽くなる。「その日はダメでも、本当に行きたい人は別の候補日を提示してくるはず。公私をきっちり分けたい人にとっては『その日はダメなんです』と断りやすくなります」
【CASE2】休日にイベントに誘う
日時より先に、イベントの内容を伝える。
一緒に行きたいイベントがあって誘い出したい時は、まずはイベントの内容を伝えるのが誘う側の礼儀。「好みが分かれるものは、スケジュールよりも興味の有無を先に確認しましょう。具体的な行動のイメージがわかるほうが、相手も判断しやすく親切です」
【CASE3】悩みごとを相談したい
きちんと「悩み相談」と伝えた上でお誘いしましょう。
悩み相談は、聞く相手にとって精神的な負担が大きい。「単なるお茶のつもりで行ったのに、愚痴交じりに相談されたら困る人も。『悩みがあるから聞いてほしい。時間をもらえないかな』と明確に伝えておけば、相手は心の準備ができ、こちらも気兼ねなく話せます」
【CASE4】久しぶりに連絡をして、友達を誘う
突然の「何してる?」連絡は避けるのがベター。
しばらく連絡を取っていなかった旧友と、また親睦を深めたくなることもあるはず。「急な連絡は何かの勧誘と思われるなど、相手を警戒させます。昔よく話していた俳優のドラマを見たなど、その人のことを思い出した理由を伝えると、警戒されず、昔の距離感に」
宮本佳実さん 起業家。女性の働き方や生き方を提案する「ワークライフスタイリスト」を創設。著書に『どんな相手も味方になる 感じのよい伝え方』(すばる舎)などがある。
※『anan』2024年3月6日号より。イラスト・三枝かりん 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)