NYでは掃除機やゲーム機をアプリでシェア!? 世界の“シェアリングサービス”最新事情

2023.10.14
UberやAirbnbなど日本に先駆けて日常的にシェアリングサービスが利用されている印象の海外だけれど、コロナ禍以降の“今”はどうなっている? ニューヨーク、ベルリン、ソウルの3都市から最新事情をお届け!

【ニューヨーク】ミニマルライフに憧れアプリ主導のシェアに夢中。

物価の高いニューヨークでは、アパートに始まり、車やバイクのシェアリングも今や当たり前。スキルのシェアも浸透しており、ファミリー層ではナニー(保育のプロ)のシェアが流行中。フルタイムだと高額なナニーを、別家庭とパートタイムでシェアするというもので、ナニーやシェア相手を探すサイトもあって、働くママたちの強い味方だ。

一方、20~30代は、経済的側面以上に、“持たない”ライフスタイルに即したシェアライフを謳歌中。余計なものは所有しないミニマルな暮らしを実現すべく、日用品をレンタルできる「トゥル」の設置がアパートやオフィスで需要を伸ばしている。掃除機やプリンターをアプリ一つで借りられる手軽さに加えて、使用データを分析して次のタイミングを知らせる機能も気が利いている。

さらに、ファッションも今やシェアする時代。洋服やバッグのレンタルサービスは以前からあるが、近頃ではSNSのようにユーザー同士が繋がる“ピア・ツー・ピア”のレンタルが話題。ロンドンから上陸した「バイ・ローテーション」は、おしゃれなユーザーが多く、旬のブランドや憧れのハイブランドのアイテムを彼女たちのクローゼットから直接レンタルできる。また、ワードローブの共有によってファストファッションへの依存をなくそうという試みも好感度大。消費社会の最先端と思われがちなニューヨークだが、サステナブルでエコノミカルなシェアライフは今後も若い世代を中心に発展していきそうだ。

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掃除機やゲーム機、ジューサーなど、アプリで必要な品を借りられる「トゥル」。レオナルド・ディカプリオのベンチャーキャピタルが出資したことでも話題に。実際に設置したアパートでは、住人の半数以上が活用しているそう。©Tulu

【ベルリン】古本からツリーまで、日常のリサイクルに注目が。

環境先進国というイメージがあるけれど、実は人口1人当たりのゴミ排出量はヨーロッパ平均を大幅に超えるドイツ。ここ数年は廃棄物を減らすため、シェアする暮らしへの様々な取り組みが登場している。

一番大きな動きは、モビリティシェアだ。最近注目なのは、荷台付きのカーゴサイクルのシェア。なかでもオランダ生まれの「カーゴルー」は、電動で積載量は最大125kg。2人の子どもと荷物をのせても余裕と、学校への送迎にも人気だ。カーゴルーの調査によれば、1台を40~60人でシェアしており、ユーザーの72%が車の代わりに選んだと答えているという。

使わなくなったものをシェアするアイデアもいろいろある。電話ボックスをリユースした書庫に読み終えた本を置いてシェアする「ブックボックス」は、市内に90近くが存在する。子ども連れの人たちが、絵本を交換したりと楽しそうだ。

面白いところではクリスマスツリーも。ドイツのツリーは生木で、ひと冬限りの使い捨てが一般的だった。それを植木鉢に入れて貸し出し、終わったら回収して植え直し、翌年も使い回すサービスが始まって好評だ。

ここ数年で、身近なところにシェアが浸透しているドイツ。近所に住む人を繋げる「ネーベンアン」というアプリでは、大工道具のシェアや不用品の交換も。パンデミック下では力をシェア――つまり、助け合いを広める役割も果たした。人と人を繋ぐ……シェアの醍醐味はそこにこそあるのかもしれない。

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古い街路樹を使った変わり種のブックボックスには夕方になると次々と人が集まってくる。

【ソウル】カフェ開業前の練習空間、図書館やジムもシェア!

“共有都市・ソウル”をスローガンに掲げ、2012年に世界初のシェアリングシティ宣言をした韓国・ソウル特別市。韓国はもともと鍋や大皿料理を大勢で囲んだり、ご近所さんで集まってキムチを漬けたりといったシェア文化が根づいているが、核家族や一人暮らし世帯が増えた影響もあり、インターネットを介したシェアリングエコノミーが急速に広まっている。

公共シェアサイクル「タルンイ」の会員登録者数は330万人を超え、ソウル市民の3分の1が利用する移動手段に。カーシェアリングの利用者も増え、地域型の中古取引アプリとしてスタートした「タングン」は不動産・中古車の個人売買やアルバイト情報を提供するコミュニティサイトに成長。「キャロット」の名でイギリスやカナダ、日本にも進出している。

次世代型シェアハウス、コリビング(Co‐living)の人気も上昇中。首都圏5か所で運営されている「マングローブ」は、プライベートな居住空間に加えて、ジムやヨガルーム、図書館などの共用施設が充実。相場よりも安い賃料で、楽しく安全な都心暮らしができる。

また、カフェ大国ならではのサービスも。聖水洞(ソンスドン)の「Heating Studio」は、コーヒーマシンや業務用オーブンを備えたシェアキッチン。カフェ開業前やバリスタライセンス取得前に本格的な実践練習ができる。バリスタトレーナーによる講習会が開かれることもあり、スキルシェアの場としても有効活用されていきそうだ。

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ベーキングゾーンの作業台や調理器具、バリスタゾーンのコーヒーマシンは1時間1万2000ウォン~。ラテアートの練習に必要なツールやミルクもそろう。

※『anan』2023年10月18日号より。取材、文・小松優美(New York) 河内秀子(Berlin) 藤田麗子(Seoul) 構成・菅野知子

(by anan編集部)