スウェーデンには“ゴミを出す日”がない!? 目から鱗の海外「ゴミ問題」事情

2022.3.25
日本でも活性化しだしたSDGs。しかし、ほかの国がどんな状況でどんな対策を行っているか知らない人も多いはず。どんな面で進んでいて、どんな面で遅れているの!? 諸外国のSDGsへの取り組みを知るために座談会を実施。ゴミ、健康、ジェンダー、貧困と、世界が抱えている社会問題のリアルな実態があきらかに。

今回座談会に参加していただいたメンバーは、日本の文化や生活に惹かれて移り住んできた外国籍の2人と、日本育ちのダブルで海外滞在経験を持つ2人。みなさんが語るそれぞれの国の実情は、目から鱗のエピソードが続出! エシカルライフの知識も豊富で、グローバルな視点で各国のことや日本のことについて熱く語ってもらいました。

ゴミ&リサイクル問題どうしてる?

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大量生産、大量消費、大量廃棄の社会システムが、地球規模の環境問題へと広がっている。プラスチックゴミの焼却による温室効果ガスの過剰排出は、地球温暖化の原因に。それが気候変動を引き起こし、自然の生態系にも大きな悪影響を及ぼしている。そこで私たちが最も身近に感じる「ゴミ問題」をテーマに語っていただきました。

アイシャ・トチギ:日本はゴミの分別ルールがしっかりしている国だと思います。分別されていないゴミは収集車が持っていってくれないし、分別に対する意識は高いですよね。

アレックス・H:たしかに。アメリカは個人主義だから、責任を持ってやる人もいれば、全くやらない人もいる(笑)。

ヒトミ・R:日本は自治体によってはしっかり分別しているところもあるけれど、実際そのルールを理解している人は少ない。ゴミ処理に関する情報が正しく共有されていないように感じます。

ヤンニ・オルソン:そうですよね。私も日本に住み始めた頃、戸惑いました。だって燃えるゴミの日、プラスチックゴミの日、ビン・缶の日など、ゴミを出していい日が決まっているんですもん。

アイシャ:え!? スウェーデンはゴミを出せる日が決まっていないんですか。

ヤンニ:スウェーデンは、「リサイクルステーション」という家庭ゴミの回収拠点があります。住民が歩いて行ける距離にそれを設置することが国で決められているんです。リサイクルステーションでは、プラスチック容器、古紙、ガラスなどを回収してくれます。いつでも好きな時に出せるから便利でしたね。

アイシャ:さすがSDGs達成度上位のスウェーデンですね。それなら、収集車があちこち回収する手間や費用も抑えられますね。

ヤンニ:スウェーデンは、自然をこよなく愛する国民性。自然との距離が近いから環境先進国といわれるんだと思います。まだまだ課題は山積みですが。

アレックス:カリフォルニア州は、一般家庭からのゴミ排出量の半分をリサイクルすることが義務付けられています。それは素晴らしいことですが、住民はビン、缶、プラスチック、紙などすべてを一緒に捨てます。それを大きな施設で人の手によって分別しているから、無駄な税金がかかる。一人ひとりが分別意識を持てば、不要な施設だと思うのですが…。

ヤンニ:スウェーデンでは、ビンと缶はスーパーなどに返却しますよ。デポジット制で容器代が返ってくるんです。最近はペットボトルもデポジット制が導入されています。システムが整っているから、自然とリサイクルの習慣が身についているような気がします。

アイシャ:ガーナとの違いにビックリ。私が住んでいた頃だから10年前のことになりますが、ガーナでは家庭で出たゴミは、お金を払えば回収してくれますが、貧しい家庭はお金を払えないから、庭にドラム缶を設置して燃やす人が多かったんです。生ゴミだけでなく、プラスチックも燃やしていたので、大気汚染や悪臭を引き起こし、あきらかに環境破壊ですよね。でもいまだにお金が払えずに、自宅で燃やしている家庭も多いと聞きました。

ヒトミ:日本も数十年前はゴミを庭で燃やす人がいましたよね。社会のプラットフォームが整えば変わるはず。ガーナも一刻も早く、ゴミの処理システムが整うといいですね。

アレックス:アメリカに住んでいた時は、庭に生ゴミや落ち葉などを分解し、堆肥化させる「コンポスト」がありました。本当は日本でもやりたいけれど、マンションだとなかなかできなくて…。

ヒトミ:わかります。私がオーストラリアに留学した時も、多くの家庭がコンポストを取り入れていましたね。

バナナにビニール袋いる? 日本の過剰包装に物申す!

プラスチックは加工しやすく量産できることから、積極的に生産されてきたが、自然に分解されないというデメリットが。近年、大量のプラスチックが海に流れ出て、海を汚染している。鼻にストローが刺さったウミガメが発見された痛々しいニュースが記憶に新しい。

ヒトミ:大きな問題ですよね。日本でもやっと2年前にレジ袋の有料化がスタートして、それに伴い、マイバッグを持つ人が増えましたよね。

ヤンニ:それまではコンビニでガムを1個買っただけでご丁寧にビニール袋に入れてくれていて!

アレックス:僕が住んでいたニューメキシコ州は、公園もたくさんありますが、原油が採掘されるので、自然を守りたい人と、石油産業で稼ぎたい人と、環境問題に対する意見が真っ二つに分かれています。だから何か環境に関する制度ができても、なかなか浸透しない。難しい問題です。しかし日本人はモラルが高いから、スピーディに受け入れて、マイバッグも一気に定着しましたよね。

アイシャ:国によって全く違いますね。ガーナにはそもそもマイバッグという概念がありません。みんな市場で買い物するから大きなかごを持っています。もちろんビニール袋はありますが、いちいちそれに入れるのは面倒。大きなかごのほうがラクだし、便利だと思っている人が多い。

ヤンニ:すてきな習慣! 日本は、レジ袋は削減できたかもしれないけれど、いまだに透明なビニール袋で包んだ野菜やフルーツが売られていますよね。

アレックス:たしかにありますね。ズッキーニ、パプリカ、バナナとか。

ヒトミ:野菜はどうせ洗うし、過剰包装ですよね。衛生面のこともあり、なかなか言えないご時世ではありますが。

ヤンニ:ですが、バナナのビニール袋は必要なしに一票! だって皮は食べずに捨てるだけじゃないですか。

アイシャ:ほんとだ、私も一票!

ヒトミ:オーストラリアは、5年前でもストローは紙製だったし、卵のパックやお菓子の包装も紙製のものが多かった。街に飲料水の自動販売機はほとんどなく、代わりにマイボトルに水を補充できる無料の給水所がありました。ペットボトル入り飲料水の販売を禁止している自治体もあります。

アイシャ:進んでいますね!

ヒトミ:現在世界中で排出されているプラスチックゴミの多くは適切なゴミ処理がされておらず、実際ゴミ処理場にたどり着いたものの多くも完全にリサイクルするのは難しいといわれています。だからゴミをできるだけ出さないためのアクションが、もっと盛んになるといいなぁと思っています。

アイシャ:リサイクルも環境問題も知ることによって意識が変わってくるので、発信することも大切ですね。

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アイシャ・トチギさん[ガーナ] モデル。東京都出身。アフリカ・ガーナと日本のダブル。10~17歳までガーナで極貧生活を送る。高校時代より日本に戻り、大学に進学。「2019ミス・ユニバース・ジャパン」のトップ5に選ばれる。翌年再挑戦し、「2020ミス・ユニバース」日本代表に輝く。

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アレックス・Hさん[アメリカ] モデル、インターナショナルスクール講師。専攻は数学で、英語も担当。アメリカ・ニューメキシコ州出身で、2014年に日本での生活を始める。’19年に女性から男性へ性別変更したトランスジェンダー。趣味はダンスで、ヒップホップとジャズファンクが得意。

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ヒトミ・Rさん[オーストラリア] マーケティング会社経営者、ライター、モデル。海外のサステナブルブランドを中心に、マーケティングを行う。神奈川県出身、中東ヨルダンと日本のダブル。大学で地球環境関連を副専攻し、オーストラリアへの留学経験がある。動物・自然を守ることに興味を持つ。

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ヤンニ・オルソンさん[スウェーデン] 自然やアウトドアをこよなく愛し、日本各地を旅するレポーターとしてタレント活動をする傍ら、アウトドアや北欧の暮らしに関するコラムを執筆。英語、日本語、スウェーデン語を話せるトリリンガル。2015年から日本での活動をスタート。日本の温泉が大好き。

※『anan』2022年3月30日号より。イラスト・naohiga 文・鈴木恵美

(by anan編集部)