会社を辞めて、こうなった。【第22話】 バークレー心理学部へ。 全てゼロからの出発。

2015.8.27 — Page 1/3
ストーカー被害、ホームステイ先に突然家を追い出され、強盗に遭遇したうえにさらには大卒だから大学受験すらできないという事態が判明…と、にっちもさっちもいかない状態に陥っていました筆者・土居。そんな中、意外なところから救世主が!

長年勤めた出版社を辞めて、なんの保証もないまま単身アメリカに乗り込んだ女性が悩みながら一歩一歩前進して、異国の地で繰り広げる新鮮な毎日を赤裸々にレポートします。

 

【第22話】バークレー心理学部へ。全てゼロからの出発。

なかなか更新できずにスミマセン! そのあいだに何をしていたかと言うと、しかめっ面で心理学の教科書を読んでいました。どういうこと? 急展開で意味がわかりませんよね。当人である私もそうなんですから、そりゃそうです。ハイ、順序立てて説明しますね。

ギフトエコロジーツアーに参加する前の私といえば、ストーカー被害、ホームステイ先に突然家を追い出され、強盗に遭遇したうえにさらには大卒だから大学受験すらできないという事態が判明…と、にっちもさっちもいかない状態に陥っていました。大学受験が無理となると残るは大学院のみ。しかしつい2か月前にはドクター・スースの絵本で英語を勉強していた私がいきなり大学院受験?! 大学受験ですら未だ見込みゼロなのに、そりゃあ、あなた一体何年かかるというのですかというものです。とはいえど、ただ悩んでいるだけでも膨大な出費がかさむサンフランシスコ生活。お金と時間のことを考えると、私には立ち止まっているヒマなどありません。

会ったことの無い伯父夫婦がテキサスに!

にっちもさっちもいかないときは、なるべく空を見上げるようにしています。
にっちもさっちもいかないときは、なるべく空を見上げるようにしています。

そんななかに救世主が! 今まで会ったことがない伯父夫婦がテキサスで暮らしているというのです。実はアメリカに来て間もない頃、数々のトラブルに遭遇する私を慮った伯父から「受験勉強をするだけならうちでしては?」との有難い申し出がありました。でも私のなかで「彼らを頼ることは出来ない」という強い思いが。人に迷惑をかけてはいけないと育てられてきたし、さらには伯父と電話で話したところ、彼はバークレー大学院とハーバード大学院卒(専攻は量子力学! )、従姉妹は医師から転向して、ワシントンDCにあるアメリカ食品医薬品局に勤務する才媛だと言います。いっぽうで私は無職のバツイチで、アメリカ大学院受験など絶望的。英語力もいたらないうえに心理学の知識もゼロの、日本からやってきた野良犬です。「初対面でこれはキツイなぁ。きっと彼らをガッカリさせてしまうなぁ。両親にも申し訳ないなぁ…」と色んな気持ちとちっぽけなプライドが混ざり合い、頼ることが出来ずにいたんです。年齢だって10代や20代とは違いますし、ずいぶんと長い間ひとりで生きてきたから、人の好意に甘える方法も忘れてしまったのかもしれません。

けれども私のちっぽけなプライドを打ち砕くような試練が重なります。まず秋学期からサンフランシスコにあるシテイカレッジで学ぼうと履修登録の用意をしていたら、その3日前に強盗に遭遇。そしてルームメイトに貸したお金も返ってこないという事態が私の弱った心にトドメを刺しました。「どうして私が前に進もうとするとストップが入るんだろう…?」「もう一度考え直せということなのかな?」。汚い話、何を食べても下痢をしてしまうほど精神的に追い込まれてしまった私は(食事中の方、申し訳ありません…)、もう相手にどう見られるかを気にする余裕なんて無くなったのです。そこでギフトエコロジーツアーを終えた7月から伯父夫婦宅に身を寄せることに。ただし3か月間と期限を決めてその間に次に住む場所を含め、自分の目標を熟考することにしました。

私にとっては神々しすぎる存在のバークレー心理学部…。
私にとっては神々しすぎる存在のバークレー心理学部…。

そんなある日のこと、伯父からの連絡が。バークレー心理学部大学院で私にぴったりなプログラムを見つけたというのです。ちなみにバークレー心理学部大学院を受験するために必要なのは、GRE、TOEFLなどの学力テストのスコア、大学での成績証明書、志望エッセイ、推薦文などに加えて、基本的な心理学部専攻の授業を履修していることが望ましい。加えてバークレー心理学部が強く判断するのは、研究室でのリサーチ経験の有無だと言います。伯父が見つけたこのプログラムはバークレー心理学部大学院が独自に運営するもので、昨年スタート。3〜4学期で終了する教育過程ですが学位は取れず、あくまでも大学院へ受験するためのプログラムです(ただしプログラムを終えたからといって大学院に入学できる保証はありません)。内容は大学教授について研究室でのリサーチを行うことに重点をおいたもので、さらには心理学部専攻の授業を大学の学部生とともに履修します。週末も休みではなく、公開講義などがあれば聴講する必要があるなど、かなりハードそうな内容です。

このプログラムへの出願条件は、大卒であること(心理学部卒でなくてもOK。社会経験があると望ましい)。志望エッセイ、推薦文2通、大学の成績証明書、そしてTOEFLスコア90点以上。けれどもGREのスコアや研究室でのリサーチ経験、心理学部専攻の授業を履修している必要はありません。しかし伯父から連絡があったのは、なんと出願締め切り日の2週間前! それまでにTOEFLの受験日は無いうえに、2週間後には10日間のギフトエコロジーリサーチツアーに出てしまう…。さらにはついこの間まで絵本を読んでいた私がいきなり初TOEFL受験でスコア90点以上なんて絶対無理! そこで即バークレーに問い合わせたところ、担当ドクターが面談をしてくれると言います。「英語が出来ないのがバレて、落とされてしまわないように…」と言いたいことをすべて英語で書き出し、当日までに丸暗記。不安を抱えながらも待ち合わせ時間にドクターの部屋にいくと、そこには想像以上に若いイケメンが。べらべらとカリキュラムについて説明するドクターの会話スピードについていくのが必死で、言いたいことなどほぼ言えませんでした。しかし最後の最後にどさくさに紛れて「えーっと、実はTOEFLを受けたことがなくて。ちょっと自信が無いんですけど、90点以上って必須なんですよね?」と試しに聞いてみたら、「これは大学院のプログラムなので、NO EXCEPTION!(例外ナシ)」とキッパリ。ガーン! 若くてイケメンでフレンドリーなのに、そこ冷たいのね!!(そりゃそうだ)。そこで出願締切日までにTOEFL試験日が無いこと、6月から10日間のツアーに出向くことを相談すると、「スコアの提出期限は待ってあげましょう。ただしツアーから帰ったら即受験すること」と言われ、うなだれながら帰路へついたのでした。そこから私の無謀な2週間がスタート!

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