本当は猫さまとタヌキ?…飼い主が思わず二度見した子猫さまたちの驚きの姿とは

取材、文・Manabu Matsunaga — 2024.1.6
フランス在住のカメラマン、松永学さんによる、フランスの猫さま紹介! 第197回目は親子のトラ猫のココ(Koko)さまとミラベル(Mirabelle)さま。

仲良しな母娘猫さまたちの物語

【フレンチ猫さま】vol.197
猫さまの話をもっと聞かせて!
ココさまは推定4歳ミラベルさまは3歳、ともに女性猫さまです。


トラ猫の親子


<ココさまが語ります>
私の飼い主はパリ1区の花屋で働いています。私たちの住まいはパリ郊外の古い一軒家風の、日当たりの良いアパルトマンです。庭がありますが、私たちは外に出ません。道路が近く、飛び出し事故の心配があるので気をつけています。
トラ猫の親子

朝の始まりは7時頃のごはんから。二度寝をした後、ひなたぼっこをし、野鳥観察、ちょっと母娘でプロレスごっこをして走り回って、また昼寝をしてのんびりと飼い主が帰るのを待ちます。
ちょこんと座っているトラ猫

飼い主が帰ってきた時には2匹揃って「ニャァ! ニャァニャ!(おかえりー!ごはん早く!)」とアツい出迎えをします。たとえ先にごはんをもらっていても「わたしたち、まだごはん食べてないわよね~! ミラちゃん?」「うんまだ食べてないね、ママ」とふたりで演技をします。飼い主が「あなたたちはもう食べたんでしょ?」と聞くと、「まだ! 食べて…ない…。えっと…」とふたりで顔を見合わせて、ゴニョゴニョと返事の歯切れが悪くなって嘘がバレてしまいます。
トラ猫

夕飯を食べた後はちょっとハッスルして走り回って、シャーシャーとふたりで仲良く喧嘩して、再びまったりして、飼い主が寝る前に夜食をちょっと食べます。その後は朝まで熟睡? もしくは特に音を立てることもなく飼い主の枕元でおとなしくしています。食事は『YARRAH』のカリカリと蒸留水が中心です。以前『YARRAH』のパテももらっていた時もありますが、いつもと同じカリカリが大好きです。おやつはありませんが、強いて言うなら季節限定で蜂でしょうか。夏などに開け放った窓から蜂が入ってくると母娘揃って張り切って飛び跳ねて、蜂を捕まえてムシャムシャと食べます。
トラ猫の親子

陽の当たるところを上手に見つけて移動しますが、サロンの窓際に2脚並べたスツールの上でのんびりと過ごすことが多いです。それから古い木の脚立の上も大好きです。冬になり寒くなってきてからは窓辺に置いたバスケットの中に敷いたムートンもお気に入りです。おもちゃは胡桃の殻、ワインのコルク、松ぼっくり、姫りんごなどを転がしてよく遊びます。ふたりともマイペースに気ままに遊んでいますが、ときどき、なでしこジャパン顔負け? の見事なドリブル&パスを披露します。
<飼い主から見たココさまとミラベルさまとは>
動物のいない家庭で育ったので、犬や猫は気になるけどちょっと怖い存在でした。子どもの頃、父と一緒に親戚の家へ行った時、猫を膝に乗せて嬉しそうに猫を撫でている父の姿が印象的で、今思えば猫好きの血は既に引き継いでいたのかもしれません。
5年前、結婚してフランスで暮らすようになってから夫が飼っていた先代猫Holy(雌・当時推定12歳)との生活が始まり、それからすっかり猫好きになりました。しかし、約1年後に病気で亡くなってしまったので、私がHolyと一緒に過ごせた時間は短いものでした。特に、後半の半年は何よりもHolyファーストで濃厚な介護の日々でした。大変でしたが、とてもとても愛おしくて今でも私たち夫婦にとって特別な猫です。
トラ猫の親子

今回登場した2匹は夫の知り合いのお宅に住み着いたニャンズ母子。ココは夫の知り合いの家に突然住み着き、そのお宅のムッシュに名付けられました。直後、ココは子猫を2匹産みました。ムッシュは当時すでにご病気で寝たきりだったのですが、ココにベッドを譲りご自分は床で眠り、ココが無事に子猫を産んだ数日後にお亡くなりになりました。ムッシュはココのことをとてもかわいがっていて、病床でも「ココがここにいるから大丈夫」と言い、子猫が生まれた時には「なんと素晴らしい! ハッピーだね!」と、とても喜ばれていたそうです。ムッシュが亡くなられた時に夫の友達から「引き取り手を探している子猫が2匹(雄と雌)いるけど飼わない?」と連絡があり、家族として迎えることを決めました。Holyを舌の病気で亡くし、悲しみに明け暮れていたちょうど1年後のことでした。
トラ猫

先代猫は夫が一人暮らしをしていた頃、12月の寒い日にひょっこり家に入ってきて住み着いた猫だったこともあり、夫は「また猫がやって来るのを待つ」と言っていたので、ご縁を感じました。ところがその後、結局母猫も行き先がなくて困っているから「ついでにお母さんも一緒にどう?」という話が出たのです。とはいえ、さすがに我が家で3匹飼うことは無理なので、子猫たちが生後8週間経つまで待って、弟猫は亡くなったムッシュと親しかった友人家族の元へ。そして我が家には母娘猫が来ることになりました。
花に寄り添うトラ猫

ミラベルは8月生まれで、いろいろな呼びかたをされていたのですが、丁度我が家に来ることが決まった日に、夫が植えていたミラベルの種からひょっこりと芽が出ていたので、ひらめきでつけました。日本でいえば、「すももちゃん」でしょうか? ココは推定4歳で子猫を産んだのですが、実は1歳ぐらいだったのでは? と獣医に言われました。ココは女将さん気質でお客さんが来ると、真っ先に愛想良く挨拶します。抱っこされるのは好きではありませんが、名前を呼ぶとスタスタとすぐにやってきて撫でて~と上手に甘えます。愛情深くとても優しい子ですが、娘の躾には厳しく、飼い主の目覚まし係としての責任感にも溢れています。


イスの上で日向ぼっこをするトラ猫たち

ミラベルはママが大好き。生後1年近く経っても、いつまでも隙あらばママのおっぱいを求め、ココに威嚇されていたほどの甘えん坊で食いしん坊。元々骨太で、今ではもうすっかりココより体が大きくなりましたが、親離れできずにいつでもココにぴったりとくっついています。とても穏やかで、噛んだり爪を立てる事は全くせず、綺麗好きでよく毛繕いをしています。怖がりで人見知りです。興奮した時の目を疑いたくなるような尻尾の太さにミラベルは狸だったのでは? という疑惑も(笑)。
ココの特技はピアノ! 音楽家の夫はココの奏でた旋律をもとにコラボ曲を作ったこともあります。エリック・サティ風なピアノを弾くのが得意だった先代猫からピアノのセンスを引き継いでいるようです。
ミラベルの特技はカリカリの早食い! 生まれながらの食いしん坊で、赤ちゃんの頃から弟猫よりちょっと大きかったミラベルはいつでも食欲旺盛です。掃除機の如くあっという間にお皿に入れたカリカリを食べてしまって、ココのお皿からもちゃっかりいただいちゃうので、ココの食べるペースを見ながらミラには一粒一粒手であげます。
トラ猫

時々見せる不細工な顔も全てかわいいのですが、ふたりが仲良くぴったりとくっついてスヤスヤと安心して寝ている様子を見るのが愛おしくて一番かわいいなぁと感じます。私のことは、ごはん係、世話係、時にはクッションと思っているようです。
ココ&ミラが我が家で暮らすようになって1か月程経った頃、夜中に突然ココが「ニャァニャァ! ニャァニャァ!!」と私たちに強く何か訴えてきました。驚いて飛び起き、様子を見ていたら、どうやらミラベルの姿がなく、「すみませーん! ミラちゃんいないんですけど! ちょっと! ミラちゃんを探してください!!」と言っているようだったので、心配してウロウロするココと一緒にあちらこちら探したら、小さなミラベルがひょっこりとクローゼットの中から出てきて、拍子抜けして大笑いしました。小さな体ながらなんと大きな存在感なのでしょう。純粋で人間よりはるかに賢く、まさにアガペーの愛(無償無限の愛)のありかたを実感させてくれます。トラネコと暮らすようになってから「私も猫になりたい」と言って、私がトラ柄の服を着るようになった事が面白い、と夫談。
私にとっては猫の存在そのものが癒し。どんなに疲れていても猫を撫でているだけで、すーっと疲労感を溶かしてくれる魔法使いのようです。そして「子は鎹」と言いますが、猫もまさに夫婦の鎹です。
トラ猫の親子

先代猫Holyは半年間の壮絶な介護の末、私たちが留守をしている間にそっと眠るように亡くなっていました。それはまさに命の炎が燃え尽きたような静かなお別れでした。悲しみはとても深くすっぽりと心に穴が空いたようでしたが、それ以上に「Holyありがとう」の感謝の気持ちでいっぱいでした。ココ&ミラともいずれはお別れをする日を迎えることは避けられない事ですが、彼女たちが命を全うするまで穏やかに安心して過ごせるように一緒にいて、その時が来たらしっかり看取ってあげたいです。猫たちを残して私たちが先に逝くわけにはいかないですね。
ーーとても仲良しなココさまとミラベルさまの毎日は活気があって、愛情たっぷりの飼い主と心地よい生活をしています。いったんは離れ離れになるかもしれなかった母娘でしたが、ずっと一緒にいられてとても幸せそうでした。
著者情報

松永学
猫さま好きフォトグラファー。雑誌、webなど多くの媒体で活躍。猫歴、実家に通っていた野良を含めると10匹以上、パリには2匹の猫さまを連れて移住、現在は保護猫3匹と暮らす。どこへ行っても通りで見かけた猫さまに挨拶は忘れません!