サザエさん症候群はアラサー女子にも牙を向く。
仕事に美容に恋愛に、女の人生ってけっこー大変! 私はこのままでいいのかな? 幸せになれるかな? そんなモヤっとした悩みを浄化し、毎日がもっと楽しくなる痛快エッセイを、毎週土曜日お届けします。
彼氏もおらず予定もない女子は、日曜の夕方「サザエさん」を見ながら不安になり、結婚熱を高めはじめる。寂しさ。不安。焦り。このモヤモヤは本当に結婚したら消えるのだろうか? この勢いで無難な結婚をしていいものか? バツイチ女子が自己検証から導き出した答えとは――。
【恋愛はしたいけれど1mmも傷つかずに生きたい】vol.30
「日曜夕方ってさ、どうしたらいいかわからなくなる」
そう話す友人A子は、深刻そうな顔でこぼす。
翌日の月曜がリアルに感じられる日曜夕方。アニメ「サザエさん」で現実に引きもどされるだけでなく、一人で一日過ごしきってしまった後悔が、どっと焦りとなって襲うのだ。そうして結婚したい気持ちは最高潮になるけれど、失敗は絶対したくない!
だから今も昔も、ケッコンという決断には敏感だし、慎重だ。
昔はなるべく条件のいい「三高男子(高身長・高学歴・高収入)をと言われていたらしいけど、最近はもっぱら3平男子(平均的な年収・平凡な外見・平穏な性格)がもてはやされる時代らしい。ただし、そんな絶好の三平男子を前にしても、やっぱり悩むのが女心ってもんで、かくいう友人A子も、結婚を考えイイ感じの平たい男に目をつけていた。
「やっぱり惹かれないんだよね…」
幸せなはずのA子の顔は、浮かない。
「でも、大手企業勤めで、安定した感じなんでしょ?」
「そうなの、そうなんだけど、改めて付き合うとか結婚を考えると、全然ときめかないんだよね」
贅沢な悩みではあるけれど、わかるぅぅぅ! みんな三平男子がいいとは言いつつも、いざ目の前に「どうぞ!」と出されると、とてつもなく退屈なモノに見えるって言っている。惚れっぽい自分としては、一発ヤったら気持ちも変わるとは思うものの、正しく失敗なく進もうとするオンナ達に、そんな危険な提案は御法度である。
「しかも彼って、もう結婚するための貯金のことも、考えてるんだよ」
あらまあ! 現実的!
「マンション買いたいとか言ってたし」
おやまあ! 計画的!
「いいじゃん、いいじゃん。とりあえず付き合ってから考えてみたら?」
と、ひとまずヤイヤイはやし立てはしたけれど、安定平凡な条件チョイスは実は反対。だって安定平凡といえば、自分のニガ〜い結婚と離婚の経験を、思い出さずにはいられないからだ。

弱って独身から逃げた、私の結婚話
結婚前の私は、一声でいうと弱って焦っていた。当時はダメ男を渡り歩き、「セックスするのはいいんだけど、付き合う気はない」とキレイさっぱりセフレ認定されたり、恥ずかしい病をわずらったりと、ボッコボコに傷つき泣かされ、さらに好きだったはずの仕事が多忙を極め、激やせして毛がごっそり抜けたりと、マジでヤバイ状態が続いていた。
そんなとき頭を支配していたことは、たった1つ。
「ああ、早く結婚したい」
結婚して、もっと安定した仕事につきたい。
結婚して、もっと穏やかな毎日をすごしたい。
結婚して、もっとあたたかい家庭を築きたい。
「私、自分のためだけに稼いで、お金を使う生活に飽きた!」
なんて、夜遊びと仕事が大好きだったくせに、しゃあしゃあと恋愛ゲームに飽きたフリをする。見たことも触れたこともない安定平凡なあたたかい生活を「私の理想」と決めつけ、そこに強く憧れるようになっていった。
そうして出会ったのが、当時の旦那サマである。それはそれは素晴らしく安定した男性で、イイ男であった。付き合って少しして、向こうも結婚する気はないわけじゃあないとわかったら、するよね、当然。具体的な試算。
「大企業、年収、身長、問題なし! むしろ素晴らしい! 70点」
「結婚後は共働きでも専業主婦でも自由でいい! プラス10点」
「同居の可能性なし! プラス10点」
安定という物差しで彼をみたとき、素晴らしくパーフェクトであった。ちなみに私の母親からは、「どうして彼のような人が、アンタと結婚するの?」と言われた。まったく、娘をもっと信用しろってもんだ。なんてね。母の見立ては正しかったみたい。
最後に彼のほうが年上だったので、介護することになっても大丈夫か考えてみたけれど、そんな50年くらい先の未来がリアルに想像できるはずもなく、
「私って、シモの世話とかあんま抵抗ないし(したことはない)大丈夫っしょ」と、ノリでOK判定。プラス10点!
とにかく「これ以上傷つきたくない」と、弱りきった心身と焦りが、ビシバシと独身からの撤退命令を出してくる。今結婚したら、もれなく周りからすると1番乗りだし、会社も辞められる〜なんて薄っぺらいプライドを満たすため、私は結婚を決めた。というか、仕事も恋愛も第一線で頑張ることから、逃げたのだ。