志村 昌美

竹内涼真「北川景子さんに会った人はみんな好きになる」初共演で感じた思い

2023.10.18
これまでに数多くのベストセラー小説を生み出してきた人気作家の湊かなえさんが、2019年に作家生活10周年の節目として書き下ろしたミステリー長編「落日」。湊さんの”令和最高傑作”とも名高い本作の映像化は、北川景子さんや竹内涼真さんをはじめとする豪華キャスト陣の熱量高い演技に“心震える究極の一作”と話題で、現在WOWOWオンデマンドで全話配信中です。そこで、物語のカギを握る重要な役どころを演じたこちらの方にお話をうかがってきました。

竹内涼真さん

【映画、ときどき私】 vol. 607

新進気鋭の映画監督と新人脚本家が15年前に小さな町で起きた一家殺害事件の真相に迫っていく本作で、事件の犯人である立石力輝斗を演じている竹内さん。30歳を迎えて最初の作品で、自身初となる死刑囚役に挑んでいます。今回は、役作りで意識したことや共演者との忘れられない瞬間、そして人生のヒントを見つける方法などについて語っていただきました。

―以前からこういった役を演じてみたいと思われていたそうですが、お話があったときはどのようなお気持ちでしたか?

竹内さん 配役というのは年齢や見た目によって決まってくるところもあると思いますが、実は昔からこういう役にも挑戦したいと思っていました。でも、僕にそういうイメージがなかったのか、挑戦する機会がなかったんですよ。そんななかで、30歳というタイミングでこういった薄暗い陰のある役に巡り合えて、自分に任せていただけるんだということが純粋にうれしかったです。

―ご自身でこういう役ができると感じていらっしゃったのはなぜですか?

竹内さん 誰にでも陰と陽の部分があると思いますが、そういう意味で感覚的にできるんじゃないかなというのがありました。それに、人が隠したいと思うところを表現するのが俳優の仕事だと思うので。あとは、自分のなかでもいまだったら陰の部分を出せるタイミングだったのかもしれないです。

妹がいなければ、違う力輝斗になっていたかもしれない

―今回は非常に難しい役どころだったと思いますが、どのような準備をして挑まれたのでしょうか。

竹内さん まずは、台本をすごく読み込みました。この作品において、ミステリーの肝となるのは、彼がなぜ死刑を選んだのかということ。ただの殺人鬼ではないので、そのあたりは自分のなかで筋を通しておきたいと考えました。あとは、服装や髪型だけでなく、佇まいにいたるまでいろんなアイデアを出し合いながら作り上げました。

―確執のある劇中の兄妹とは違って、実際の竹内さんは妹さんと仲が良いイメージですが、同じ兄としての立場や感情が生かされたところもあったのではないかなと。

竹内さん 確かに、自分にも妹がいることがどこかでリンクしていた部分はあったかもしれません。でも、意識的にしていたことではないので自分ではわからないですが、もし僕に妹がいなかったら違う力輝斗になっていた可能性はあると思います。

北川さんとは、本気で心のぶつかり合いができた

―事件の真相を追う映画監督役を演じられた北川景子さんとのクライマックスシーンは、本作において非常に大きな見どころでしたが、現場の様子について教えてください。

竹内さん 実は、北川さんとはそのシーンを撮るときに初めてお会いしました。でも、お互いに本気で心のぶつかり合いができたので楽しかったですし、感慨深かったです。短い時間ではありましたが、しっかりとコミュニケーションができましたし、全力を出せたと思います。

―相手が北川さんだからこそ刺激を受けたり、引き出されたりした部分もあったのかもしれませんね。

竹内さん 北川さんはとても気さくで、自分のパーソナルスペースをオープンにしてくださる方なので、会った人はみんな好きになりますよ。相手を緊張させずに、フレンドリーに入り込んできてくださるので、そういうのって大事だなと。だからこそ、長年いろんな作品に出られたり、たくさん主演を務めたりされているんだろうなと改めて感じました。

あと印象に残っているのは、北川さんの肌がキレイすぎてびっくりしたこと。ピカピカに光っていたので、「すっごいキレイだな」と思いながら見ていました(笑)。

大事なのは、つねにアンテナを敏感に張っておくこと

―確かに、画面越しでもその美しさは伝わってきました。今回ご一緒された内田英治監督とは3年振りとなりますが、監督は竹内さんの成長ぶりに驚いたとか。30歳になったこともあるかもしれませんが、ご自身で振り返ってみても変化を感じる部分はありますか?

竹内さん いろんなことに対する考え方は、だいぶ変わりましたね。といっても、別に30歳になったからというわけではなく、自分としては自然と変わっていくタイミングに従っているだけという感覚です。でも、20代のときに比べたら生活も、食事も、朝起きる時間も、物事への取り組み方もまったく違いますね。すべてにおいて、意識する次元が変わったんだと思います。

―年齢や経験を重ねていくなかでご自分なりに変わっていったのか、それとも周りからの影響ですか?

竹内さん 自分で気づくこともあるし、相談した人からの言葉に救われることもあるので、両方ですね。人生のヒントはいつどこにあるかわからないので、つねにアンテナを敏感に張っておくのは大事だなと感じています。すべて自分の捉え方次第ですからね。あとは、一生懸命だけでなく真面目にやっていかないと成功しないと思うので、求める真面目さのレベルも変わってきました。

かっこつけているわけじゃないんですけど、「周りを変えたかったら自分が変わるしかない」と考えています。というのも、僕は周りが自分の鏡だと思って生きているので、物事がうまくいかないときは、自分に問題があるんだなと思うほうです。そこはつねに意識しているかもしれないですね。

ネガティブでいる時間はもったいない

―過去には自分のネガティブ思考がうまくいかない原因だと考えて、意識的にポジティブになる癖をつけてご自身を変えたこともあったとか。

竹内さん 変わるまでに1年くらいかかりましたが、そうしないと人生がいい方向にいかないことに気がついたんです。時間を大切にしようと思ったら、ネガティブになってモジモジしている時間はもったいない。自分が幸せになれる物事の捉え方をしていかないと、自分が行きたい方向に最短距離では行けませんから。

そのためには、普段からだらけていてはダメなので、ポジティブな思考にするためにも自分をいい状態にすることが大事だと考えるようになりました。そこから起きる時間や生活も変わっていったんだと思います。

―そんななかで、竹内さんを癒してくれる時間といえば?

竹内さん それは親友と夜中までいろんな話をしたり、家族や友達とおいしい物を食べたりしているときです。ほかにいろんな趣味もありますが、コーヒーにこだわったりと、好きなことはとことん追求するタイプですね。オフのときはそういうところに時間を使ってバランスを取るようにしています。

自分で自分の可能性を決めつけてはいけない

―いま思い描いている今後の夢についても、お聞かせください。

竹内さん 目標というのは、大きいのも小さいのもどちらも大事ですが、つねに自分の心とカラダと相談しながら、上に向かって設定しています。最近は配信によって世界各国で視聴できる時代なので、世界で戦える作品に参加していきたいというのが、いまは自分のモチベーションになっています。

―以前からマーベル作品の大ファンであることも公言されているので、海外を目指す可能性もあるのではないでしょうか。

竹内さん 海外に行ってみたいというよりも、自分が好きな作品を作っている人たちと仕事をしてみたいとか、日本とは規模が違う現場で世界を見てみたいという気持ちはあります。もちろん、日本にも良さはありますが、それだけでなく各国のいいものをたくさん自分のなかに取り入れていきたいです。

―それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。

竹内さん まず大事なのは、自分の可能性を自分で決めつけないこと。僕もまだ30代なので偉そうなことは言えませんが、“成功のヒント”みたいなものは意外と身の周りに転がっていて、それをキャッチできる状態かどうかが大切な気がしています。いまは何でもすぐ調べられる便利な時代でもあるので、なりたい自分でいたいと思うことは、誰にでもできることだと思っています。

インタビューを終えてみて…。

本作では、いままでのイメージを打ち壊すような新たな一面を見せている竹内さん。映像からだけでなく、言葉や表情からもこれまで以上に高い意識で役と向き合っているのが伝わってきました。俳優としても、人としても魅力を増していく竹内さんがどのような30代を過ごされるのか楽しみなところです。

魂の叫びに、胸が締めつけられる!

事件の裏に隠された真相とそれぞれの思いが交錯し、観る者をどんどんと引き込んでいく衝撃のミステリー。心を揺さぶる真実が明かされたとき、そこに差し込む“希望の光”を誰もが感じずにはいられないはずです。


取材、文・志村昌美
スタイリスト・徳永貴士(SOT) ヘアメイク・佐藤友勝 カメラマン・福岡諒祠(GEKKO)

ストーリー

初監督作品で国際的な評価を得た新進気鋭の映画監督・長谷部香(北川景子)。注目を集めるなか、新人脚本家の甲斐真尋(吉岡里帆)に映画の脚本の相談を持ちかける。物語の基となるのは、真尋の生まれ故郷でもある笹塚町で15年前に起きた“笹塚町一家殺害事件”。引きこもりの男性・立石力輝斗(竹内涼真)が高校生の妹・沙良(久保史緒里/乃木坂46)を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた事件だった。

真尋の師である人気脚本家の大畠凜子(黒木瞳)は、真尋の背中を押すいっぽうでこの事件に興味を示し始める。この事件を追うことは、香と真尋それぞれが抱える“ある過去”とも向き合わなければならないことを意味していた。事件を調べていくうちに、2人は衝撃の真実にたどり着くことに…。

引き込まれる予告編はこちら!

作品情報

「連続ドラマW 湊かなえ『落日』」
WOWOWオンデマンドにて全4話配信中
https://www.wowow.co.jp/drama/original/rakujitsu/