田代 わこ

いとうせいこう&みうらじゅん発案の人気”おくすり手帳”も!オリジナルグッズも見逃せない仏像展

2023.10.8
東京・上野の東京国立博物館の本館 特別5室で、特別展「京都・南山城の仏像」が開かれています。本展で仏像大使を務めているのは、イラストレーターのみうらじゅんさんと作家・クリエイターのいとうせいこうさん。大人気の展覧会オリジナルグッズを開発したお二人に、グッズ誕生話などを語っていただきました!

仏像大使は、みうらじゅんさんといとうせいこうさん!

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左:いとうせいこうさん、右:みうらじゅんさん

【女子的アートナビ】vol. 313

特別展「京都・南山城の仏像」では、京都最南部に位置する南山城(みなみやましろ)地域にある浄瑠璃寺(じょうるりじ)や海住山寺(かいじゅうせんじ)、禅定寺(ぜんじょうじ)などに伝わるさまざまな仏像を紹介。

平安時代につくられた国宝の《阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち)》や重要文化財の《十一面観音菩薩立像》など、平安から鎌倉時代までの貴重な名作仏像ばかりが集められています。

本展で仏像大使を務めるのは、みうらじゅんさんといとうせいこうさん。展覧会のオリジナルグッズも開発されたお二人に、グッズ制作の秘話などを語っていただきました!

Tシャツに込められた気持ちは…

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――今回、5つのグッズを開発されたとのことで、まずは神々しい阿弥陀如来坐像の絵がプリントされたTシャツについて教えてください。

みうらさん これは、僕が最初のグッズ企画会議のとき持ち込んだ絵。頼まれてもいないのに、描いてきたものです。先に開催された奈良国立博物館での展覧会でも、東京のほうでも好評と聞いていますよ(笑)。

いとうさん そう、はやっているみたいだよね、みうらさんの絵。男性でも女性でも着やすいデザインだし、みうらさんと僕の後ろ姿も入っているので、宗教色だけにならずいい感じで、ばっちりでしたね。

みうらさん 絵の左下、“見仏”してるのがいとうさんの後ろ姿だとわかったうえで着ると、また気持ちが上がるんじゃないかな?

いとうさん え!?(笑)。 どういうこと? 

みうらさん つまり、Tシャツを着ている人々のお腹のあたりにいとうさんがいるわけで、効力として胃腸を守ってくれてるわけで(笑)。

いとうさん なるほど(笑)。ある種のおめでたさと、みなさんの健康を祈るという気持ちが入ったTシャツなんですね。

爆売れ「おくすり手帳」誕生秘話

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――薬師如来坐像が表紙にデザインされたおくすり手帳も、奈良博のときに数千冊も売れたそうで、ネットでも話題になっていました。この企画は、どんなきっかけで生まれたのですか?

いとうさん 二人でやっている自主ラジオ番組の『ラジオご歓談!』で、あるとき、おくすり手帳の話になったんだよね。この「おくすり手帳」という名前自体が、妙齢の自分たちにはこそばゆい感じがした、とかそんな話になって。

みうらさん そうそう。既製のものはいろいろあるけど、僕らが使えそうなグッとくるおくすり手帳がない。ちょうど展覧会にも薬師如来の仏像がお出ましだから、そりゃ薬師如来のおくすり手帳が欲しいよ、とね。

いとうさん 薬師如来は、手に薬壺を持っていて、そのなかに誰でも治せる万能の薬が入っている、というのが昔から伝わる信仰なんですよ。それで、ラジオでおくすり手帳の話をしたあと、薬剤師の人がメールをくれて、おくすり手帳のデザインに決まりはない、と教えてくれたんですよ。

みうらさん だってね。だったら自由につくれると思ったんだよね。薬剤師さんも納得のデザインだと自負しています(笑)。

いとうさん  誰でも使うものだから。家族みんなが必要ですよね。

みうらさん これなら、“見仏”の旅にも持っていけますね。急に病気になったとき、便利ですよ。朱印帳代わりにはなりませんが、このお弁当についているシール、ちょっとかわいいな、と思ったら、貼ってもいいですよね、思い出として。

いとうさん 思い出はやめてください(笑)。それは、高校生の女の子がやるようなものでしょ。これは薬剤師さんが見るものだから、違うシールが貼ってあったら困りますよ。

みうらさん 承知しました(笑)。お薬のシールだけにしてください。

いとうさん でも、本当におくすり手帳は大好評だね。今後、おくすり手帳のマーケットを変える可能性がある商品でしたよね。

みうらさん 僕ら、仏像大使ではなく、結局グッズ大使ですからね(笑)。

牛頭天王キャップのこだわりポイント

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――牛頭天王のワッペンがついたキャップも、人気があるそうですね。

いとうさん 当初から、牛頭天王を使いたいと思っていて。牛頭は、あやしい力を持つので、ぜひキャップにつけたいという想いが強くあったし、みうらさんはGOZUという文字を入れたいというこだわりがあったよね。

みうらさん そう、ヘビーメタル感を入れたかったもんで(笑)。そもそも、キャップだけでも高いですから。お得だと思いますね、GOZUキャップ。

いとうさん 高いから、そんなに売れないと思っていたら、奈良では売り切れていたんだよね。

みうらさん だってね。世の中、変わりましたね(笑)。ずいぶん前から、展覧会のグッズ企画を出してきましたけどね。僕ら下町ロケットはさ。

いとうさん 下町ロケット!?(笑)

みうらさん いやいや、仏像ロケットですか(笑)。なかなかヒットは飛ばせなかったけど、今回は、こんな宣伝までさせてもらって本当、ありがたいですね。

アクリルスタンドの使い方は…

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――不動明王立像のアクリルスタンドも、奈良では一時完売になったそうですね。

いとうさん アクリルスタンドの時代がきていますね。この不動明王は、神童寺にあるもので、僕の“推し仏”のひとつです。不動明王は、邪悪なものに打ち勝つ炎を後ろに背負っています。このお寺の不動は、一般的なスタイルと少し異なり、童子のように膝小僧を出していて、昔、そのあたりを走っていた村の小僧のような雰囲気があるのです。これがアクリルスタンドになって、売れているのがうれしいですね。

みうらさん このアクリルスタンド、おしゃれなスイーツと一緒に写真を撮るといいですよ。僕、この前、はじめておしゃれなカキ氷を食べて、それがメロン1個まるごと入っているような感じで、まるで仏様の螺髪(らほつ)みたな状態でメロンが載っていて。このアクリルスタンドと一緒に写真を撮ってインスタに乗せるといいなぁって思いました(笑)。あとは、手のひらに収まるちょうどいい大きさだから、JRの改札もこれをピッとすれば通れるんじゃないかな?

いとうさん Suicaじゃないですから(笑)。

十一面観音の見分け方は…

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――定番グッズの光仏シリーズ、今回は十一面観音が光る仏様になっています。

いとうさん 光仏シリーズは、電気を消すと仏の姿が浮かび上がるのですが、今回はペンになっています。光る十一面観音が導いてくれます。

みうらさん 十一面観音は、頭に十の面がついていて、手には水瓶(すいびょう)を持っておられます。もし、街で水瓶を持っている人を見かけたら、「あっ、十一面観音だ!」と思いがちですが、違いますから(笑)。

いとうさん それは、ただ水瓶を持っている人なんですね(笑)。

みうらさん ですね。

いとうさん じゃあ、もし、その人の頭上に十のお面がついていたら?

みうらさん それは、確実に十一面観音です。現世にお出ましになられたということになります。

いとうさん 救いがあるということですね(笑)。

とにかく見てください!

――最後に、仏像初心者の人に向けて、この展覧会の楽しみ方を教えていただけますか。

いとうさん 初心者の方は、仏像について、いろいろ知らなければとプレッシャーに感じるかもしれませんが、それは取り払って、とにかく見てください。仏像って、訳がわからないんですよ。なんで頭の上にたくさん顔があるんだろう、なんで手が千本もあるんだろうって、そのことにいちいち驚けばいいと思うのです。驚いてショックを受けたあと、本を読んでみてもいいし、千本もある手がすごいなと悪夢を見てもいい。美術として驚き続けることもできますし、信仰の気持ちがあってもいい。美術と信仰、片方でも両方でもいいんです。

みうらさん この展覧会のメインは、浄瑠璃寺の阿弥陀如来坐像です。今回、その仏像の修復が終わったことを記念して展覧会が開かれています。東京には一体が展示されていますが、実際現地に行くと、九体の阿弥陀如来が横並びにずらりと、ロイヤルストレートフラッシュ状態におられます。だから、この展覧会を見られた方は、ぜひ浄瑠璃寺に足を運んで、お堂ごと体感してほしいですね。おすすめです。

――ありがとうございました!

仏像大使は音声ガイドにもゲスト出演!

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仏友同士であるお二人のトーク、いかがでしたか。難しそうな仏像の話も、お二人が語ると身近で親しみやすく感じられます。本展の音声ガイドでも、みうらさんといとうさんの仏像トークを楽しめます。(音声ガイドナビゲーターは、俳優・タレントの横山由依さんです!)ぜひ、音声ガイドを聴きながら展覧会を楽しみ、見終わったあとはオリジナルグッズもご覧になってみてください。

Information

会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5室
開館時間:9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
※11月3日(金・祝)、4日(土)、10日(金)、11日(土)は19時00分時まで
休館日:月曜日、10月10日(火)
※10月9日(月・祝)は開館
観覧料:一般 ¥1,500、大学生 ¥800、高校生 ¥500
※本展は事前予約不要です

公式HP:https://yamashiro-tokyo.exhn.jp/