美しくて怖くてクサい…! 謎すぎる植物たちの展覧会
どんな展覧会?
【女子的アートナビ】vol. 218
特別展『植物 地球を支える仲間たち』では、地球上にある多種多様な植物を、標本や模型、映像、インスタレーションなどで展示。最新の科学研究によって明らかにされた驚きの生態も紹介され、植物の魅力を存分に楽しめる展覧会です。
植物たちにも五感がある!
第1章「植物という生き方」では、植物のアクティブな生き方を紹介。
植物は30億年以上前、光合成という能力を手に入れたことで自ら動く必要がなくなり、晴れの日も雨の日も同じ場所で生活するスタイルに変化。移動はしませんが、その場にいながら成長して花粉を飛ばしたり、虫や動物に食べられないようトゲなどで身を守ったりと、アクティブな毎日を送っています。
また、植物には人間と同じように視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があり、常に変化する周囲の環境を感じ取っています。
例えば、光を感じる視覚は光合成をする植物にとって一番大切なもの。でも、人間のように眼という特定の器官を使うのではなく、全身の細胞で光の方向を感知しています。
同展監修者の三村徹郎さんは、最新の研究について、図録のなかで次のように解説しています。
「最近では、昆虫などに襲撃されていることをその天敵である他の昆虫や、あるいは他の植物に知らせることもできるらしいということがわかってきた」
植物が自分の仲間や虫たちとコミュニケーションをとるとき、音声ではなく身体から発する化学物質を使って働きかけているようです。どんな対話をしているのか、想像をかきたてられます。
巨大なクサい花が登場!
第2章「地球にはどんな植物が存在しているか?」では、巨大、極小、長生きなどさまざまな特徴をもった植物を展示。
ここで一番目を引くのが、ショクダイオオコンニャクの実物大模型です。インドネシア・スマトラ島に自生し、コンニャクの仲間であるこの植物は、世界最大級の「花」が咲くことで知られています。(この「花」は、正確には小さな花が集まった「花序」です)
ショクダイオオコンニャクは「世界でもっとも醜い花」とも呼ばれています。その理由は、開花時に強烈な異臭を放つから。腐った肉のような、ゴミのようなニオイともいわれるこの香り、展示室を出たところの通路で嗅ぐことができます!
本物ではなく化学成分を調合して再現されたものですが、夏場の腐った生ゴミのようなニオイがしました。
植物の起源は…?
第4章「植物はどのように進化してきたか?」では、植物の歴史を紹介。46億年といわれる地球の歴史のなかで、植物が陸上に進出したのは約5億年前。海中で生活していた緑藻(りょくそう)類のなかから淡水で生活するものが進化し、そのなかから陸上植物が進化したと考えられているそうです。
会場では、前期デボン紀(約4億1000万年前)時代の植物の化石標本や復元模型などを展示。筆者は植物オタクなので、珍しい古代植物の姿に興奮しました!
怖い植物になった理由は…
最後にご紹介するのは、第5章「本当は怖い植物たち」。花や草木は癒しを与えてくれるイメージがありますが、凶暴な性質のものや、人間が死に至る毒をもった危険な植物もあります。
例えば、食虫植物。虫などを殺して食べるなんて残酷だと思いますが、植物たちにも事情があります。食虫植物は栄養分が不足している土地に自生しているため、生き残りをかけて自分たちに必要な栄養源として虫などを捕獲しています。
また、トリカブトのような植物の猛毒は、動物や虫に葉が食べられないようにするために必要な成分ですし、果実や種子にあるトゲは、動物にくっついて別の場所に種子を散布してもらうために必要なもの。毒もトゲも植物が次世代以降も生き残るために備わった大切な力なんですね。
植物が愛おしくなる…!
同じ地球に暮らす仲間として、植物は人間にとってとても大切で身近な存在です。そんな植物の美しいだけではない多様な側面を知ることで、この先出会う植物たちがさらに愛おしく思えるようになるかもしれません。
特別展『植物 地球を支える仲間たち』は9月20日まで。
取材・文:田代わこ
Information
会期 : ~9月20日(月・祝) ※会期等は変更になる場合があります ※休館日:9月6日(月)
会場 :国立科学博物館(上野公園)
開館時間 : 9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
観覧料 :一般・大学生¥1,900、小・中・高校生¥ 600 ※事前予約制
ウェブサイト: https://plants.exhibit.jp/
※最新情報は、博物館のウェブサイトをご確認ください。