自分のカラダを使う…! プロが教える「アート鑑賞を楽しむ」簡単なコツ7つ
この夏、リアル・オンライン展示を鑑賞するなら要チェック!
もうしばらくすれば、アートを美術館や展示会など、リアルの場で鑑賞する機会が増えるかもしれません。最近ではオンラインでの展示会も増えており、リアルとオンライン両方で存分にアートを楽しみたいものですよね。
アートは自由に鑑賞するものですが、もうちょっとレベルアップして味わってみたい、という人もいるでしょう。
そこで今回は、アートのプロである、展示会の作品を収集するキュレーターという職業の方に、アート鑑賞をいつもとは違う角度から楽しむヒントを教わります。
こんな楽しみ方もある! アートの鑑賞方法4つ
今回、教えてくれたのは、今年7月16日から千代田区で開催されている「ポコラート世界展『偶然と、必然と、』-障害のある人、 ない人、 アーティストの生の表現を世界に解き放つ-」という展示で、世界各国から作品を集めてきたキュレーターの嘉納礼奈さん。
まずは、展示会や美術館など、リアルの場での鑑賞をより楽しむ方法を4つ教えていただきました!
1. 入口から出口までストーリーを楽しむ
嘉納さん 展覧会では、ただ「もの」が陳列されているのではなく、入口から出口まで、ひとつのアトラクションのように流れの中で作品を体感する仕掛けがあります。まるで音楽のようにリズムがあり、ゆっくりと始まり、速くなったり、止まったり。映画のストーリーのように伏線があり、楽しい場面、激しい場面、辛い場面などさまざまな場面の展開を経て、クライマックスに辿り着く。そんなストーリーを感じてみましょう。
2. 自分の身体で作品を測ってみる
嘉納さん 作品の前に立って、自分の身体で作品を測ってみます。自分の手のひらの大きさと比べたり、腕の長さと比べたり、腰の高さや身長でとらえたり。すると、後で作品の写真や画像を見たときに、作品の大きさや規模感を思い出すこともできますよ。
3. 自分の興味や好き嫌いで作品を見る
嘉納さん 自分の興味で作品を見ましょう。作品の色彩、形、描かれているもの、技法、素材、意味、作家の人生あるいは作家自身、作品の時代背景など、誰がなんと言おうと、自分の好き嫌いで見て良いのです。
例えば、日本の絵巻物の放屁合戦を見て「この時代のユーモアはこんな感じだったのか」、フランスの画家アンリ・マチスが描く部屋の壁紙は「かわいい」、初期ルネッサンスのイタリア絵画の画家フラ・アンジェリコの作品は「マリアとキリストの衣装のピンクとブルーの配色がたまらんな」などという具合に。作品をどう見るかには答えがなく千差万別です。むずかしく考える必要はなし!
4. 自分だけのアングルを決めて作品を見る
嘉納さん 毎回、どんな展覧会でも自分だけのアングルで作品を見ると新たな発見があることも。例えば、キャンバスに描かれた絵画で、額装されていないものであれば、抽象画でも具象画でも、必ずキャンバスの「へり」を見ることに決めます。すると「草間弥生さんはヘリには描かない。モンドリアンはヘリまで堂々とはみ出して描いている」など、作家によって、どこまでを画面と捉えているのかを感じることができます。
オンライン展示を楽しむヒント3つ
続いては、オンライン展示を楽しむためのヒントを嘉納さんに教えていただきましょう。
嘉納さん オンライン展示は、作品を自分の体でとらえることができないのが難点。一方でオンライン鑑賞のメリットは、ひと言でいうと、より自分なりの鑑賞にカスタマイズできるということ。それを踏まえて、オンラインならではの楽しみ方のヒントをご紹介します。
1. ズームをして作品のディテールを楽しむ
嘉納さん 実際は至近距離に近づけない作品も、オンラインではまるで作品の中に入り込むかのように、ズーム機能を利用すれば間近に近づくことができ、作品のディテールを楽しめます。
2. 自分の鑑賞リズムで見る
嘉納さん 実際の展示では、全部見ようと欲張って最後のほうは疲れ果ててしまいませんか。オンラインだと、自分の鑑賞のリズムをカスタマイズできます。好きなところで立ち止まったり、ディテールを見たり。また、一度ざっと一周してみて、じっくり見て見たいところに立ち戻るのも良いですね。
3. ツッコミや解説を入れながら鑑賞する
嘉納さん オンラインでは、鑑賞が受け身ではなく、より能動的になります。展覧会場では大きな声で話すことはできませんが、オンラインでは声を出して作品にツッコミを入れながら鑑賞することもできます。自分なりの解説を入れながら楽しむのも良いのでは。
世界各国の興味深い作品が集められたポコラート世界展「偶然と、 必然と、 」
2021年9月5日までアーツ千代田 3331で開催されるポコラート世界展は、日本初上陸のものも含めた世界22か国の作家50名の興味深い作品が240点余も集まっている展示です。
例えば、自らの身体を使ってさまざまな人物に扮して撮影したポートレートや、ただその行為が好きという理由だけで割り箸をひたすらかごに刺すことによって作られたオブジェなど、国籍、年齢や性別、障害の有無、美術の枠組みさえも飛び越える創作物がいっぱい。
そんな貴重で面白い作品を世界中から集めてきた嘉納さんは、実際に現地に赴き、作家や施設、美術館、コレクター、作家の創作活動の支援者などに会いながら、少しずつ情報を集めたそう。
もし機会があれば、この夏、今回紹介された鑑賞方法を試しに、足を運んでみるのも良いのでは?
Information
嘉納礼奈(かのう・れな)さん
キュレーター、美術史家。国内外でアートとその周縁、人間の創作物のカテゴライズなど芸術人類学の研究、展覧会、展示企画、シンポジウムなどに携わる。
展示概要
ポコラート世界展「偶然と、 必然と、 」-障害のある人、 ない人、 アーティストの生の表現を世界に解き放つ-
会場:アーツ千代田 3331 1階メインギャラリー
会期:2021年7月16日(金) 〜 9月5日(日)
特設サイト
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