不動産会社の経営者が教える! 選んではいけない「NGマンション」の見分け方

取材、文・髙倉ゆこ — 2024.2.10 — Page 1/2
物件探しの際、知っておくと助かるトピックをご紹介。『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著者であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、賃貸物件から分譲マンションへの住み替えを検討している人に向け、家を購入するメリットについて教えていただきました。さらに、今回は、地震に備えるという観点から「避けたほうがいい中古物件」についてもお聞きしています。ぜひ物件選びの参考にしてください!
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分譲マンションのメリットと避けるべきNGマンション

――新生活に向け、家を購入したいと考えている人も多いと思います。石岡さんが思う、持ち家のメリットを教えてください。

石岡 まず一番に、資産になることです。家を借りる場合は「家に住む権利」に対してお金を支払いますが、家を買う場合は「家自体」にお金を支払います。つまり家賃は「掛け捨て」です。でも家賃と同じ額を住宅ローンとして払っていけば、自分の家=資産となります。

また売却したいと考えた際、購入時より家の査定額が下がったとしても、住宅ローンの残債を上回る価格で売却できれば手元にお金が残ります。もちろん立地や築年数などによっても変わりますが、やはり掛け捨ての賃貸物件よりもメリットが大きいと思います。

――その他にポイントはありますか?

石岡 安心できる居場所ができます。賃貸は、他の人の所有物を借りている状態のため、建て替えや取り壊しなど大家さんの都合で立ち退かなければいけない場合がありますが、持ち家であればそういった心配が少なく、安心して住み続けられると思います。

結婚や出産で家族が増えて、手狭になった場合は賃貸に貸し出して家賃収入を得ることもできますし、資産としてお子さんに譲ることもできます。自分の家があることで、選べる人生の選択肢が増えるのもメリットですね。

また、内閣府による「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」(※)の「住まいの状況と満足度」を見てみると、世代、年収等に関わらず、持ち家の場合は住宅満足度が高くなり、借家では低下するという結果に。持ち家は、借家のように他人に気を遣わずに暮らせるという安心感があり、ライフスタイルに合わせてリノベーション等もできる自由度の高さが影響しているのではないかと思います。

――なるほど。それでは、中古マンションの購入を検討している人に向けたアドバイスをお願いします。先日発生した能登半島地震を踏まえ、地震に備えるという観点から「避けたほうがいい物件」について教えてください。

NG1 旧耐震基準のマンション

マンションは建設された年代によって耐震基準が異なります。1981年6月1日に改正された建築基準法に基づく新耐震基準と、それ以前に定められていた旧耐震基準とに区分されるのです。

旧耐震基準は、震度5程度の地震で倒壊しない建物であること。新耐震基準は、震度6から7程度の地震で倒壊しない建物であることと定義されています。

能登半島地震でも、震度7の非常に強い揺れを観測しましたが、今後いつどこで大地震が発生するかは誰にも予想できません。その意味でもやはり、旧耐震基準のマンションはあまりおすすめできません。

地震の揺れ以外にも、建物や設備の老朽化による不具合も懸念されます。たとえば、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は50年弱、給排水等の寿命は20~30年と言われています。管理や修繕が適切に行われていればよいのですが、そうではない物件では漏水や停電といったトラブルが生じてしまう可能性があるのです。

ただし旧耐震基準のマンションのなかにも、元から新耐震基準を満たしている物件や、耐震補強工事が行われて新耐震基準を満たす物件、また適切に修繕されて快適に暮らせる物件もあります。

検討している物件が旧耐震の年代である場合、計画的な修繕をはじめ、耐震補強や耐震診断などが行われている物件かどうか、不動産会社に問い合わせてみると安心でしょう。

NG2 修繕積立金が不足しているマンション

分譲マンションを購入すると、計画的に建物本体を維持管理・修繕するための費用として、毎月、修繕積立金を支払わなければなりません。中古で購入する場合、この修繕積立金がどのくらい貯まっているかということが、とても重要になります。

なぜならば、修繕積立金が不足している場合、将来的に修繕が必要になった際に、一世帯につき数十万円~百万円ほどの一時金を請求されたり、不足分を補ったりするために、修繕積立金が値上げされる可能性があるからです。

なお、「地震で壁にひびが入った」「豪雨でベランダに雨水がしみてきた」といった不測の事故や事情により修繕が必要になった際も、修繕積立金から捻出されます。備えあれば憂いなし。計画的に修繕積立金を貯めている物件が断然、おすすめです。

事前に「修繕積立金がどれくらい貯まっているか」「今後どのような修繕を予定しているか」「その際にはいくら請求される可能性があるか」など、マンションの長期修繕計画を確認しておく必要があります。

十分な修繕計画が立てられておらず、修繕積立金が不足しているようなマンションは購入すべきではありません。

NG3 複雑な形をしたマンション

地震に強いとされるのは、上から見たときに正方形に近いシンプルな形の建物と言われています。 正方形は同じ面積の面で支え合うため、力が分散されやすいのです。一方、形が複雑な建物の場合、揺れた時に壁や柱にかかる負荷にばらつきが出て、倒壊リスクが高くなってしまいます。

たとえば、1階部分が駐車場などになっているピロティ形式の建物。通常の建物は、柱と壁で2階以上の建物の重みを支えるように設計されていますが、柱だけで支えるピロティ形式は、どうしても構造的に弱くなります。

また、日照権を確保するために下階よりも上階が後ろに下がって建てられているセットバックや、L字やコの字の形状になっているような物件など、非対称でバランスの悪い形の建物はあまりおすすめできません。

もちろん、このような形であっても耐震補強工事が適切に行われている安全なマンションもあります。気になる方は、不動産会社に問い合わせてみてください。

※「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/report06.pdf

Information

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<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。現在、TV CMを放送中。YouTube「ことり不動産TV CM」でも視聴可能。
https://www.youtube.com/watch?v=r_CAWia41ow

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取材、文・髙倉ゆこ


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