不動産会社の経営者が教える! 共用部分でわかる「トラブルが起こりがちなNG物件」
NG1 ボコボコになっている玄関扉がある物件
集合住宅の共用部分とは、エントランス、ラウンジ、廊下、エレベーター、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場、宅配ボックス、共用庭といった、住人全員が共同で利用する設備やスペースのことを指します。
これらの場所が散らかっていたり、設備の汚れが目立ったりする物件は、住んでいる人のマナーが悪い場合や、管理会社の運営がスムースに行われていないことが予想されるため、あまりおすすめできません。
意外なところでは、玄関扉(外側の部分)も共用部分となります。以前、お客様をご案内した物件で、ボコボコの状態になった玄関扉を見たことがありました。その部屋で何かトラブルがあったのだろうと思います。
共用部分の修理・修繕・交換等を行う場合は、住人で構成する管理組合の承認が必要となるため、面倒に思った居住者がそのまま放置していたのでしょう。
集合住宅で快適に暮らすには、住人にトラブルメーカーとなる人物がいないことが理想です。ですが、購入前にそういった人物がいるかどうかを知ることはなかなか難しいでしょう。
だからこそ、内見する前にお客様に「共用部分をよく見てください」とお伝えしています。エントランスやゴミ置き場といった一般的な共用部分はもちろん、玄関扉やポーチなど専有部分に近い共用設備についてもしっかりチェックしてほしいです。
ボコボコの玄関扉は極端な例ではありますが、「共有部分の乱れ」は「住人の暮らしの乱れ」だと思うので、そのサインを見逃さないでほしいです。
NG2 ベランダに動物のフンが落ちている物件
内見の際、必ずチェックしてほしい見落としがちな共用部分がベランダです。
ベランダは専有部分と勘違いされやすいのですが、火事や地震といった緊急時に住人の避難経路になるため、共用部分となります。
ぜひ確認してほしいポイントが、ハトやカラス、ネズミなど動物のフンが落ちていないかどうかです。物件の衛生状態をはかるひとつの指針になると思います。
とくに帰巣本能が高いハトは、いったん巣を作るとなかなか追い払うことができず、ベランダでの「糞害(ふんがい)」に長年悩まされているという方も多いです。
汚れや臭いだけでなく、感染症の原因にもなりかねないため、ベランダにハトやカラスのフンが落ちている物件は避けたほうがいいでしょう。
また内見する部屋から見える範囲(常識の範囲内)で、隣の部屋のベランダの様子もチェックしてみましょう。
生ゴミの置き場所になっていたり、タバコの吸殻がポイ捨てしてあったり、ゴキブリ駆除用の薬品(ブラックキャップなど)が多数置かれていたりしたら要注意です。
隣人が不衛生にしていると自分の部屋にまで「糞害(ふんがい)」やゴキブリの侵入などの被害が及ぶ他、ベランダでタバコを吸われると健康被害にもつながってしまいます。
隣人トラブルを未然に防ぐためにも、そういった物件はおすすめできません。
NG3 隣の部屋でガーデニングをしている物件
植物や花が茂った美しいベランダは、一見、素敵なものに思えます。彩りのある丁寧な暮らしをしている人が住んでいる…というよいイメージをもつかもしれませんね。
ところがそれが自宅の上階や隣の部屋であるならば、少し見方が変わってきます。
NG2で紹介した通り、ベランダには避難の妨げになるものを置いてはいけないことになっています。
ところが禁止されているにも関わらず、ベランダに大量のプランターを置いて植物を育てたり、レンガや木材で花壇を作ったりして避難経路をふさいでしまっているケースがあるのです。
また植物や花は毎日水やりをする必要があるため、上階からの散水でベランダに干した洗濯物が濡れてしまった、隣の枯れ葉や土のせいで排水溝が詰まってしまった、という声を耳にすることがよくあります。
とくに排水溝は2軒にひとつしか付いていない(共同使用の)物件が多いため、隣のベランダでガーデニングをやっている場合、少なからず影響を受けてしまいそうです。
内見でベランダを見る際には、排水溝の状態も確認するのをお忘れなく。また、ベランダが道路に面した物件ならば、各部屋のベランダの様子も確認しておきましょう。
なお、ご自分でベランダガーデニングを始めたい方や、「ベランダにウッドデッキを設置したい」といった希望がある方は、その物件の管理規約や使用細則を事前に確認し、何が禁止されているかなどを知っておくと安心かと思います。
Information
<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
https://www.cotorire.com/
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取材、文・髙倉ゆこ
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