昨年、「もぬけの考察」で群像新人文学賞に輝いた村雲菜月さん。受賞第1作となる『コレクターズ・ハイ』は、推し活のリアルを描いた物語だ。商品企画の仕事に就き、キャラグッズをはじめ漫画やアニメ、ソーシャルゲームに目がないという自身の体験がベースになっている。

執着が暴走した果てにあるものは!? 共感必至&少しホラーな推し活物語。

コレクターズ・ハイ 村雲菜月

「推し活って、人によって価値観や熱量に差があるなと思っていて。自分が普通と思うことが傍から見たらおかしい、みたいなこともそうですし、当事者だから見えた気づきを小説にしたいと思いました」

主人公は人気キャラクター「なにゅなにゅ」の収集に励む会社員・三川。彼女は髪オタクの美容師・品田のもとに通い、縮毛矯正でストレートヘアに整えている。ある日、クレーンゲームオタクの森本さんと出会い、クレーンゲームでなにゅなにゅを取ってもらう代わりに髪を撫でさせることになり…。三者三様の執着が、次第に不穏さを帯びていく展開にぐいぐい引き込まれる。

「好きなものを集めたり対象に没入するのは楽しいけど、キラキラした面ばかりじゃない。例えば、つぎ込んだ金額やアイテムのレア度でマウントしたり嫉妬したり、あるいは自分自身が集められる対象だったらどうだろうとか、推し活がはらむ闇は一番書きたかったところです」

なにゅなにゅファンが集うポップアップショップでの三川の心情や人間観察の描写は、臨場感が鮮やか!

「実際、似たような場面で周りを観察したことがあるので、経験が生きたかなと。でもこんなふうに人を意地悪に見ていたんだと初めて自覚しました(笑)。書きながら自分を発見できるのは小説の面白さです」

終盤のあるできごとをきっかけに、三川は誰も自分を「見ていなかった」ことに気づいて愕然とする。そしてそれは、三川自身が品田や森本さんを「オタクの人」としか捉えていなかったことの裏返しでもある。

「自分が認識している自分と他人から見えている自分の乖離にすごく興味があるんです。今後も書いていきたいテーマのひとつですね」

入社3年目の三川が直面する仕事のジレンマや商品企画のプロセスも丁寧に描かれ、「推しごと&お仕事」小説としても読みどころたっぷり。

「働きながら推し活している女性は多いと思うので、自分ごととして共感してもらえたらうれしいです」

『コレクターズ・ハイ』 仕事で成果を出せない三川は、集めたなにゅなにゅに支えられて毎日を保っている。しかしコレクションする純粋な喜びは歪んでいき…。講談社 1485円

2396 コレクターズ・ハイ 村雲菜月1

むらくも・なつき 1994年生まれ。会社員をしながら執筆を始め、「もぬけの考察」で第66回群像新人文学賞を受賞。ハイになる瞬間は「めちゃめちゃ課金したソシャゲで超レアカードが出た時!」。©林桂多

※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・熊坂麻美

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
【web限定】長谷川あかりが語る 20年来の親友・FRUITS ZIPPER鎮西寿々歌との『たべるししゃべるし』共演で見えたふたりの“素”
【web限定】長谷川あかりが語る 20年来の親友・FRUITS ZIPPER鎮西寿々歌との『たべるししゃべるし』共演で見えたふたりの“素”
Entertainment
Today's Update
自分らしい性愛について学ぶ、最新エンタメガイド
自分らしい性愛について学ぶ、最新エンタメガイド
Entertainment
Today's Update
心に傷を負ったファムファタール、 ほとばしる感情の行き着く先は…。漫画『今際の際のファムファタール』
心に傷を負ったファムファタール、 ほとばしる感情の行き着く先は…。漫画『今際の際のファムファタール』
Entertainment
CUTIE STREET・梅田みゆ、ぼる塾・きりやはるか「私たちがカプセルトイに沼る理由」
CUTIE STREET・梅田みゆ、ぼる塾・きりやはるか「私たちがカプセルトイに沼る理由」
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載