imase「日本語っぽくしすぎないことを意識」 韓国での大きなバズを自己分析

2023.8.2
imaseさんは2020年、二十歳の時にギターを手にし、作曲を始めたところから音楽活動をスタート。その半年後にTikTok に投稿した「Have a nice day」が話題に。代表曲「NIGHT DANCER」はStray Kidsによる踊ってみたやBTSのジョングクによるカバー歌唱もあり、グローバルなヒットを記録。トレンドを軽やかに取り入れたサウンドと特徴的なファルセットボイスで支持を拡大中の、新世代アーティストに迫る。

海外でもバズを起こす、気鋭のポップシンガー。

Entame

幼い頃から歌うことが好きだったというimaseさん。学生時代はサッカー少年だったと話す。

「小中学生の頃はサッカー漬けで、プロサッカー選手を目指していました。ゲームもよくやっていましたね。高校を卒業してからは就職しようと思っていたので、大学進学は考えていませんでした」

楽曲を作り始めたのは二十歳の時。友人の影響でギターを手にしたことがきっかけだった。

「2020年の秋に友達がギターを購入しているのを見て、僕もやってみたいなと思いギターを購入しました。翌年の春頃、TikTokにショート尺で曲を投稿している人を見て、自分も挑戦してみたいと思ったんです。当時はフル尺で楽曲を作る能力がまだなかったので、ショート尺を投稿できるプラットフォームはありがたかったですね」

2022年8月に配信した「NIGHT DANCER」が大ヒット。名だたるK‐POPアーティストの踊ってみた動画により、特に韓国で大きなバズを記録した。

「バイラルの要因として、韓国で日本のシティポップが流行っていることは大きいと思います。僕の歌声は、母音の発音を少し崩したほうが曲に合うと思っているのですが、日本語の発音は英語や韓国語と比べて母音が硬いんです。なので、曲を作る際は母音を柔らかく発音して日本語っぽくしすぎないことを意識しています。もしかしたら、それが海外の方の耳に馴染む要因の一つになっているのかもしれません。また、メロディが細かすぎないので歌いやすいというのもあると思います」

初めての有観客ライブは今年3月のことだった。

「ライブをするまではファンの方の存在をSNS上でしか感じられなかったですし、経験がないので僕自身ライブが好きなのかもわからず、様々な不安がありました。でも、実際にライブでファンの方々に会うことができ、僕はライブが好きなんだと気づきました。僕の曲を好きでいてくださる方々と同じ空間で過ごすことってすごく素敵だなと思いました」

その後、韓国とタイでショーケースを開催。言葉が通じなくとも、音楽で通じ合えるということを実感することとなった。

「韓国の方々もタイの方々も、日本語で僕の楽曲を一緒に歌ってくれたんです。すごく不思議な感覚を覚えつつ、一緒に音楽を楽しむためには必ずしも英語詞である必要はないんだなと感じました。岐阜の実家でベッドルームミュージックのような雰囲気で作った曲が、SNSを通し、言語の壁を越え、様々なところに届いているという実感が湧きました」

新世代を代表するアーティストとなった今でも、リスナーとしての嗜好がダイレクトに曲作りに反映されるスタイルは変わらない。

「リスナーの方との距離感が近いのは僕のいいところだと思っています。自分の好きな音楽を作るという根底は大事にしながら、音楽的にアップデートしたり、ライティング能力をもっと上げて進化していきたいです」

一番音楽を聴くのは曲を作るタイミングなのだとか。最近はどんなモードなのだろうか。

「最近はTommy heavenly6のインディーロックっぽい曲にハマっています。でも、このような楽曲を作りたいというよりは、あくまでリスナーとして聴いています。音楽にはリバイバルのサイクルがあると思うので、過去に聴いていた曲のエッセンスが無意識に自分が作る曲に入っていることはあると思います。自分のルーツではないジャンルの曲を作る時は、そのジャンルのプレイリストを聴いたり、タイプビートで調べて聴き漁ったりしています」

最後に、最近ハマっているものは何か聞いてみた。

「音楽もそうなんですが、一度ハマるととことんハマるタイプなんです。食生活もそうで、今はUber Eatsで頼めるオレンジと柚子のソーダにハマっています。そのお店と同じ系列のお店でオーダーした、ナタデココが入ったグレープフルーツジュースもすごく美味しかったんです。フルーツ系のジュースは毎日のように飲んでいますね。食べ物は中華料理にハマっていて、最近はチンジャオロースをよく食べています。数か月前はタピオカブーム期で、その次が韓国料理ブーム期。スンドゥブを毎日食べていたらUber Eatsのスンドゥブが売り切れになってしまったので、ラーメンブーム期に入って今は中華料理ブーム期、という流れです(笑)」

これまでの代表的な楽曲。

Entame

「Have a nice day」
TikTokに投稿し、最初にバズを記録した楽曲。「キャッチーなメロディと、ドラムパッドを叩きながら歌っていた動画が物珍しかったのかなと思います。ファルセットへの反応も多かったですね」

Entame

「NIGHT DANCER」
2022年8月に配信され、世界各国でヒット。「リリースした時から、国内ではたくさんの方が動画を投稿してくださっていました。今年に入ってからENHYPENさんやTOMORROW X TOGETHRさん、LE SSERAFIMさんなど多くのK‐POPアーティストの方々が踊ってくださり、ダンスがきっかけで海外にも広がったことをとても嬉しく思っています」

Entame

「ユートピア」
鳥山明の名作『SAND LAND』のアニメ映画主題歌として書き下ろした新曲。「鳥山先生がデザインを手がけた『ドラゴンクエスト』の劇伴を意識して、間奏にバイオリンのピチカートを入れました」

イマセ 2000年生まれ、岐阜県出身。アーティスト。’20年に音楽活動を始め、わずか1年でTikTokでバイラルヒットを生み、’21年メジャーデビュー。’22年8月に配信した「NIGHT DANCER」が韓国配信サイト「Melon」でJ‐POP初のTOP20入りを果たす。

※『anan』2023年8月9日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) ヘア&メイク・向井大輔 取材、文・小松香里

(by anan編集部)