花火は高く上がれば上がるほど縁起がよい!? 夏の行事の由来と意味を解説

2023.6.12
ここ数年中止や自粛が相次いだ催しが各地で復活の兆し! 心ゆくまで楽しむために、夏ならではの行事についての知識を深めよう。

厳しい季節を乗り越えるため神頼みの行事が生まれた。

盆踊りに花火大会、縁日など。夏は、何かと昔ながらの行事が多い。

「古くから伝わる夏の習俗といえば“お盆”ですね。お盆はもともと、“暑さに負けず無事秋を迎えられますように”と先祖に祈る祖霊信仰が、同じく祖先に祈りを捧げて供物をおそなえする仏教行事の“盂蘭盆会(うらぼんえ)”と合体したもの、という説が有力。熱中症の治療法がなく飲料水の確保も難しかった時代、夏は命の危機でした。そのため、神様仏様に頼って乗り切ろうとしたのです」(「日本良学」代表・藤本宏人さん)

また、収穫の秋を控えた夏は、農業的にも重要な季節。

「台風や大雨など、夏は水に関連する自然災害が多く発生します。そこを耐えて実りの秋を迎えることは、農家にとって死活問題。そのため、昔の人たちはお祭りをして神様のご機嫌をとりたかったのでしょう。健康と豊作、生きるための大切な願いを叶えるため、夏には様々な行事が行われてきたのだと考えられます」

【盆踊り】賑やかな踊りで先祖の霊をお迎え。

nastu1

盆踊りの“盆”は、お盆のこと。「昔の日本人は、お盆の時期に死者の魂が戻ってくると信じていました。そのためキュウリやナスで乗り物を作るなど、祖先を迎える儀式をします。盆踊りもそのひとつ。夜に開催されることが多いのは、明るいうちは霊が帰ってこないという信心のため。仮面をかぶる風習は、祖先の霊が踊りの輪に入りやすくする、あるいは身分関係なく踊るためだといわれています。また、盆踊り会場にはよく“やぐら”が組まれます。これは、踊りを継承してきた集落の代表者が、お手本として中央で踊っていたことの痕跡だと考えられます。あるいは“火の見やぐら”で太鼓を鳴らし、音を遠くまで響かせた名残だという説もあります」

【縁日】人間が楽しむことで神様がご機嫌に!

nastu2

縁日は本来、季節を問わず神様や仏様に縁(ゆかり)の深い日を指す。「神様や仏様が生まれた日、あるいは何かを成し遂げた日がその神様仏様の縁日です。たとえば弁財天様は己巳の日生まれなので、60日に一回訪れる己巳の日は弁財天様の縁日。縁日には昔から相撲やくじ引きなどの娯楽が行われ、みなが楽しむ様子を“奉納”して、神様に喜んでもらおうとしました。縁日にごちそうの屋台が並んだり、楽しいゲームが行われるのは、その名残です」

【土用丑の日】“う”のつく食べ物で精をつけよう。

nastu3

“土用丑の日”に鰻が売れる裏にも、夏を乗り切る知恵があった。「陰陽五行説の暦では、各季節の終わりに土の属性を持つ“土用”の期間があります。丑の日は、十二支を利用した暦に由来します。夏終盤の土用はバテる人が多いこと、丑の日は“う”のつく食べ物が吉とされたことに目をつけ、江戸時代の学者である平賀源内と鰻屋さんがタッグを組んで広告を打った。これが、土用丑の日に鰻を食べる習慣の起源だといわれています」

【花火】星になった祖霊を楽しませるために。

nastu4

花火も盆踊りと同じく“盂蘭盆会”に関係があるという。「昔の人々は、火に特別な力があると信じていました。そこで盂蘭盆会では、祖先の霊をお迎えするときに“迎え火”を、送り返すときに“送り火”をともします。お盆の始めに作ったキュウリやナスの乗り物を燃やす行事や、山を焼く“大文字焼き”、灯りをともした灯籠を流す“灯籠流し”も送り火の一種。そしてお盆の花火も、送り火から派生したものだと考えられています。人間は死んだあと星になるという信仰があったため、先祖の霊により近い場所で花火を喜んでもらおうと、空高く打ち上げられるようになったとか。また花火は、高く上がれば上がるほど縁起がよいとされていました」

お話を伺った方・藤本宏人さん 日本の文化、歴史、世界観から30年以上「ご利益」を研究する「日本良学」代表。著書に『365日のご利益大全』(サンマーク出版)。メルマガ「ご利益1万倍のこよみメール」は毎日配信中(「こよみメール」で検索)

※『anan』2023年6月14日号より。イラスト・津村仁美 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)